ピッキングやストロークをする手(以下、右手で書きます。)、フィンガリングやヴォイシングをする手(以下、左手で書きます)、ともに過度で無理な練習や、変に力んだり問題のあるフォームで弾き続けていると、腱鞘炎になってしまう可能性があります。
有名なのが、ベーシストがダウン・ピッキングをし続けて手が痛くなってしまう、速弾きを多用するギタリストが、ある日痛くて指が動かせない、などです。
Yngwie MalmsteenがRichie Blackmoreに腱鞘炎について相談したところ、「腱鞘炎はバナナとゲータレード(アメリカのスポーツドリンク)、この2つの組み合わせが最高、バナナとカリウムが有効なんだ」と言われたエピソードがあります。
カリウムはバナナで摂取することが出来ますが、腱鞘炎には果たして有効なのか、疑問が残ります。
気休め程度の話かもしれませんが、本気で対策するなら、理論的な方法が必須です。
ギタリストにとって気をつけなければいけない症状の一つ、腱鞘炎について書いていきます。
左手の腱鞘炎
左手に腱鞘炎が起こるケースは、2通りあります。
左手首に痛みを感じるケースと、左手指に痛みを感じるケースです。
ここでは、それぞれのケースについて、原因と対処方法を考えてみました。
・左手首の痛み
左手首に痛みを感じるケースは、ギターを弾く際に間違った角度、あるいは無駄な力が入っている状態で、ネックを握っている可能性があります。
対処法としては、手首の使い方を変えることです。
そして、ネックを握った時にしっくり来ない時は、無駄な力が入っているかもしれません。
まず、座った状態でギターを抱え、自分が楽に感じる角度・力を確認してネックを握りましょう。
教則画像や有名ギタリストの真似をしても構いません。要は、自分が楽に感じるフォームが一番なのです。
そして立って弾いた時も、座った時と同じ感覚を保てるように、左手首の角度と力を考えてみましょう。
場合によっては、ストラップの位置を変えるのも有効です。
・左手指の痛み
左手指に痛みを感じるケースは、手首よりも多少厄介です。
フィンガリングのストレッチで無理をした、速弾きの練習をし過ぎた、などの場合に発生する可能性が高いです。
これが原因で腱鞘炎になった、という話は、ギタリストならば一度は耳にした事があるのではないでしょうか。
そもそも、腱鞘炎とは手の腱とそれを包んでいる腱鞘が、摩擦によって擦れて腫れてしまい、炎症を起こしてしまった症状です。
炎症を起こした状態で痛みが発生し、さらに悪化していくと膨れて太くなっていきます。
これを自分で何とかしようとして、指を伸ばしたり曲げたり、さらにはそのまま無理をし続けてしまうと、その状態は固まって動かしづらくなってしまいます。
このような時に急に指を伸ばしたりすると、中で音が鳴る「弾発指(だんぱつし)」という症状になります。
弾発指は「バネ指」とも呼ばれ、簡単に言うと腱鞘炎が慢性化した状態です。
弾発指になってしまうと、たとえ痛みがない時でも、最悪は指が思うように動かなくなります。
慢性化した状態の弾発指の治療には、長い期間がかかります。
・まとめ
フィンガリング・ストレッチのやり過ぎ、音程差が激しいベンドの繰り返し、または元々フォームが悪いなど、左手首・指の腱鞘炎には色々な原因があります。
特にフォームは重要で、手首が常に無理な角度になっているのが癖になっている場合は、早めに矯正した方が良いです。
運指の際にも、必要以上に力を入れてしまったり、無理なポジション移動を続けていると余分な力が入ってしまいます。
また、ネック側から親指で支えるセーハ・フォームでも、十分に慣れていないと、すぐに親指や手首に痛みが出てしまいます。
このような場合の対策としては、フォームの修正を行うことです。
楽なフォームを見つけることも大事ですが、運指の仕方やコード・ヴォイシングの仕方は、自分なりに工夫してみましょう。
それが腱鞘炎防止だけでなく、ミスの少ないスムーズな演奏にも繋がります。
右手の腱鞘炎
右手で発生する腱鞘炎の多くは、手首に違和感を覚える場合です。
いわゆる「テニス肘」と同じ状態で、手首や指をひねったりする動作を何度も繰り返すことが原因です。
よくある例が、ギターの音が思ったより歪まない、もっと大きな音を出したい、と言った場合に力んで強いピッキングをする、またはテンポの早い曲でダウン・ピッキングや速弾きをし続けるなどがあります。
また、コード・ストロークを変なフォームで、もしくはずっと同じ角度で振り続けることでも、慢性的な腱鞘炎になることもあります。
腕や指がスムーズに動かしづらく感じる、痛みが伴う、などは腱鞘炎の初期症状なので注意しましょう。
サウンドの問題であれば、ギターやアンプのセッティングを見直してみます。
テクニック的な問題であれば、やはり無理のないフォームで、自分にとって弾きやすい形を探すことです。
体が痛んでしまうと、ギターを演奏するどころか、日常生活にも支障を来してしまいますので、十分に気をつけてください。
まとめ
右手と左手、どちらで腱鞘炎が起きやすいかは、個人差もありますし、何より自分のフォームによります。
もちろんどのようなジャンルのギター・プレイをしているかも影響します。
プロのギタリストでも、腱鞘炎になってしまう人とならない人がいます。
ギターを弾く際には、事前に十分なストレッチを行い、左手・右手ともに手首や指を温めて、慣れさせるようにしてから弾きましょう。
ウォーミング・アップは指や腕だけでなく、身体全体の筋肉や関節のストレッチもしっかり行う事が大事です。
手や指の使い過ぎで、腱が浮腫んだり傷ついてしまうのは、ギターに限ったことではありません。
ピアノの演奏やパソコンの入力などでも、無理なフォームや力加減になれば、当然腱鞘炎になってしまいます。
ギターを弾くときの左手と右手の動きは、日常生活ではほとんどないような動きをします。特に初心者の方は思い通りの動きが出来ないため、腱鞘炎になってしまう可能性は比較的高いです。
あまり無理をせず、まずはギターに慣れることから始めていきましょう。適度に休憩を取ったり、毎日繰り返すことで少しずつ覚えていきましょう。
そして弾き終わった後のケアも大事です。手首や指を休めてください。
もし違和感を感じ始めたら、すぐに練習を中断して、早めに整形外科で診てもらうようにしてください。
ギターの腱鞘炎は予防出来る?治し方は?
