タッピングとは、HR/HM系のテクニカルなギタリストが良く使う奏法です。
速弾きをする人にとってはマスト・テクニックであり、花形の技術でもあります。
やり方は、左手の指で低・中音域の弦をハンマリングもしくはプリングを行い、それに加えて右手の指で高音域の弦を同様にハンマリングもしくはプリングをします。
これを高速で何度も繰り返すプレイです。この場合、ピッキングは使いません。
今回はベースでのタッピングについて書いていきます。
ベースのタッピングフレーズのやり方やコツ、練習方法。
基本セッティング
まずはタッピング奏法を行いやすいベースのサウンド設定について解説します。
簡単に列挙すると、以下の点になります。
- 弦高が低い
- 弦のテンションが低め
- 十分に歪ませた音
- コンプレッサーの効いた音
ハンマリング/プリングを繰り返すので、弦は低くてテンションも低い方が、当然簡単になります。
また、ピッキングを行わずアタックがないため、音を歪ませるとタッピングをした際に簡単に発音します。
歪ませ過ぎると当然音の抜けが悪くなりますが、最初は簡単に音が出るので、タッピングの雰囲気が掴めると思います。
コンプレッサーを強めにかける事でも、発音しやすくする事が出来ます。
タッピング時のセッティング
弦高と弦のテンションはそこまで影響しませんが、歪みを強めに設定してしまうと、通常のベースが弾きにくくなってしまいます。
その理由は、タッピングの音量とピッキングで弾く時の音量に差が出来てしまい、タッピング時はアタックがないために音量が小さくなってしまいます。
つまり、タッピングに合わせて歪みを強めてしまうと、ピッキングをする際に歪みすぎてしまい、どうしても音量差が出てしまいます。
同様の現象はコンプレッサーを強くかけた時も起きてしまいます。
対処法として、タッピング奏法をする際は、タッピングに適した音量を得るエフェクター(例えばディストーション、イコライザー等)を同時にしようする事で、他のプレイと音量差をなくすようにしましょう。
練習が必要ですが、通常はピッキングの音量に設定しておき、タッピングを行う際に、ボリューム・ペダルを踏み込むという方法もあります。
実際に、ライブハウス等で難しいタッピングを披露する際、音量が下がってしまい、逆に盛り下がってしまうベーシスト/ギタリストを見かける事があります。
タッピング時の音量差は、リハやプリプロの時から意識しておき、本番でも対処出来るように準備しておきましょう。
練習方法
タッピング奏法は、生音で練習しようとすると特に音量が小さく、きちんと出来ているか確認が難しいので、アンプから音を出すか、アンプ等に接続したヘッドフォンで常にモニタしながら練習するようにして下さい。
技術的にも難しい奏法なので、自分がどれだけ出来ているか、しっかり確認出来るようにしましょう。
練習方法ですが、まずは1本の弦のみでのタッピング奏法から始めるのが良いです。
弾きたいフレーズがあれば、そのフレーズを繰り返し練習するのも良いですが、練習に向いているフレーズを紹介します。
1弦を左手の人差し指で5フレット、薬指で7フレット、小指で9フレットを順番にハンマリングしていき、さらに右手の人差し指で12フレット、中指で14フレット、薬指で15フレットまで順番にハンマリングを続け、今度は逆の順番でプリングしていきます。
このフレーズは、C7コードの分散和音になっています。つまり、C7の構成音のみを引いてます。
上記のフレーズがタッピングで弾けるようになったら、今度は同じポジションで1弦と2弦を繰り返して練習するようにしてみましょう。
これをコードで言うと、G7とC7の繰り返しになります。
このパターンが弾けるようになったら、ハンマリングとプリングを組み替えたり、弾く順番を入れ替えたりすると、フレーズっぽくなります。
タッピングでは、音程差が非常に大きいので、分散和音などを上手く使う事で、スピード感を保ちつつメロディアスで印象的な演奏が出来ると思います。
タッピング奏法の技術面だけでなく、音楽的な面からも考えてみましょう。
ベースのハーモニクス奏法のコツとは?
