Music Manは、アメリカでギターやベース、アンプを製造しているブランドです。
Leo Fender氏がFender社を退社した後に設立したブランド、Stingrayのブランド、として有名だと思います。
Music Manの名前が入った初の製品は、実は、ギターでもベースでもなく、アンプでした。
SabreやStingrayなどの有名機種に先出ち、1974年にMusic Man HD-130と412Sが発売されています。
これはFender社のアンプ設計者であったTom Walker氏により開発されたもので、シルバーのサランネット、ブラック・レザーのルックスは、Fenderのデザインが受け継がれています。
Music Manのギターアンプの評判は?
Music Manは、Fender社を離れたLeo Fender氏と、同じくFenderでアンプの設計・開発に携わり、多くの名機を生み出してきたTom Walker氏など、Fenderの関係者らにより1972年に設立されました。
Leo Fender氏の「技術者として新製品を開発したい」という思いから始動し、1974年にはアンプを発表しています。
最初に発表されたHD-130は、すでにギタリストとして人気・実力ともに不動の地位を築いていたEric Claptonが使用したことで、知名度を飛躍的に伸ばしています。
Eric Claptonはこの時期Fenderのギターやアンプを使用し始めており、その興味もあったのかもしれません。彼は正統派のブルース・ギタリストですが、若い頃は機材研究にも熱心でした。
HD-130は、Claptonの過酷なロング・ツアーにも耐えられる頑丈なキャビネットで構成され、JBLやセレッション・スピーカーなどの上質なパーツを採用しています。
その当時のMusic Manのアンプの広告は、エルボー・カットしたGibson Explorerを抱えたClaptonの後ろに、Music Manのアンプが置いてあるという、とてもインパクトがある写真でした。
ヘッドとカール・ケーブルで繋がれたExplorer、ペグに挟まれたタバコと、現代でもかっこ良いと思えます。
HD-130は、見た目よりも重量があり、その原因は大型のトランスを積んでいるためで、他社の同サイズのアンプと比べても、音量差がとてもあります。
・特徴
Music Man HD-130の最大の特徴は、プリアンプ部にトランジスタ、パワーアンプ部に真空管が採用された、その独特のハイブリッド構造です。
Fender系の製作者が関わっているため、サウンドも似ているかと思いきや、Fenderとは全く異なります。
また、Marshallのようなハイ・ファイを意識した歪みという訳でもありません。
ドライヴ・サウンドを想定したマスター・ヴォリューム回路が組み込まれており、鮮明でありながら、ウォーミーさも感じられる、独自のサウンドと言えます。
個人的には、元来クリアなFender系のアンプにファットな力強さを加えたような音、というイメージがしました。
また、ゲイン・コントロールを調節することで、透明感のあるクリーンなサウンドから、過激に歪ませられるディストーション・サウンドまで、とても幅広いジャンルの要求に応えられるでしょう。
繊細というよりもギター・サウンドの芯を残した太さと、音圧のあるパワーを感じるアンプだと思います。
その後のMusic Manは、1984年にギターの弦のメーカーとして著名な、Ernie Ball社へ経営が移行します。
Ernie Ball移行後は、ギターやベースの開発にも事業の範囲を伸ばしています。
そして2015年に、復刻版のアンプが発表されました。
オリジナルに忠実に再現されており、イタリアのDV MarkやMarkbassの製作者として知られるマルコ・デ・ヴァージリス氏が監修しています。
アンプ・ラインアップ
・Music Man 112 RD 50 Combo
1970年代中期~1980年代初期あたりまで作られていた、RDシリーズを元にしたモデルです。
1チャンネル/2ステージ使用の50Wアンプで、クリーン・ステージとリミッター・ステージが選択可能になっています。
クリーン・ステージはトランジスタが使われており、クリアで厚みのある音です。
リミッター・ステージはECC83を1つ搭載しており、チューブを加えたコンプレッション感の強いオーバー・ドライブを生み出します。
パワー部は、6L6真空管が2本あります。
コントロール・ノブについては、クリーン・ステージではVolume、Treble、Bass、Bright Switchが装備、リミッター・ステージではVolume、Treble、Bass、Gain、Reverb Controlが装備されています。
スピーカーは、12インチを一発搭載したアンプで、16、8、2×8、4Ωの外部スピーカー・アウトも搭載しています。
・Music Man 212 HD 130 Combo
HDシリーズも、1970年代中期~1980年代初期まで発売されていたアンプです。
ヴィンテージと同様のモデル名と、シルバー・サランネットとブラック・レザーのルックス(この辺りはFenderを彷彿とさせます)はそのままに、ヴィンテージの良さを残しつつ、現代的なサウンドにもマッチしたコンボ・アンプです。
Claptonも愛用したHDシリーズの復刻ということで、非常に話題に上りました。
プリアンプにはトランジスタ、パワーアンプには真空管を搭載した、ハイブリッド・アンプとなっています。
パワーアンプ部では、真空管ECC83を1本、EL34を4本が使用されており、130Wの2チャンネル仕様で切り替えが可能です。
コントロール・ノブについては、チャンネル1にVolume、Treble、Middle、Bassが装備、チャンネル2にVolume、Treble、Middle、Bass、Reverb、Intensity、Speed、Master Controlが装備されています。
このモデルの個性的なところが、出力を約半分にする事ができるというLowスイッチがあり、65Wアンプとしても使う事が可能なのです。
そしてスピーカーは12インチが2発搭載されており、スピーカー・アウトもあります。
・Music Man HD 130 Reverb Head
HD 130のヘッド・ヴァージョンです。
スタックとして他のスピーカー・キャビネットととの接続が可能です。
Music Manのギター(Axis)の評判は?