腱鞘炎は、ピアニストやバイオリニスト、そしてギタリストやベーシストのように、手首や指を頻繁に使う楽器の演奏者の職業病のようなものです。
近年ではパソコンを使う方が増え、操作する機会も多くなったため、より知られる症状になりました。
当然スマホの操作のやり過ぎでも起こり得るので注意してください。
腱鞘炎になってしまうと、しばらくギターは弾けなくなってしまうので、十分に注意してください。
・腱鞘炎の予防法
腱鞘炎とは、腱と腱鞘の摩擦で炎症を起こしてしまう症状です。
腱は、腕の筋肉から伸びている筋のことを指し、腱鞘は、その腱を包んでいるものです。
ギターを弾くにあたっては、指や手を多く使い、細かい動きを早く行う事が多いので、酷使し過ぎると腱鞘が炎症を起こし、痛みに繋がってしまいます。
ここからは腱鞘炎の予防法やその練習の仕方について紹介していきます。
まず、ギターを始める前に、ストレッチを十分に行いましょう。
スポーツと同じで、フィジカルで技術的な反復動作を繰り返すため、事前準備は大切です。
ギターの場合は肩や腕、指に負担がかかりやすいので、軽めのストレッチで十分に筋肉をほぐしておきます。
そして、実際にギターを弾く時は、リラックスして無駄な力を抜きます。姿勢も無理のない形にします。
指を一本ずつしっかり動かし、手首はグルグルと回して、筋肉を柔らかくしておきましょう。
冬の寒い時期で、筋肉が固まっているような時は、ストーブなどで温めてからストレッチをすると効果的です。
筋肉が硬直した状態で無理やりピッキングやストローク、フィンガリングをすると筋肉を痛めてしまいますので、気をつけてください。
また、長時間のギター・プレイは、慣れないうちは避けるべきです。
適度に休憩を取って、身体を休ませながらにしましょう。
練習もその方が効率的に進められると思います。
熱中するあまり、何時間もぶっ続けで練習をしてしまう、という人は、特に注意してください。
次に気をつけておきたいのが、ギターを弾く際の姿勢です。
これもギターに限らずなのですが、猫背になっていると、それが肩こりの原因になってしまいます。
特に立って弾く場合は、右肩にストラップを通じてギターの負荷がかかります。
日常生活の中から猫背は気にして、常に良い姿勢で行動するようにすると良いです。
ギターを弾くということは、肩、腕、手首、指といずれにも負担がかかっています。どこかに問題があると、それで身体を痛めることになってしまいます。
ギターを弾くにあたり、身体への負担というのは見逃しがちですが、症状が出てからでは遅いので、自分自身のケアは大事です。
アスリートが常に身体を気にしていると同じ、ギタリストも最高のパフォーマンスが出来るようにしておきましょう。
腱鞘炎の治し方
ここでは、手首の腱鞘炎の対処法について書いていきます。
ギターを弾いていて、手首や指に大きな負担がかかってしまうと、腱鞘炎の症状が出てくる事があります。
初期の症状は、違和感のある嫌な感じの痛みが走ります。
主な対策としては、10分間ほど冷やして休ませて、手首のあたりをマッサージします。
そしてその日はギターを弾くのはやめておきましょう。
自覚症状が出にくいケースもあります。
突然痛みが走ることもあります。
この場合は炎症が長く続いていた可能性もあるため、整形外科へ行くようにしてください。
あまり自分の勝手な判断で対処しようとして、返って悪化させないようにしましょう。
■関連記事もご覧下さい!■