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カラオケを歌っていて、一生懸命歌っているのに大きな声が出ない、声が遠くに飛んでいない、こうしたお悩みをお持ちの方がいらっしゃると思います。
声量が足りない、声が通らないと感じる理由、声の出し方が分からない場合の対処法、そしてトレーニング法までお話ししたいと思います。
カラオケで声量が足りない、声が通らない理由
声量が足りない、声が通らないと感じてしまうのはなぜ?
マイク、BGM、ミュージック音量を変えられるカラオケで、なぜ声量が足りない、声が通らない、と感じてしまうのか、その問いに直接お答えする前に、まずは楽器の音や、マイクを使わない歌い手や役者の声についてお話ししたいと思います。
楽器、たとえばアコースティックギターについて見てみましょう。
ギターは弦を弾くと、音が響いて空間に拡がります。
弦で発生した音が、ギターの胴体に共鳴して、音が増幅することで空間に音が広がるのです。
アコースティックギターを弾いたり、音を出したりした人は、ギターの胴体が震えるような感触を味わったことがおありだと思います。
オペラ、ミュージカル、演劇などマイクを使わない舞台の歌い手、役者の声について考えてみます。
オペラやミュージカルの歌い手は、オーケストラと一緒に歌っていても、歌声がしっかりと客席に聞こえてきます。
役者の声は激しく叫ぶ場合だけでなく、優しく静かに語りかける場面でも、後方の客席までちゃんと聞こえます。
生で舞台を観に行ったことがある人ならば、歌い手や役者の声の迫力に驚くとともに、声が空気の振動としてビリビリと感じた方もいると思います。
実は歌い手や役者の方々も、体の共鳴を使ってより声を響かせているのです。
楽器が音を美しく響かせて増幅させる機能があるように、人の声も体の共鳴を使い、響きを豊かにすることができるのです。
声の響きを豊かにするためには、腹式呼吸にもとづく発声と共鳴を身につけることが必要です。
具体的なやり方やトレーニング法は後ほど説明します。
カラオケのマイクはある意味、その人の声をそのまま大きくします。音量を上げても、音楽的な面での響きのある声がないと、音の豊かさにはつながらない、と認識しましょう。
声量が足りない、声が通らない人の特徴
歌に限らず、声が小さい人には、どのような特徴があるでしょうか。
※あくまでも声量が足りない、声が通らない原因を客観的に見るための問いとしてお考え下さい。
・口があまり開いていない。
・言葉がはっきり聞こえない。
・姿勢がよくない
・表情に乏しい
・体が小さく見える
・自身がなさそうに見える
・力んでいる、緊張している
声が大きい、声がよく通る人、歌が上手い人の特徴はどうでしょうか。
・口が大きく開いている
・言葉、歌詞がはっきり聞こえる
・姿勢がよい
・表情が豊かである
・体が大きく見える
・自信に満ちあふれている
・力みがない、リラックスしている
声が大きい、声がよく通る人、歌が上手い人の特徴は、声が小さい人の逆をいっています。
ただ逆のことを書いただけではなく、実際に見てみて、思い当たることは多いのではないでしょうか。
口を大きく開ければ、口腔内の広さが保たれ、共鳴が使いやすくなりますし、拡声しやすくなります。
トランペットやスピーカーなどの口が広がっているのを見れば、音が外に拡がりやすくなる構造を認識しやすいと思います。
姿勢がよくなれば、息もより多く取り込みやすくなりますし、声の通り道も確保しやすくなります。
すぐにできることもありそうですが、よい特徴をただまねるのではなく、良い形で定着させるには、やはり腹式呼吸にもとづく発声と練習が必要です。
腹式呼吸にもとづく発声とともに、共鳴によって声の響きが豊かになっていけば、上手い人の特徴に近づいていくでしょう。
カラオケで声の出し方が分からない
喉が閉まって声が出ない時の対処法
苦手なところや、特に音の高いところで、喉が閉まって苦しい、声が出ない、と感じることがあるかと思います。
喉が閉まっている、とはどのような状態なのでしょうか。
・喉に余計な力が入っている状態
・のどぼとけが上に上がった状態
のどぼとけの部分は喉頭ともいい、先の少しとがった出っ張った部分(甲状軟骨)の内部に声帯があります。
