ご覧いただきありがとうございます。
カラオケのキーについて、そして自分の声の音域を知ることができれば、歌える曲を探しやすくなり、自分の声域に合うように曲のキーを変えて歌うこともできます。
しかし、そもそもキーって何のことかよくわからない、あるいはぼんやりとは分かるけど説明はできない、という人も多いのではないでしょうか。
まず、キーとは何か、の説明から、どうやったら曲のキーを変えられるのか、自分の声はどのくらいの音域があるのかを調べる方法についてお話ししていきたいと思います。
カラオケのキーについて
キーって何?
まず音楽において、キーとは何かを説明していきます。
キーとは、①鍵(けん) ②調 のふたつを指します。
①の鍵はピアノ、オルガンなどで鍵盤を構成するもので、ピアノで言えば、指で押したたく白と黒の部分です。
②の調は、音楽辞典などでもまわりくどい言い方をしているのですが、ごく大まかに説明すると、
曲の中で中心となる音(主音)とそれ以外の音との関係性を指すもの、といえます。
ネットなどでも、カラオケのキーに対する説明の仕方は様々で、例えば以下のようなものがあります。
・音階、あるいはどの音階を使っているかを示すもの
・曲全体の音の高さのこと
・個人個人が持つ声が出る音域
つまり、本来の意味から派生した様々な解釈や説明がなされていることから、混乱が生じている、と言えます。
どの説明も一概に間違いとは言えないので、ここでは様々な意味合いで使われている、ということを理解しておきましょう。
私たちが普段聴く音楽のほとんど、そしてカラオケで歌う曲は、調性音楽といわれるもので、主音と他の音が音階や和声の一定の規則のもとで成り立っている音楽です。
調性音楽は、ピアノの白鍵部分の、ドレミファソラシ、の7音に、ドとレ、レとミ、ファとソ、ソとラ、ラとシ、の間の半音5音を加えた12音で構成されています。
そして調には、長音階(メジャースケール)による長調(メジャー、dur)と、短音階(マイナースケール)による短調(マイナー、moll)があります。
主音となる音と、長調と短調の違いで、それぞれ調の呼び方が決まってきます。
長調と短調の種類を以下に書いておきます。
・各長調は長音階(ピアノの白鍵ドレミファソラシ)の音の幅で、主音がそれぞれ変わる。
・各短調は短音階(ピアノの白鍵ラシドレミファソ)の音の幅で、主音がそれぞれ変わる。
なお、短調には和声的短音階と旋律的短音階がありますが、その説明は省略します。
また、楽譜には調号があり、五線紙の最初に書かれる#(シャープ)や♭(フラット)の数で調が決まりますので、参考までに書いておきます。
Cmajor(ハ長調 C-dur)なし
Aminor ( イ短調 a-moll)なし
Gmajor(ト長調 G-dur)#1個
Eminor ( ホ短調 e-moll)#1個
Dmajor(ニ長調 D-dur)#2個
Bminor ( ロ短調 h-moll)#2個
Amajor(イ長調 A-dur)#3個
F#minor ( 嬰へ短調 fis-moll)#3個
Emajor(ホ長調 E-dur)#4個
C#minor ( 嬰ハ短調 cis-moll) #4個
Bmajor(ロ長調 H-dur)#5個
G#minor ( 嬰ト短調 gis-moll)#5個
F#major(嬰へ長調 Fis-dur)#6個※1
D#minor ( 嬰ニ短調 dis-moll)#6個※2
Fmajor(ヘ長調 F-dur)♭1個
Dminor ( ニ短調 d-moll)♭1個
B♭major(変ロ長調 B-dur)♭2個
Gminor ( ト短調 g-moll)♭2個
E♭major(変ホ長調 Es-dur)♭3個
Cminor ( ハ短調 c-moll)♭3個
A♭major(変イ長調 As-dur)♭4個
Fminor ( ヘ短調 f-moll)♭4個
D♭major(変ニ長調 Des-dur)♭5個
B♭minor( 変ロ短調 b-moll)♭5個
※1:クラシックでは(変ト長調 Ges-dur)♭6個
※2:クラシックでは( 変ホ短調 es-moll)♭6個
カラオケでのキーの計算方法
カラオケでは選曲画面の設定欄にキーが示されています。
原曲のキーを0(ゼロ)とし、半音ずつ上げ下げできます。
音を上げたい時には#(シャープ)のボタンを押すと曲全体の音が半音ずつ上がります。
音を下げたい時には♭(フラット)のボタンを押すと曲全体の音が半音ずつ下がります。
ではどのように計算して歌いやすいキーに合わせればよいのでしょうか。
例えばCメジャー(ハ長調 C-dur)の曲の場合、全体に低いのでE♭メジャー(変ホ長調 Es-dur)まで上げたいというときは、#(シャープ)ボタンを3回押して+3にします。
Cメジャー(ハ長調 C-dur)の曲をさらにGメジャー(ト長調 G-dur)まで上げたい場合は、本来なら#(シャープ)ボタンを7回押したいところですが、カラオケのキー変更は通常半音6個分までしかできません。
なので、逆に♭(フラット)ボタンを5回押して-5にします。
私たちが聴いたり歌ったりする音楽は12音のまとまりで構成されているので、
+7-12=-5
にする、という計算です。
すごくややこしく見えますが、音の上げ下げだけで考えてしまうと混乱します。
原曲のキー(調)をまるごと自分の歌いたいキー(調)に変える、ということがキー設定の本来の意味です。
ちなみに、このようにある調の楽曲を他の調に移して書き改めたり演奏したりすることを、移調する、といいます。
キーを下げたらどうなる?
