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カラオケでキーを変えるのはダサい、という人がいると聞きます。
キーを変える、ということはプロの歌手でも行うことですし、クラシックでは同じ歌曲が高声用、中声用、低声用、と違う調で出版されていて、歌い手たちはそれぞれの声種に合う調で歌います。
なぜ、カラオケではキー変更をダサい、と考える人がいるのでしょうか。
そして、キー変更すると気持ち悪い、聞きたくない、キー変更すると歌えない、という人もいます。
今回は、キー変更がダサい、気持ち悪いと考える理由、キー変更すると歌えない原因をお話しするとともに、キー変更した曲の練習方法も書いていきたいと思います。
カラオケのキー変更が気持ち悪い
キー変更が気持ち悪いと感じるのはなぜか?
まず考えられることは、原曲のイメージが強く、キー変更したときに印象が変わってしまう、ということが挙げられます。
普段聞き慣れている音の高さが変わると違和感を感じることはもちろんありますし、おかしいことではありません。
キーが変わると、音色の印象が変わるというのも確かにあります。
人によっては、曲や音の世界を色彩として感じたり、心象風景にあてはめたり、といった感性の豊かな人もいます。
音に対して鋭敏な感覚を持ち、感性が繊細で鋭い人は、キー変更によって曲に抱いていたイメージとのギャップを強く感じてしまうことがあるでしょう。
その曲への思い入れが強い場合もイメージとのギャップが大きくなりやすいでしょう。
また、カラオケの機械音は、キー変更の幅が大きいほど音源の質が変わってしまうことがあります。
演奏中にキー変更してしまい、音がグニャっとゆがむのを聞いてしまった場合は、気持ち悪いと感じるのは当然だと思います。
キー変更しているのにあまり上手く歌えていないのを聞いたり、変更したキーに明らかに慣れていない人の歌を聞いて、キー変更そのものに良くない印象を持ってしまうこともあります。
もし、キー変更して歌う場合は、演奏中ではなく、予約時に自分の歌いたいキーをあらかじめ設定しておくようにしましょう。
原キーじゃないと気持ち悪いと感じる人の傾向
先にあげた感覚的な問題の他に、気持ち悪い、と感じるのが感情的な問題からきている場合もあります。
それは原曲キーが絶対だ、と思っている人です。
こうした人はキー変更は邪道、キーを下げるのは下手だから、原曲キーで歌えないことは恥、歌えないと敗北感を感じる、といった、理想が高く、負けず嫌いな性分の傾向があると考えられます。
また、高音を出せない人は訓練や努力が足りないからだ、と音楽に対して厳しい姿勢を持っていることも考えられます。
音楽に対して真摯に向き合う姿勢は素晴らしいと思います。
しかし、それを他人に当てはめて評価したり、強要したりするのは、正直に言って傲慢だと言わざるを得ません。
そして行き過ぎた考えに縛られると、柔軟性に欠け、様々な可能性を狭めることにもなります。
私が以前読んだ本で、ある音楽指導者の著書に、次のようなことが書いてあったので、紹介しておきます。
「もし、あまり上手くないなと思う歌手や団体の演奏を聞いたら、それが自分の実力だと思いなさい。
まあまあ上手だな、と思う演奏に出会ったら、相当相手の方が上だと思いなさい。
とても上手な演奏に出会ったら、相手が自分の手に届かないほど上にいると思いなさい。」
それと、数は多くありませんが、絶対音感を持つ人も、キー変更を気持ち悪い、と感じる傾向があるようです。
絶対音感とは、出されたある音に対し、他の音程の手掛かりなしに音名を当てることをいいます。
絶対音感のある人は、曲のキーを特定の音程でとらえてしまうため、キー変更すると気持ち悪い、というのです。
この記事を書いている私は絶対音感がないので感覚的なことは分かりません。
ただし、理論上は移調した音名で読み直せばいいことなのです。
Cメジャー(ハ長調 C-dur)ドレミファソラ…をGメジャー(ト長調 G-dur)に変更した場合、ソラシドレミ…と読めばいいということになります。
絶対音感のある人でも、訓練を積んだ人や経験の蓄積により、移調をスムーズに行える人もいます。
要は移調に慣れているかどうかだと思います。
キー変更が感覚的に気持ち悪いことは仕方ないにしても、理解を示さない人は、音楽的素養や経験、キャリアが偏ったものになっていると考えられます。
それと、キーが違う曲を聞くと気持ち悪いという質問をした人に対し、絶対音感があるのでは、と回答しているのをネットで見かけますが、早計だと思います。
絶対音感の音楽上の定義は出された音を他の音の手掛かりなしに音名で言い当てられることです。
12音、さらにはピアノ88鍵すべてを言い当てられる、ということです。
質問をした人は、音に対して鋭い感覚は持っているのかもしれませんが、先に書いた絶対音感の能力は幼少時に相応の訓練をしないと身につかないものです。
音の高さを長期記憶する能力は幼児期(4~5歳程度)がピークで、それを過ぎると消失してしまうとされており、その幼少期までの限られた期間に絶対音高を記憶しなくてはならないからです。
しかも、絶対音感を身に付けたとしても、その後も楽器練習などを通じて能力を維持するよう努めないとやはり失われてしまいます。
絶対音感を持っている人はある意味特別な人なので、持っていない人は音楽的に劣っているのでは、と考える人もいるかもしれませんが、決してそのようなことはありません。
ある音から他の音との関係性を認識できればいいのです。
これを絶対音感に対して相対音感と言います。
この相対音感は個人差や程度の差こそあれ、誰でも身につきます。
理論が分からなくても、感覚がつかめればカラオケのキー変更も対応できますので、安心してください。
カラオケのキー下げはダサい?