のどぼとけ(喉頭)が上がった状態だと、その上の声道の空間が狭くなり、声の響きが減ってしまいます。
この時点で声の響きが減ると、さらに上の頭部の共鳴を活かすこともできせん。
では、喉が閉まらないようにするにはどうすればよいでしょうか。
喉が閉まる時はのどぼとけ(喉頭)が上がっている状態ですので、逆にのどぼとけ(喉頭)を下げるようにすれば、喉が開いた状態に近づきます。
喉が開いた状態とは、どのような時でしょうか。
実は、あくびをした時が、喉が開いた状態です。
あくびをして、息を吸ったときに、喉の奥がスーッと少し涼しい空気が流れる感じがすると思います。
これが喉が開いた状態、といえます。
試しに、あくびをして喉が開いた状態をキープしたまま、しゃべったり、歌ったりしてみてください。
何となく、間の抜けたような、力の抜けた、ぼーっとした声になると思います。
あくびをして喉が開いた状態でしっかりした声を出すには、腹式呼吸で息をしっかりと支えた状態を作ることが必要なのです。
腹式呼吸について、また、トレーニング方法については後に書きますので、ご参照ください。
久しぶりで声が出ない時の対処法
久しぶりの程度も人それぞれですが、中には1年以上あるいは数年ぶり、という人もいるでしょう。
久しぶりに歌ったとき、次のような経験をお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか。
・声が通らない、声が小さくなってしまった
・音程が悪くなった
・音域が狭くなっている
・1曲を最後まで歌いきれない
・喉が疲れた、あるいは痛くなってしまった
原因として、次のようなことが考えられます。
・人前で久しぶりに歌って緊張した
・体が準備できていない、歌うのに必要な筋肉がなまってしまった
・声が老化した
歌うことや発声は筋肉の運動ですので、使わなければパフォーマンスは落ちていきます。
声帯も筋肉ですし、声帯どうしが合わさる部分には粘膜がありますが、加齢や生活習慣などの影響でしなやかさが失われることもあります。
では、久しぶりに歌うことになった時、どのようなことをすればよいのでしょうか。
事前に準備できることとしては、次のようなことが挙げられます。
・歌う曲を事前に決めて、聞きなおしたり、練習しておく。
・ブレストレーニングやリップロール、タングドリルをする。
カラオケに行く日が事前に分かっていれば、準備によって当日の不安を減らすことができます。
練習しても以前に歌っていた曲が歌えなくなっていたら、歌いやすい曲を探しておくことも考えましょう。
曲を聴きなおして、歌っていた時の楽しい記憶を思い出すだけでも違ってきます。
過去によく歌っていた曲は、曲を聴くと頭の記憶だけでなく、筋肉の動きも完全ではないにしても戻ることがあります(必ずではないですし、個人差はあります)。
歌の基本は腹式呼吸にもとづくブレスコントロールです。
事前にブレストレーニングをしておくと、声が出やすくなります。
ブレストレーニングとともに、リップロールやタングドリルを一緒にやっておくとより効果的です。
リップロールは、息を吐きながら唇をプルルルル…と震わせるものです。
タングドリルは、いわゆる巻き舌で、息を吐きながら舌をトゥルルルル…と震わせるものです。
ブレストレーニングとともに、リップロール、タングドリルについても後に書きますので、ご参照ください。
カラオケ店に着いてからもできることはあります。
・ストレッチする。
・ブレス練習やリップロール、タングドリルをする。
・他の人の歌に合わせて一緒に歌う。
・いきなり大声で歌わない。
ストレッチは大げさなものでなくても、背伸びをしたり、肩や首をゆっくり大きく回すだけでも違いが出ます。
ブレス練習は、通常〔s〕の無声音で行いますが、周りに聞こえないようにフー〔h〕の無声音で行っても効果があります。
もしできそうなら、リップロールやタングドリルもウォームアップとして有効です。
みんなで歌える曲の場合は、マイクを使わなくても発声練習のつもりで一緒に歌いましょう。
声の調子が上がるまでは難しい曲や激しい曲は避け、おとなしめの曲から歌うなどします。
カラオケで声量はいらない?
声量がない声、通らない声を克服するには?
