アコースティック・ギターを立って弾く場合、ストラップピンを自分で付ける必要がある機種がいくつかあります。
エレクトリック・ギターの場合は、ほとんどの機種が元々付いています。ネックとボディの接合部の裏とボディエンドが大半です。
アコースティック・ギターでは、エンドピンはあっても、ネック側にないケースが多いので、穴を空けて取り付けます。
ですが、アコースティック・ギターは、その名の通りアコースティック(生楽器)ですので、穴を空けると音質が変化するおそれがエレクトリック以上にありますので、注意しなければいけません。
また、どこに取り付けるかで、立って弾いた時の演奏性にも大きく影響してしまいます。
今回は、アコースティック・ギターにストラップピンを取り付ける方法や注意点を考えてみます。
ストラップピンの付け方
ストラップピンは2か所に取り付ける必要がありますが、先ほども書いた通り、アコースティック・ギターのボディエンドには付いています。
もう一方の左肩に近い方、ネック側のどこに取り付けるかを検討していきます。
- ネックヒールの側面
- ネックヒールの三角
- ネックサイドのボディ
そのギター・メーカーが推奨している位置があれば、それに従ってストラップピンを取り付けるのが良いです。
アコースティック・ギターのネックとボディを接合部付近にあるヒールキャップであれば、穴を空けた後も形跡が目立ちませんし、サウンドへの影響も最小限に抑えられます。
しかし、実際にこの位置にストラップを取り付けて演奏してみると、機種によっては、体との位置バランスが悪く、ギターが体から離れていくような感覚で、とても弾きづらく感じてしまいます。
これを「ヘッド落ち」と呼んでいます。
そのため、ヒールキャップではなく、ボディにより近いネックのヒール横に取り付けるのが良いと思います。
演奏性の向上という点から言った場合、ヒールキャップに取り付けた場合と比較して、格段に安定性が増します。しかし、ギターに穴が空いてしまうため、位置を決める際は慎重に判断してください。
アコースティック・ギターでも、ネックとボディが別々に作られ、後で接着させるボルト・ジョイントで製作されているギター(Taylor、Tacoma、Furch、Collings、Ayersなど)は、ネックヒールの三角形の位置から穴を空けてしまうと、ボルトに触れてしまう可能性があります。
最も、演奏性を最も安定させるための位置は、ナットとヘッドの間の部分にに紐などを通して、それにストラップの穴を通すのが良いのですが、現代っぽくないかもしれません。
アコースティック・ギターを演奏する際は、座って演奏する、と決めている人もいます。確かにアコースティック・ギターは大きいですし、繊細な演奏が求められるので、割り切るのも1つの方法です。
・ネックヒールの側面
ネックヒールの側面は、ギターの演奏性の安定感が良いです。
自分の体とギターとの一体感も良くなり、ギターのボディの穴空けも最小限に留めることが出来ます。
しかし、ストラップに手が当たってしまい、ハイ・ポジションはかなり弾きづらく感じるでしょう。
アコースティック・ギターは、ロー・コードのストロークやカッティングという演奏が多いと思いますので、人によってはそれほど不都合を感じないかもしれません。
もしくは、アコースティック・ギターではハイ・ポジションは弾かない、と決めてしまうのもありでしょう。
・ネックヒールの三角
ネックヒールの三角は、キャップ部分だとネックが体の前方に落ちてしまう「ヘッド落ち」になりやすいです。
その場合はヘッドとネックを支えながら、フィンガリングを続けなければならないため、非常に弾きづらくなるでしょう(特にバレー・コード)。
また、使用するストラップやストラップピンによっては、ストラップが外れやすくなる場合があります。ストラップが外れやすいと感じたら、エレクトリック・ギターで使われているロック式タイプのストラップピンを使用してみましょう。
・ネックサイドのボディ
ネックサイドのボディにストラップピンを打ち込む方法は、演奏性への影響が少ないため、とても良い箇所と言えますが、すべてのアコースティック・ギターで適合する訳ではありません。
