海外ミュージシャンのように、重厚で十分な歪みを持ったギター・サウンドを出したい、と思っても、なかなか難しいものです。
ヘヴィ・メタルのギター・サウンドは、単純にアンプの歪みを上げたり、歪み系エフェクターを複数用意すれば良い、という訳にはいきません。
歪みが「飽和」してしまい、それ以上の歪みは加えられず、むしろノイズが乗ってしまう、芯のない音になっていまします。
メタル・サウンドは、いわゆる「ドンシャリ」と言われるサウンドですが、ハイゲインであるが故に、サウンドメイクには注意が必要です。
今回はヘヴィ・メタルのギター・サウンドについて考えてみます。
ギターの音作り。メタルの歪み。
ギター
ギターはもちろん、ハムバッキング・ピックアップがマウントされたものが良いでしょう。
一般的に、ハムバッカーはパワーがあり、シングル・ピックアップは繊細でクリアなサウンド、と言われます。
Fender Stratocaster+Marshallの組み合わせから、初期ハードロックのサウンドは始まりました。Jimi HendrixやRichie Blackmoreなどです。
現代的なハイ・ゲインサウンドと十分なパワーを得るには、やはりハムバッカーを選択すべきだと思います。
その中でも、音抜けが良いとされているタイプのピックアップを使いましょう。
Seymour Duncanのセラミック・マグネットを用いたハイ・パワーのピックアップや、DimarzioのSuper Distortionなどがおすすめです。
いずれもリプレイスメント・ピックアップ・メーカーの先駆けであり、高品質なピックアップを多数製造しています。
また、EMGなどのアクティヴ・タイプのピックアップも検討に入れて良いと思います。かなり高出力です。
ボディの加工が必要な場合もありますが、ハイパワーかつ高音域の効いたものを選びましょう。
アンプ
ヘヴィなサウンドに向く主なアンプを紹介します。
アンプ選びのポイントは、ハイ・ゲイン・アンプです。
1つ目はやはりMarshallです。JVMシリーズなどのウルトラ・ゲイン・チャンネルを装備したものがオーソドックスです。
2つ目はモダン・ハイ・ゲインと言われるMesa BoogieのDual Rectifierです。
特に、ダウン・チューニングによる重々しいサウンドはRectifierが向いていると思います。
この2つのアンプはかなり有名どころなので、多くのスタジオで準備されていると思います。
もし、これから自分のアンプとして購入を考えている場合は、他に下記のメーカーも検討していただきたいと思います。
チェックする点はハイ・ゲインで、多くのチャンネルを備えている点です。
- Diezel VH-4 Herbert ハイ・ゲインで多チャンネル装備、MIDI操作も可能な現代的アンプです。クリーン・チャンネルも透明感のある音になっています。
- Peavey 6505 Van Halenが好きならこのモデルです。現在では少しオールド・タイプと言えるかもしれません。
- Bogner Ubershall 歪みのきめ細かさが特徴で、オーバードライヴというよりディストーションに近いです。アンサンブルに埋もれない音作りが可能です。
上記以外にも、ENGL、Hughes & Kettner、Kochなどハイ・ゲインのアンプ・メーカーがありますので、検討してみて下さい。
エフェクター
・Noise Gate
ヘヴィなギター・サウンドを追求する場合に必ずついて回る問題は、ずばりノイズです。
Noise Gateをかましておくことは、メタル系の音作りには大事な点です。
機能的には地味かもしれませんが、このような事も積み重ねが、クオリティの高いサウンドに繋がります。
アンサンブルで無音の箇所や、全体で休符を入れる際に、サーとかジーと言ったノイズが入ってしまうと、ぶち壊しになってしまいます。
Boss NS-2やDecimator 2などが一般的なNoise Gateですので、楽器屋さんで試してみましょう。
・Booster
ギターを前に出したい場面、ギター・ソロや特徴的なリフを弾く場合など、その際に効かせるエフェクターです。
Gain Booster、Clean Booster、Mid Boosterなど、様々なBoosterがあります。
また、ゲイン系のエフェクターでも代用は可能ですので、現在の機材との兼ね合いで、必要だと感じるBoosterを用意しましょう。
・Equalizer
アンプの3バンド以上に微細なイコライジングが可能になります。
Equalizerも含めて自分のギター・サウンドと考えるか、もしくは毎回異なるアンプで演奏する場合の補正用とするなど、場面に応じて使うと良いでしょう。
またBoosterの代用にもなります。
・Distortion Pedal