先ほど、オペラやミュージカル歌手、舞台演劇の俳優を例に、声の響きについて話しました。
彼らはマイクなしでお客様に分かるように伝えなくてはいけないので、通常の人よりも修練に励んでいます。
彼らは体の共鳴を使い、美しく、なおかつより多く響かせることで声量を出しているのです。
カラオケのマイクは、音量を上げる機能やエコーはありますが、音の発生源である歌う人の声そのものの共鳴を増やしたり美しく整えたり、抑揚や表情をつけることは残念ながらできません。
共鳴を使った響きのある声があって初めて、マイクで響きが増幅され、さらに声量が上がって聞こえるのです。
カラオケでもうまく歌う、うまく聴かせるためには、音量の面ではオペラやミュージカル歌手、舞台俳優のレベルまでいかなくても、共鳴を活かした響きのある声、音程の正確さや抑揚などの表現力が必要です。
マイクを使うのは、歌うときに力まないで済むようにボリュームやエコーでカバーするため、程度に考えておきましょう。
もしカラオケ採点をする場合、小さくて響きのない声では正確に音を拾わない可能性もありますし、抑揚の振り幅が小さいと加点につながりにくいです。
では、どのようにすれば共鳴を身に付け響きを増やすことができるか、そのトレーニング法を見ていきましょう。
トレーニング法
まず、歌の基本である腹式呼吸について見ていきます。
腹式呼吸は、横隔膜が下がる(収縮する)ことで肺に空気が入り、横隔膜が上がる(緩む)ことで息が吐かれていく呼吸法です。
腹式、というのは、横隔膜が下がり(収縮して)肺に息が入る時に腹腔が押されお腹全体が膨らみ、横隔膜が上がり(緩み)息が吐かれるときにお腹全体がしぼんでいく動きをすることからきています。
歌う際の腹式呼吸は、息を吸ってお腹全体が膨らんだ状態を声が出ている間もできるだけキープすることが必要です。
これが息の支え、といわれるものです。
では、実際に体感してみましょう。
肩幅、あるいはそれより少し狭い足幅で立ちます、その際、足を少し前後しても構いません。
猫背にならないように注意しましょう。
片方の手は小指をベルト辺りになるようお腹に手を当て、もう片方の手は脇腹に手を当てます。
息を吸って手を当てたお腹、脇腹ともに膨らんでいることを確かめます。
息を吐くときはスー〔s〕無声音で吐き、吐く間もできるだけお腹、脇腹の膨らみをキープします。
この感覚をもとにトレーニングをしていきます。
もしこの感覚がつかめない場合は、仰向けになってお腹や脇腹に手を当てて膨らんだりしぼんだりする感覚をつかんでください。
ブレストレーニングには、以下のようなものがあります。
やり方や注意点についてはビブラートやロングトーンについての記事に詳しく書いていますので、ご参照いただければと思います。
【ブレストレーニングメニュー】
1.4秒で息を吸う→4秒お腹の膨らみをキープして止める→〔s〕無声音で8秒で吐く を繰り返す。
2.スタッカート(音、息を短く切る):s・s・s・s…(無声音で) を続ける。
3.2秒でクレッシェンド(だんだん大きく)〔s〕無声音で吐き切る すぐ吸って を繰り返す。
4.ロングブレス〔s〕無声音で、細い息でできるだけ長く吐き続ける(30秒以上が目標)。
5.メッサ・ディ・ヴォーチェ(クレッシェンド エ ディミヌエンド)。
【リップロール】
リップロールはリラックスして唇を軽く閉じ、息を送って唇をプルルルル…と震わせます。
声帯を鳴らして、有声音として行います。
すぐにできない人もいるかもしれませんが、遊び感覚で根気よくやってみましょう。
リップロールのコツでもありメリットでもありますが、息がきちんと流れていること、唇や顔の筋肉がリラックスしていることが確認できます。
【タングドリル】
いわゆる巻き舌で、舌を上の前歯の付け根辺りに軽くつけ、息を送って舌をトゥルルルル〔rrrr〕…
と震わせます。
これも声帯を鳴らして、有声音として行います。
リップロールより難しく感じる方もいるかもしれませんが、根気よく遊び感覚でやってみましょう。
タングドリルも息がきちんと流れていること、舌や顔の筋肉がリラックスしていることがコツです。
ただし、タングドリルの場合、どうしてもできない、という方がいます。
それは遺伝的な問題があるからだといわれています(病気ではありません)。
音大の声楽科の学生や合唱団のメンバーなどにもそういう方がいるときがあり、クラシックでヨーロッパの歌を歌うとき、各国諸言語で巻き舌〔r〕の発音が必要なため、彼らは必死に努力して克服したり、それらしく聞こえるように工夫したりしています。
もし、歌は上達したけどタングドリルだけはどうしてもできない、ということがあったら、遺伝的な関係でできない人もいる、ということを知っておくといいでしょう。
リップロールやタングドリルができたら、ぜひ音をつけてやってみてください。