では、実際の曲を例に見ていきましょう。
orion / 米津玄師 原曲:E♭メジャー(変ホ長調 Es-dur) 音域:レ#~ラ#
音域は1オクターブ半ほどですが、最高音のラ#はhiA#といい、通常の男性にはかなり高い音です。
最高音をソに設定するとしたら、♭(フラット)ボタンを3回押して-3にキーを設定します。
曲のキー(調)や音域は次のように変化します。
変更後:Cメジャー(ハ長調 C-dur) 音域:ド~ソ
もし原曲の調が分からなくても、通常歌いにくい最高音を自分が歌えるところまで調整するといいでしょう。
原曲の調が必ずしもわかる必要はありません。
曲の音域は、採点機能などを使えば採点時に表示されます。
音域の広い曲は音を下げすぎると下の音が出なくなるので気をつけてください。
女性がこの曲を歌う場合も、曲の音域をド~ソで歌おうと考えたら、原曲キーを-3して合わせます。
ただし女性は、実際には男性よりも1オクターブ高い音で歌うことになります。
本来、#(シャープ)は半音上げる、♭(フラット)は半音下げる、という意味の音楽記号です。
しかしながらカラオケのキー設定で言うところの#(シャープ)や+(プラス)、♭(フラット)や-(マイナス)は、歌いやすい音域にどちらを使ったら早く近づけるか、と考えて使うといいでしょう。
キーを自分の声に合わせる方法
先ほどは男性が男性曲を歌う場合を見ていきましたが、今度は男性が女性曲を歌う場合のキーの合わせ方について見ていきましょう。
卒業写真 / 松任谷由実 原曲:Cメジャー(ハ長調 C-dur) 音域:ソ~ラ
音域は1オクターブちょっとです。
高音が得意な男性ならば、ユーミンが実際に歌っている音の高さで歌えなくはないですが、声を張って歌うと曲のイメージに合いません。
オクターブ下で歌うと声が重すぎて、曲の雰囲気が暗くなりすぎてしまいます。
では、設定欄の#(シャープ)ボタンを3回押して原曲キーから+3します。
曲の調や音域は次のように変化します。
変更後:E♭メジャー(変ホ長調 Es-dur) 音域:ラ#~ド
もう少し高めの音域で歌いたいとしたら、今度は♭(フラット)ボタンを5回押して原曲キーから-5します。
曲の調や音域は次のように変化します。
変更後:Gメジャー(ト長調 G-dur) 音域:レ~ミ
このように、曲の特徴や自分の声域によって歌いやすく、曲のよさが出せるところを見つけていきます。
ちょうどいいキーが見つかったら、しばらく練習して自分のレパートリーにしましょう。
また、キーを変えること自体に慣れてきたら、その日の気分や声の調子によってキーを変えてもいいでしょう。
移調のよい練習にもなります。
カラオケのキーを調べる方法
自分のキーの調べ方
ここでいうキーは、音域と考えてもらえれば結構です。
自分の声がどのくらい出るか確認する方法として、ピアノやキーボードで音を出しながら声を出してみる方法があります。
ピアノやキーボードがない方は、ピアノのアプリをスマホに入れておくと音の確認にも使えて便利です。
ただ音の確認ができればいい、という方には次のアプリがおすすめです。
【シンプルなピアノ】
しかし、ピアノやキーボードで音を出しながら声を出しても、自分の声は客観的には判断しづらいものです。
録音して聴いても、正確な音程かどうかはなかなか判別できません。
アプリの中には、発した声の音程をリアルタイムで視覚化するものがあります。
次にそれらのアプリを紹介します。
スマホ音域チェックアプリについて
【ボーカル音程モニター】
(i-PhoneはVocal Pitch Monitor)
画面上部に音名を表示、横スクロールで音の高さと長さを線で表示します。
縦軸が音階、横軸が時間になっていて、調やテンポの設定なども可能です。
メロディーラインが線で表示されるので、どこで合っていないかや微妙なピッチのずれ、波形の大きさや形でビブラートの状態も確認できます。
3分間ならば録音、再生が可能です。
【音声スペクトルモニター】
(i-PhoneはAudio Spectrum Monitor)
音声のスペクトルをリアルタイムで表示するアプリです。
このアプリは単音の音声をスペクトル分析するもので、メロディーラインの確認には使えません。
このアプリの良いところは、出している音(青の垂直線で表示される)の他に、それより高い音、倍音も表示されるということです。
倍音は、出した音の整数倍の振動数を持つ上音のことです。
倍音は、豊かな音色を形成し、基音の高さを明確に感じさせる機能を持ち、ハーモニーの形成にも関わってきます。
音程を正確にすることに加えて、倍音が多く表示されるように各母音の声が出せれば、良く共鳴した豊かな声に近づいていることを実感できるでしょう。
なお、これらのアプリは電力を結構消費しますので、充電には気をつけてください。
【参考】
曲の調やコード進行を調べられるアプリがあります。
【ヤマハ コードトラッカー】
スマホなどに入れた曲をコード分析、表示してくれるアプリです。
しかし、複雑なコードだと正確に表示されない場合もあります。
曲の原曲キーを知りたい場合には、次のような方法があります。
・楽器店や大きい本屋で楽譜を見てみる…調号などを見れば見当がつきます。
・ネットで (曲名) 原曲キー と入れて調べる…Original key:○○といった形で情報が書かれている場合があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
自分の声の音域を知り、キーについて理解し、自分の声に合わせて曲のキーを変えたりできれば、カラオケはもっと楽しくなるし、あなたの歌の可能性も広がるでしょう。
ピアノや楽器奏者にとって、移調して演奏するのはなかなか高い技術を要するものです。
カラオケならばボタンひとつで自分の歌いやすいキーに変えられるのですから、考えてみればすごいことですよね。
皆様の歌う時間が楽しく充実したものになることを願っています。
ありがとうございました。