ヘヴィ・メタルのギター・サウンドを作る場合、大抵はアンプとエフェクターどちらかだけでなく、双方とも歪ませています。
歪みが飽和してペラペラになったりしないよう、しっかりと音の厚みを増幅させましょう。
アンプの歪みとDistortionの歪みを上手く調整し、イコライジングでしっかりと音の芯を残しておきましょう。
また、Roland JC120のように歪みが得意でないアンプしかない場合は、当然手持ちのエフェクターで音を作るしかありませんので、よりハードなDistortionを選びましょう。
・Delay/Reverb
Delayは、Short Delayにしてダブリング音にすると、音圧が増して厚みのある音になります。
一聴しただけではDelayがかかっている、というのが分からない程度にするのがポイントです。
ドライブ音よりもクリーンな音を出すときに使うと効果的です。
また、Reverbは音の伸びを美しく保つ用途で使うようにすると良いでしょう。
Spring Reverbを薄めにかけると良いです。
メタル・サウンドで空間系は、隠し味的に効かせるのが重要です。
アンプのセッティング
自宅や個人リハでサウンドメイクを行い、ギター単独で良い音を鳴らせると感じても、バンド・アンサンブルの中で音が抜けて来ないという事があります。
そのような時は、以下の点をチェックしてみましょう。
・ゲインを上げ過ぎていないか
ゲインを上げ過ぎていると、音の輪郭がぼやけてしまいます。
ゲインの量を少し落として、音の輪郭が見えるくらい、何の音を鳴らしているのか分かるくらいにしましょう。
また、リード用の音、バッキング用の音、と音作りを変えて何パターンか用意しておくと良いです。
・ベースつまみの設定
低音域がベースやドラムのキックと被っていると、音抜けは悪くなります。
これはギターの音抜けが悪いという場合、大抵このケースが多いです。
重々しいサウンドを意識し過ぎて低音域を強くし過ぎているかもしれません。
ドンシャリを作ろうとしてよく起こる現象です。
ベースのつまみをいじって、被っている他楽器のパートと調整しておきます。
・ミドルつまみの設定
ミドルはヴォーカルと被るケースが多いと思います。
ギターサウンドを特徴付けていてる帯域も中音域だからです。
ギターの芯が残る程度にし、ヘヴィなサウンドを作る場合は削ります。
・トレブルつまみの設定
ギターの存在感を出す帯域です。
しかし、当然上げ過ぎには注意が必要です。
ギターだけキンキンな音になってしまいます。特に初心者にありがちです。
トレブルつまみのコントロールは注意しましょう。
ゲインを上げずに音を歪ませる方法
先に書いたとおり、アンプやエフェクターで闇雲にゲインを上げまくっても、思ったような歪みにならず、むしろ音抜けが悪くなってしまいます。
アマチュアのメタル・バンドで、ギターが何を弾いているのか(音程感が全くない)分からず、しかも音の厚みもない、というケースがたまにあります。
だが、この状態で単にゲインを下げると、音の歪みの量は減ってしまいます。
では、音抜けの良いギター・サウンドは、どのようにセッティングを行えば良いのでしょうか。
以下でその解決方法をいくつかあげていきます。
・ピッキングにより歪ませる
メタル・サウンドに限らず、ギターの音が美しく出ている人のセッティングは、思ったよりも歪んでいないものなのです。
大事なことは、しっかりとイコライジングにより出すべき帯域を出していること、そして音程が潰れるほど歪ませないことです。
そして最も重要なのは、最終的な歪みや音をピッキングでコントロールしているのです。
音の芯を残しつつ、クリアでありながら深く歪んだ音にしています。
ピッキングによりコントロールするということは、自分のテクニックも剥き出しになるということです。
歪ませまくっているとピッキングのアタックは残らず、誤魔化ことは出来ますが、ギターの音は潰れてしまいます。
・プレゼンスをブースト出来るディストーションを使う
トレブルよりもさらに上の超高音域をブーストすることで、ギター・サウンドを前に出すことが出来ます。
例えば、Electro-Harmonix社から出ているMetal Muffは、通常のイコライザー機能に加えてプレゼンスをブースト出来る機能があります。
また、Ibanezの真空管を搭載したDistortion PedalであるTube Kingも、プレゼンスをhighとLowに切り替えることが出来ます。
このような機材を活用するのも、一つの方法です。
最近では、ブースターやバッファを使ってプレゼンスを残す、といったエフェクターもありますので、調べて見ると良いです。
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