1.や 3.~5.のブレスメニューを使ってもいいですし、カラオケで歌う曲のフレーズでもいいです。
特に、曲の苦手なところや高い音が出るところなどで練習すると効果的です。
リップロールやタングドリルは息の流れが一定で、唇や顔、舌などがリラックスしていなくてはできないため、苦手なところや高い音の箇所などでやっておくと、声にした時にも出しやすくなります。
【ハミング】
喉を開いた状態で口を開け、口の中の広さを保ったまま唇を閉じます。
口を閉じたまま、声を出すのと同様に音を出します。
〔m〕という有声音で行います。
この時、唇や頬骨、鼻骨、眉間の辺りを震わせるようにします。
実は人の声の共鳴体は骨の部分ですが、鼻腔を使った共鳴は声を美しく響かせるのに有効です。
ハミングの練習ではまず、出しやすい音の高さで、決まった音程はつけずに音を出してみましょう。
毎回喉を開いた状態で、口内の広さを保って、息をしっかり送って、唇や頬骨、鼻骨、眉間の辺りが震えて、音に響きが出るように繰り返しましょう。
響きがついてきたら、〔mmi:〕というように、ハミングを鳴らした後に〔i〕(イ)の母音をつけて発声します。
ハミングで得た響きを母音にそのまま乗せるようにして発声します。
〔mme:〕(エ)の母音、〔mma:〕(ア)の母音、〔mmo:〕(オ)の母音、〔mmu:〕(ウ)の母音、も同様に行います。
各母音でハミングの響きがついてきたら、〔ma:ma:・・・〕(マーマーマー…)とハミングと母音で音階(ドレミ…)やカラオケで歌う曲のフレーズを練習してみましょう。
最初のハミング〔m〕の響きから音を正確に取るように意識します。
ハミングの練習をしていて、声が詰まるような感じや、鼻にかかりすぎる感じ、喉が閉まるような感じがしたら、リップロールやタングドリルを間にはさみながら練習してみましょう。
【筋トレメニュー】
歌は基本的に、ブレスや実際に声を出しての練習でしか鍛えられないものではあります。
しかし姿勢を維持できない、すぐにバテてしまう、デスクワークが多く日常の活動量が少ない、といった基本的な体力面で問題がある場合、筋力トレーニングを加えると効果が上がることがあります。
ただし、筋トレだけやる、ということがないようにしてください。
歌やブレスの練習を欠かさずにやる、ということが前提です。
ただ闇雲にウェートトレーニングをする、というやり方では効果が上がるとは限りません。
歌に必要な主な筋肉は、体幹、インナーマッスルです。
それらを効果的に鍛えられるメニューをご紹介します。
1.フロントブリッジ(プランク)
両ヒジと両手を床につき、つま先も床につけて背筋をまっすぐに伸ばします。
腹式呼吸を意識しながら、その状態を20~60秒キープします。
※この体勢がきつい場合は、つま先だけでなくヒザもつけて行います。
2.サイドブリッジ
横向きになって片ヒジと腕を床につき、もう一方の手は腰に当てる。
体幹を上げ(床についているのは片ヒジと腕、くるぶしから下の足部分のみの状態)、腹式呼吸を意識しながら20~60秒キープする。
同時にブレスメニュー1.~5.やリップロール、タングドリルを組み合わせるとより効果的です。
反対側も同様に行います。
両脚ヒップリフト
仰向けになり両ヒザを立てます。
カカトの位置がお尻に近いと負荷が軽くなり、遠くなると負荷が強くなります。
お尻を浮かせ、肩からヒザにかけ直線になるまで上げたら戻す、これを8~12回繰り返します。
同時にブレスメニュー1.~5.やリップロール、タングドリルを組み合わせるとより効果的です。
ちなみにスポーツの世界でも腹式呼吸をドローインと呼び、重要視するようになりました。
一部の書籍などの情報には、お腹をへこませてドローインしながらトレーニングをするように書いているものがあります。
これは筋肉の負荷をより大きくするためにやっていると考えられますが、歌う人がお腹をへこませるやり方で癖がついてしまうと、歌うときの力みにつながる恐れがあります。
歌のためにトレーニングするのなら、お腹の膨らみ、歌うときの息の支えを意識しながら行うのがいいでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
歌の声量とは、身体の共鳴を使って響きを増やすことによって生まれる、ということをお分かりいただけたでしょうか。
声量を上げる、声が通るようにするためには、腹式呼吸、喉を開く、鼻腔などの共鳴を意識する、など発声の根幹が関わるため、順を追って説明も長くなり、専門的なことにも少し触れました。
力まないで声が響く感覚が身につくと、歌うのがますます楽しくなります。
そして喉への負担も少なくなりますので、長く歌を続けることもできるようになります。
歌を通じて、皆さんの生活がより豊かになることを願っています。
ありがとうございました。