キー下げがなぜダサいと感じるのか?
見出しの質問に答える前に、ダサい、の言葉の意味について考えます。
ダサい、という言葉は、格好悪い、野暮ったい、垢抜けない、洗練されていない、の意味を持つ俗語で、1970年代から広く使われるようになりました。
ちなみに対義語としての意味を持つナウい、は近年使われなくなり、死語になっています。
ダサい、という対象はキー下げに対して、そしてキー下げをして歌う人に対して、だといえます。
キー下げをダサい、という人は歌そのものへの理想が高い人なのでしょう。
そして他に考えられることとして、キーを変えても上手く歌えていない人を目の当たりにしていることが実は多いのではないか、ということです。
キーを変えれば歌いやすい音域にはなると思いますが、元々音感の良くない人がキー変更によって劇的に安定感や精度が良くなるとは限りません。
そしてどの音域で歌おうとも、声そのものに魅力が必要なのです。
もちろん、音程も声質も、練習やトレーニングによってよくなります。
関連記事には腹式呼吸や練習方法を書いたものがありますので、ご参照ください。
キー変更して歌う人も、キー変更すれば上手く歌える、上手くなる、と短絡的に考えず、しっかり練習してよりよく歌えるように心がけましょう。
カラオケ オク下 はダサいのか?
オク下、とは原曲キーのまま、オリジナルの歌手が歌う1オクターブ下の音で歌うことをいいます。
オク下をダサいというのは、同性の歌を1オクターブ下げて歌うことに対して、ということになるでしょう。
まず1オクターブ下まで下げて歌ってしまうと、声質がオリジナルのアーティストと離れすぎてしまう可能性があります。
他に、考えるべきことがふたつあります。
ひとつは、オクターブ下げて歌って、上手に歌えているか、ということです。
もうひとつは、オクターブ下が歌っている人の声の魅力を最大限に活かせる音域なのかどうかです。
オクターブ下が歌っている人の声の魅力を最大限に活かせる音域とは限らないのです。
原曲キーのままオクターブ下で歌う人は、音は下げたいが他のキーにすると音が取れないので仕方なく歌っているか、もしくは自分では正しいと思い込んでオクターブ下で歌っている、と考えられます。
オク下を含め、キーが歌う人に合っていない状態を洋服やファッションに置き換えて考えてみましょう。
・音域が合わない=服のサイズが合わない
・音色が合わない=服の色が合わない
・声質が合わない=服の素材、仕立てが悪い
自分のことや自分の声が分かっていない、自分の良さが出し切れていない、ということがダサい(格好悪い、洗練されていない)につながっている、といえます。
カラオケの原キーにこだわる理由
原曲のキーは、作曲者が曲や歌手の魅力を最大限に出せるように選び、曲を書いています。
それゆえに、こだわる人は原曲の理想を壊したくない、壊されたくない、と考えるのでしょう。
また、そのアーティストのように歌いたい、歌ってほしいと願っているのかもしれません。
カラオケの原キーにこだわる人は、その曲や音楽そのものへの理想が高いのだといえます。
これは、先に書いた、原キーじゃないと気持ち悪いと感じる人の傾向、に通じる部分があります。
しかしながら、本当に良い曲は世代を超え、性別も、キー(調や音域)も超えて愛され続ける、懐の深さがあるものです。
また、広い音域をカバーできる歌い手であっても、自分の魅力を出しやすい音域というものがあり、上手い人はそれを知っているものです。
理想が高いこともこだわりがあることも決して悪いことではありませんが、行き過ぎると様々な可能性を狭めたり、楽しめるはずのものも楽しめなくなってしまいますので、ほどほどに考えましょう。
キーを変えて歌うには
カラオケのキー変更に違和感がある
カラオケのキー変更に違和感を感じるのは、原曲キーのイメージが強いから、ということは先にも書きました。
