ベースのリミッターの使い方とコンプレッサーの違いとは。

原音の大きさを調節する、ダイナミクス系エフェクターとして、リミッターとコンプレッサーがあります。

これは大きく分けて、ベースとアンプの間に接続して演奏時にコントロールするストンプ・ペダル・タイプのものと、ミックス時に最終出力として調整するタイプのものになります。

今回はベースにおけるリミッターの使い方と、コンプレッサーの違いについて書いていきます。

ベースのリミッターの使い方とコンプレッサーの違いとは。

ベースはそもそも、ギターほどエフェクターを使うケースが少ないパートです。

ベース用エフェクターとして、おそらく一番重要なエフェクターだと思われるのがリミッターもしくはコンプレッサーになります。

この2つのエフェクターは原理的にも用途的にも、非常に良く似ています。

今回は、そのリミッターの使い方について、コンプレッサーとの違いを比較しながら、基本的な事を説明します。

リミッターとコンプレッサーの本来の違い

まずはリミッターとコンプレッサーの違いについて説明します。

リミッターは、あらかじめ設定された音量以上の音をカット、もしくは圧縮し、あらかじめ設定された音量より大きくならないようにするエフェクターです。

逆に言えば、あらかじめ設定された音量以下でベースを発音させた場合は、リミッターの機能は発動されません。(エフェクトの電源が切れる訳ではなく、作動して音量監視・待機状態という事です。)

それに対して、次はコンプレッサーについて解説します。

コンプレッサーは音量を均一化するためのエフェクターです。

あらかじめ設定した音量以上の音は小さく、それ以下の音は大きくする効果があります。

簡単にいうと、音のダイナミクス差を小さくするエフェクターです。

ギター/ベース用アンプはメーカーや機種によってそれぞれ個性があり、サウンドが異なるものです(これはアンプが単なるスピーカー機能だけではないからです。)。その差異を埋めるためにも、リミッターやコンプレッサーがあると、ある程度一定して自分のサウンドを出す事が出来ます。

また、音色は気に入っているが、コンプ感が好きでないというアンプを使う場合も、音の補正のために用意しておくと良いです。

リミッターの使い方

リミッターのコントロール部分の説明と、基本的な使い方についてです。

コントロール・ツマミは、各メーカーで色々と異なる部分がありますが、基本は以下の通りです。

  • Threshold エフェクトが発動するためのレベルを設定します。「閾値」とも言います。
  • Retio Thresholdを超えた入力音を、どれくらいの比率で圧縮するかを設定します。
  • Level エフェクトを作動させた際の音量の設定します。

まずは、Thresholdを調節して、リミッターがかかる音量の値を決定します。

前述の通り、Thresholdを大きくするとあまりリミッターはかからなくなり、低くするとリミッターがかかりやすくなります。

次に、Retioでリミッターの効き具合を調節します。

Retioを大きく設定すると、原音とリミッターをかけた後の音量差が大きくなり、場合によっては不自然に聞こえるので、耳で確認しながら調節しましょう。

リミッターとコンプレッサーはどちらが良いのか?

リミッターとコンプレッサー、どちらが良いとか言う問題ではなく、それぞれ機能が違うので、それぞれ用途に応じて使い分けるのが良いです。

と言っても、エフェクターをあまり使っていなかったベーシストや初心者の方は、判断がなかなか難しいと思いますので、個人的な意見を書いてみたいと思います。

まず、ここまでの説明を読んでいただくと、コンプレッサーの設定次第では、リミッターのように使う事が出来る、と気付くはずです。

リミッターは音量を大きくすることはできませんが、コンプレッサーはそれが可能です。

また、ベース用リミッターはあまり多く発売されていませんが、ベース用コンプレッサーは種類も圧倒的に豊富で、それぞれ個性と特徴を持っており、選択肢の幅も広いです。

ミックスの現場ではリミッターを使うケースは多くあると思いますが、演奏用としてリミッターを使う必要性は、あまりないと思います。

アンプまでの接続機器で、入力音が過大になるような機器を接続している、使っているベース自体が過大出力になってしまう、などのケースでは使えるかもしれませんが、それも前述の通りコンプレッサーで代用可能です。

ですので、リミッターとコンプレッサーは、同じように試奏して単純に使いやすい方を選ぶのが良いですが、もし迷ってしまう場合は、リミッター的な使い方も出来るコンプレッサーを選ぶ方が良いでしょう。

その場合は、コンプレッサーの個性に注目して下さい。

ベースのイコライザーのおすすめのセッティング・設定とは?