1965年、Fender社はCBS社に買収され、創始者であったLeo Fender氏は退社します。
しかし彼のエンジニアとしての情熱は尽きる事がなく、1972年にCBSから工場を一軒買い戻し、かつてのFender関係者達とともに、Music Manというブランドを立ち上げます。
Music Manは、1984年からErnie Ball傘下となりました。
Leo Fender氏がFenderをCBSに売却した理由は、健康上の問題や、ブランド・イメージの方向性に「煮詰まり」を感じていたとも言われます。
すでにFenderは世界的な楽器メーカーでしたので、そのLeo Fender氏が興した新ブランドというだけあり、初めはアンプの開発から始まり(Fenderも当初はアンプ専門ブランドでした)、Fenderの面影を残しながらも、新しい提案、現代に向けた音を指向しています。
ハイ・エンドを指向した製作工程にこだわりを持っており、生産性の必要上機械を用いることもありますが、仕上げは必ず職人の手により行われています。
Music Man Axis
1980年代後半、Edward Van Halenが自身のシグネイチャー・モデルを開発します。
Music Manのギターというと、ClaptonよりもEddyのギターをイメージする人の方が多いかもしれません。
当時のEddyは、Krameとエンドースメント契約を締結していましたが、シグネイチャー・モデルを発表するには至っていませんでした。
EddyはMusic Man製のギターが品質が良いことを知って使用し始めます。その後Music Manと契約を結び、1991年にEddyのシグネイチャー・モデルが発表されることになります。
その当時の仕様は、2ハムバッカーというもので、今までのEddyのイメージからはかけ離れたものだったと言えます。
Axisはシングル・カッタウェイで、Fender TelecasterとGibson Les Paulの中間(?)のようなボディ・シェイプをしており、フラット・トップです。
このギターは、シグネイチャー・モデルという評判を差し引いても、非常に完成度の高いギターとして知られています。
1995年にEddyとの契約が失効しています。
エンドース契約が切れた後は、しばらくの間ヘッドにVan Halenのサインのないギターとして発売されていましたが、その後にAxisという機種名がヘッドに付けられて販売されることになりました。
Eddy Van Halen以降、Steve LukatherやJohn Petrucciのシグネイチャー・モデルを発表しています。
そのためか、Music Manのギターは、一昔前のHR/HMのスタジアム・ロックがイメージされますが、そのサウンドは現代でも十分通用すると思います。
仕様
材は、ボディにバスウッドが使われており、トップには美しいフィギュアド・メイプルが貼られています。
Eddyシグネイチャー・モデルのフィニッシュはラッカー・フィニッシュですが、Axisはポリエステル塗装になっています。
かなり印象的なボディですので、一度見ればすぐに判別できるでしょう。
ボディ・バックにはコンター加工が施されています。
ネック・ジョイントは5点止めのボルト・オン製で、ヒール部はスムース・アクセス加工がされています。
アームはフロイド・ローズでノン・フローティングでアーム・ダウンのみが操作可能です。
コントロール・ノブは、ワン・ヴォリュームのみで、トーン・コントロールはありません(AX4には装備されています)。
ピックアップ・セレクターは、Eddyシグネイチャー・モデルとAxisでは位置が異なっています。
ピックアップについては、DiMarzioのカスタム・ハムバッカーがボディにダイレクトにマウントされています。
ネックは、材がメイプル、25.5インチのロング・スケール、左右非対称のネック・グリップです。
指板のラディアスは、10インチのフラットなものです。
ナット幅が41.3ミリとなっており、オイル・フィニッシュのネックと共に非常に握りやすくて、弾きやすいと思います。
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