さらに、曲の印象が変わること以前に、移調(キー変更)した曲を聞いたり歌ったりする習慣がそもそもない、ということがあります。
CDやその他の音源は通常キーを変更して聴くことはできませんし、普段はその必要もありません。
キー変更は、自分が演奏する、歌う状況になって、初めて直面する事態なのです。
次からは、キー変更に対する考え方も含めてみていきましょう。
カラオケでキー変更すると歌えない
キー変更は音の上げ下げで調整することは確かなのですが、上げ下げすることが目的ではありません。
キー変更すること(移調すること)は、曲のキー(調)をまるごと別のキー(調)に移し変えることです。
つまり、音の長さや音程の幅など、音楽の構造は変わらないのです。
音楽的ではないたとえですが、同じマンションの同じ間取り、内装の部屋で、10階から15階に、家具などのレイアウトも一切変えずに引っ越した、としましょう。
生活そのものに変化はないですが、窓から見える景色などは少し違って見えると思います。
理屈では曲全体の構造が変わっていないのにキー変更すると途端に歌えなくなってしまうのは、歌いだしの音や変更したキーの主音など中心になる音が取れていないことから起こります。
変更したキーの印象に慣れ、歌いだしの音が取れるようになると、メロディーや歌詞がきちんと体に入っていれば歌えるようになるでしょう。
次に、変更したキーで歌うための練習方法について書いていきたいと思います。
キーを変えて歌うための練習方法
まず、自分の声の音域を知りましょう。
ピアノやキーボード、ピアノアプリや音程確認アプリなどを使って、高い音低い音それぞれどこまで出せるか知っておきましょう。
詳しくは関連記事にキーの調べ方について書いていますので、ご参照ください。
そして、原曲の歌、メロディーをしっかりと覚えましょう。
キー変更することを前提に考えていたとしても、音の長さ、音程の幅、リズム、言葉の入れ方などはしっかりと覚えましょう。
自分の歌いやすいキーを設定します。
通常は曲の最高音を自分の歌える範囲に設定します。
詳しくは関連記事でキーの合わせ方について書いていますので、ご参照ください。
変更したキーで歌ってみましょう。
原曲キーの歌いだしの音を確認しておいて、変更したキーの音が何に変わったか把握しておきます。
歌う前に、ピアノアプリなどで最初の音を出して音を取っておくと歌いやすいと思います。
もしうまく音が取れない、歌えないという場合は、ガイドボーカル機能を使ってみましょう。
ガイドボーカルを入れて、歌わないで、まずは聴いて変更したキーの音を覚えましょう。
覚えたら、ガイドボーカルと一緒に歌ってみます。
ガイドボーカル付きで歌えるようになってきたら、今度はガイドボーカルなしで歌いましょう。
変更したキーで歌えるようにするには、慣れない人は相応の準備と練習が必要です。
慣れている人でも、人前できちんと披露しようと思えば、自分のものにするためにしっかりと練習するものです。
キーを変えるということは大げさにいうと自分流にカスタマイズすることですから、自分の歌にするくらいのつもりで練習しましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
カラオケのキー設定は便利な機能で、ノドへの負担を減らし、カラオケをより楽しむことにつながるものです。
キー変更は、自分の声の魅力を最大限に引き出すために使うべきだと思います。
こだわりや理想を持つ人に、それらを捨てろとは決して言いませんが、今回お話ししたことを少しでも理解し、柔軟に考えたり、対応したりしてほしいと思います。
今まで歌いたい曲があったけど音域が合わなくてあきらめていた人には、キー設定機能はぜひ使ってほしい機能ですし、異性の曲を歌うときなどにも有効です。
キー変更を効果的に行い、歌える曲や自分の歌の可能性が広がって、カラオケがより楽しいものになってくれたら嬉しいです。
ありがとうございました。