続いて、イコライザーについて解説していきます。

一部のベース・アンプに装備されていたり、エフェクターとしても用意されているイコライザーですが、特に初心者の方は、どう設定するのか分かりづらいと思います。

エフェクターには、グラフィック・イコライザーとパラメトリック・イコライザーの2種類があります。

アンプやエフェクターはグラフィック・イコライザーですが、操作が難しく、なかなか狙った効果を出せないかもしれません。

そこで今回は、ベース・アンプについているグラフィック・イコライザーのセッティングの例を紹介していきます。

イコライザーの役割

グラフィック・イコライザーは、5~10バンド程度で、ツマミを上下させて、その帯域の音量を設定していきます。

ベース・アンプやエフェクターによって、設定できるバンド数や帯域は異なりますが、大まかには下記の通りになります。

  • 4.5kHz~10kHz程度 音の輪郭やアタック感が変化します。
  • 400Hz~800Hz程度 音の芯やキャラクター(音色)が変化します。
  • 120Hz~250Hz程度 低音のキャラクターが変化します。
  • 50Hz~120Hz程度 音の太さが変化します。
  • 50Hz以下 耳に聴こえる音というよりは、振動に近くなります。

低中音域は、特にベースのサウンドを決める上で重要な帯域になってきます。

また、音抜けが悪い時は、高音域を強調する、もしくは低音域を削る、といった対応をする事になります。

それではセッティング例を紹介していきますが、あくまで一般的なもので、アンプやエフェクターの機種によって違ってきますので、実際に音を確かめて微調整を行うようにしましょう。

ロックや邦ロックのスラップを使用しないベース

ここでは、基本的にパッシヴ・ピックアップのベースを想定しています。

ベースの音がロックっぽく聴こえる中音域(400Hz~800Hz)を強調し、不要な低音(50Hz付近)を下げ、アタック感を出して存在感を出すため10kHzの部分を上げます。

指弾きの場合は、よりアタック感を強調するため、上記より4.5kHz~10kHzを上げると埋れないサウンドを作る事が出来ます。

より具体的なセッティングは以下の通りになります。

  • 10kHz…+2
  • 4.5kHz…-5
  • 800Hz…+5
  • 500Hz…+10
  • 400Hz…+5
  • 120Hz…±0
  • 50Hz…-5

120Hzや50Hzの帯域を上げ過ぎてしまうと、低音が回り過ぎてしまい、他の楽器にも影響して聴こえなくなってしまう事があります。

ベース・サウンドとしては低音域の成分をカットしてしまうと、物足りなさを感じてしまうかもしれませんが、その場合はモニタなども通して確認しましょう。

スラップを際立たせるセッティング

今度は、アクティヴ・ピックアップを使用しているベースを想定していきます。

スラップを際立たせる場合の一般的なセッティングは、所謂「ドンシャリ」と言われる音になります。

ドンシャリは低音域と高音域を極端に上げ、中音域をカットしてしまうセッティングで、ヘヴィメタルでも同様のセッティングがよく使われます。

ドンシャリのイコライジングは、グラフィック・イコライザーを使うとM字型かV字型になります。

弦を弾いた際のアタック音と、それに伴う低音を強調して重々しさを出すため、400Hz辺りはカットし、50Hzを若干上げて、4.5kHzと10kHz辺りも持ち上げておきます。

より具体的なセッティングは以下の通りになります。

  • 10kHz…+10
  • 4.5kHz…+10
  • 800Hz…±0
  • 500Hz…±0
  • 400Hz…-10
  • 120Hz…±0
  • 50Hz…+5

アタックがベチャッとならないように、スッキリかつ低音部の重みも持たせたサウンドが理想です。

ただし、先ほども書いた通り、低音域を上げ過ぎてしまうと、他の楽器にまで干渉してしまうので、セッティングの際は注意して下さい

指弾きでヘヴィメタルを弾く人のセッティング

上記2つのセッティングと比べると、このセッティングを使うベーシスト、この設定を使う場面などはかなり限られます。

Iron Maidenのリーダー/ベーシストのSteve Harris、Metallicaの初期ベーシストだったCliff Burton(故人)のようなプレイを目指す方には良いかもしれません。

この2名はヘヴィメタル界でも半ば伝説的な存在ですが、指でヘヴィメタルを弾くという点でも共通しています。

ここでのセッティングは、パッシヴ・ベースを指で弾くことを想定しています。

まずは先ほど紹介した「ドンシャリ」セッティングを目指してサウンド・メイクをしますが、スラップ用のセッティングと比べて、低音域を強調します。

理由は、このジャンルはギターが低音域を強調したセッティングになっており、2本ある場合は尚更ですが、必然的にベースはさらに低域を強調せざるを得なくなっているからです(これが「ヘヴィメタル」と言われる所以でもあります。)。

50Hzから120Hz辺りをブーストし、400Hz~800Hzまではカット、そしてアタック音を強調するために4.5kHz、10kHzをブーストします。

より具体的なセッティングは以下の通りになります。

  • 10kHz…+10
  • 4.5kHz…+10
  • 800Hz…-10
  • 500Hz…-15
  • 400Hz…-10
  • 120Hz…+10
  • 50Hz…+15

会場等の演奏する場所が狭い場合、やはり低域を強調すると音が回って他の楽器のと干渉が起こってしまいますので、低域の最低音をバンドで決めて、ギタリストに伝えて低域をある程度削るのが良いでしょう。