ベースでコードを弾くと、ハイポジション以外はかなり濁って(音色的にではなく音程として)しまい、和音として聴こえません。
音とは、複音で鳴らす時、低音であるほど響きが濁ってしまう性質があります。
そもそも、エレクトリック・ベースは、コントラバスから発展した楽器ですので、当初から和音を弾く事は想定されていなかったはずです。
(コントラバスは指板が丸くなっており、2音しか和音を出すのが難しい)
しかし、ハーモニクス奏法を使う事で、その音の基音を省いて倍音を鳴らす事になりますので、非常に美しい和音を作る事が出来ます。
また、音も継続するため、ベース1本でもギター並みに多彩な演奏をする事が可能になります。
ベースの役割から考察しても使い道は限られそうですが、ベース1本で音楽的な演奏をする場合、楽曲中のベースソロ、効果音的なサウンドなどでの用途が考えられます。同様の奏法はギターでも良く使われますが、ベースでの使い道は、どちらかと言うとそれほど多くないかもしれません。
ちなみに、ベースによるハーモニクス奏法が世間に広まったきっかけは、かの有名な悲劇のベーシスト、Jaco Pastoriusが1976年に発表したアルバム「Jaco Pastorius(ジャコ・パストリアスの肖像)」に収録された楽曲、「Portrait Of Tracy(トレイシーの肖像)」という、ベース1本で演奏されたインスト・ナンバーです。
ハーモニクスを多用して美しい旋律を奏でているこの楽曲を聴いた当時のリスナーの一部は、Jaco Pastoriusのベースは、どのポジションでもハーモニクスが出せる特別製のベースだ、と勘違いしたそうです。(実際には普通のハーモニクス奏法しか使っていません。)
ナチュラルハーモニクスと人工ハーモニクス
ハーモニクスには、ナチュラル・ハーモニクスと人工ハーモニクスの2種類の奏法があります。
どちらの奏法も使えるようにしておくと、とっさのプレイで活用出来たり、アドリブでも役に立ちます。
ナチュラルハーモニクス
ベースのナットとブリッジを整数当分したポジションに指を軽く置き、弦を弾くと倍音が出るというものです。
ベースの個性や機種、長さなどにもよりますが、一般的に出しやすいポジションを以下に述べますので参考にして下さい。
- 2等分である12フレット辺り→開放弦の1オクターヴ上
- 3等分である7フレットもしくは19フレット辺り→開放弦の1オクターヴ+5度上
- 4等分である7フレットもしくは24フレット辺り→開放弦の2オクターヴ上
- 5等分である4フレット辺り→開放弦2オクターヴ+長3度上
他に色々と考えられるのですが、難易度は上がっていきます。
ちなみに、ギターでも同様の位置でナチュラル・ハーモニクスが出せます。
ナチュラル・ハーモニクスの特徴は、倍音を出す事が出来たら、後は指を離しても問題ないので、音を簡単に重ねていく事が出来る点です。
Jaco Pastoriusの「Portrait Of Tracy」も、ナチュラル・ハーモニクスの特徴を良く活かして演奏されています。
人工ハーモニクス
ナチュラル・ハーモニクスのデメリットは、開放弦とその倍音しか出せない点です。
しかし、理論的には、ハーモニクスとは弦と弦の整数等分に位置するものですので、押弦したポジションの整数等分のポジションを指で軽く触れて弦を弾けば、その弦を押弦したポジションの倍音を出す事が出来ます。
一方で、ナチュラル・ハーモニクスと違い、こちらでは弦を押さえる事で指を使ってしまっているので、軽く弦を押さえる指を、弦を弾く方の指で行わなければならず、さらに弦を弾く必要があるため、難易度はかなり高いです。
綺麗に発音させるコツは、指弾きの場合には、弦を押弦しているポジションとブリッジの半分の位置を人差し指で軽く触れて、中指で弾きます。
「ポーン」という清音がしっかり出ているか、発音を確認しましょう。
もちろん、半分ではなく、ブリッジから2/3や1/4のポジションでも問題ありません。
注意していただきたいのは、押弦しているポジションが移動した場合、軽く触れるポイントも移動してしまうため、必然的にピッキングする指も移動させないと、綺麗なハーモニクスは出せません。
人差し指との距離が簡単に変えられるため、この方法でハーモニクスが出るポイントを、自分で確認しながら覚えていきましょう。
ピック弾きの場合は、中指でピックを持って、後は指弾きと同じように人差し指で弦に触れるようにして下さい。