ギターに穴を空けるなどの加工をする場合は、リペアーマンにお願いするのが一番確実です。
もし自分で打ち込む場合には、まずは位置を慎重かつ正確に決めなければいけません。
ネックヒールの三角キャップに打ち込む場合は、定規を使って中央部分に相当する位置を計測し、まずはそこにキリを使って目打ちをします。
次にドリルなどを使って穴を空けていきます。穴の太さはビスの口径より0.5mmほど細いサイズを選んでください。
そしてドリルにビスの長さをマーキングしておきます。その際には、マスキングテープを使うと分かりやすいと思います。
ドリルで穴を空けたら、ビスをドライバーでしっかり締め込めば完成です。
ストラップピンを掛けてみて、少し演奏してみましょう。外れずにしっかりとストラップが固定されているか確認しましょう。
ストラップピンの修理の仕方
・必要なもの
当たり前の事ですが、長年ストラップピンを使用していると、ボディへの振動や保存状態などにより、経年劣化をしていきます。
これはストラップピンに限った話ではありません。劣化してしまったものは、ギターのサウンドや演奏性に影響してしまいます。
以下、修理費に必要な工具や材料を紹介します。
- ギターの材と同じ木材(なければ、ホームセンターで売っている木材で良いです。)
- プラスドライバー
- 小刀
- 紙ヤスリ
- キリ
- ドリル
- ボンド
- マスキングテープ
- マジックペン
・ストラップピンの穴が広がってしまった場合の修理費方法
ストラップピンの穴が広がった状態で使用し続けると、穴が徐々に広がっていき、気付かないままでいればストラップが外れて落下してしまいます。
当然ステージの本番中だと、ここに挙げるまでもなく、そのライブは最悪の結果になるでしょう。
まずは、穴の大きさに合わせて木片を加工していきます。ここはまだ大まかで結構です。
次に、その木片を小刀で削って、紙ヤスリで埋めたい穴の大きさなるように調整します。
木片の長さは、その穴の底まで差し込んでみて、ボディより1cm程度飛び出ているくらいにします。
木片の太さは、後でタイトボンドで接着して穴埋めを行うので、木部の間にボンドが入り込めるように、ピッタリな太さにはしないで、少し余裕を持った太さにしておきます。
何度かはめ込んだり、抜き差しを繰り返してみて、長さと太さを微調整してください。
ここまでの長さと太さが決まったら、タイトボンドで接着していきます。
まずは、削った木片のビスとギター・ボディの両方に、タイトボンドを塗って差し込んでいきます。
タイトボンドの量に気を付けてください。多過ぎるとギターに余分な量が付着し、しっかり綺麗に拭き取らないと、汚れの原因になってしまいます。
飛び出している箇所をカットする際に、ボディに傷を付けてしまわないように、マスキング・テープでテーピングを施しておくと良いでしょう。
そして1日程度養生しておけば、タイトボンドは乾いて固まっていると思いますので、飛び出している箇所をカットします。テーピングはしていますが、ボディに傷を付けないように慎重に行ってください。
次は下穴を空けます。
穴を空けたい箇所にキリを使って目打ちをしておきます。
そしてドリルを使って穴を空けていきますが、ドリルの太さはビスの口径より0.5mmほど細いサイズを選んでください。
穴を空けたら、最後にビスをしっかり埋め込んで完成になります。
ビスの取り付ける角度が悪いと、ストラップの劣化状況にもよっては、穴からピンが外れてギターが落下してしまうこともあります。
このような場合には、ピンを別の位置に移動させて取り付ける、ということも考えられますが、その位置によってはギター・サウンドや演奏性が変わってしまいますので、注意が必要です。
また、エレクトリック・ギターで良く使われるロックピンを使うのもありだと思います。
ストラップをはめる場合はワン・タッチですし、何より固定式ですから、落下の心配をしなくて良くなり、自然にプレイに専念出来るようになります。
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