日本のギター・ブランド、トーカイは、正式な会社の商号を東海楽器製造株式会社と言い、静岡県浜松市に本社があります。
「トーカイ」とは、同社の略称として定着しています。
エレクトリック・ギターの他に、アコースティック・ギターやピアニカなども製造しています。
それまでピアノやピアニカを中心に製造・販売を行っていましたが、1965年にクラシック・ギターの製造を始めます。
そして、トーカイのエレクトリック・ギター製造は1968年に始まりました。生産を始めた当初は他のメーカーと同じく、FenderやGibsonのコピー・モデルが中心でした。
ルックスだけを真似したギターが多い中で、トーカイのギターは他社と比べるとはるかにクオリティーの高いものと評価されていました。
FenderやGibsonのヴィンテージと呼ばれる本物から採寸し、材質・仕様ともに徹底的にコピーされており、特に人気の高かった50年代後半のモデルは、忠実に再現されています。
このようなコピーのギターは、海外の本物のモデルを買えない人たちの代用などではなく、本家を超えた言われるほどのクオリティを持っていて、国産ギターとしては高価なものでした。
その頃のモデルは、「ジャパン・ヴィンテージ」と呼ばれ、現在でも高値で取引されています。
また、OEM製作も請け負っており、シェクターなどを製造しています。
過去には、C.F.Martin社の日本国内向けアコースティック・ギターやフェンダー・ジャパンのギターも製造したこともあり、技術力は定評があります。
東海楽器の歴史
簡単に東海楽器製造株式会社の沿革を紹介します。
1947年にピアノとハーモニカの研究開発と目的として、東海楽器研究所が設立されます。
1961年、「ピアニカ」の開発に成功し、製造・販売を開始します。
1965年にクラシック・ギターの製造・販売を開始します
1968年より、Hummingbirdブランドによるエレクトリック・ギターの生産・販売を開始します。
1977年にTokaiブランドとしてエレクトリック・ギターSTシリーズの生産と販売を開始します。
この頃の主な製品は、Fender StratocasterタイプやGibson Les Paulタイプなどのコピー・モデルでした。
この時期に製造されたモデルが、前述した「ジャパン・ヴィンテージ」と呼ばれるもので、海外でも人気があり、特にLes Paulタイプの上位機種は評価が高く、市場ではほとんど見かけないほどです。
実際にFenderやGibsonのヴィンテージを研究してだけあって、高い品質を誇っています。
そして1983年、現在ではTokaiの定番モデルとなっているTalboを開発し、生産・販売を開始しました。
Talboは、ご存知の通り、アルミ製ボディという独特のスペックで、時代背景もあってか近未来的なギターとして注目を浴びました。
しかし、1984年に米国Fender社から偽造品製造をしているとして訴訟を起こされて敗訴し、裁判所命令により楽器が販売停止となり会社更生法を申請しました。
以降、1986年に東海楽器製造株式会社を設立し、1996年には生産中止していたTalboの再生産を開始します。
トーカイ・ギターの特徴
トーカイは、コピー・モデルを作らせたら日本一、本家を凌ぐほどのクオリティと評されるほど、質の高いコピー・モデルを作る技術を有しています。
トーカイがコピー・モデルを作り始めた時期は、本家のFenderがCBS傘下、そしてGibsonもNorlin傘下にあるという時期であり、両社ともにあまり品質の良くないギターを作っていた暗黒時代でした。
そこでトーカイのギターは、価格も安く、作りもしっかりとした高品質なものであったため、本家を上回るほどだという高い評価を得ます。
本物のヴィンテージのサウンドは魅力的ではありますが、古いだけにネックの状態が劣化していたり、内部の電気系統も寿命を迎えているようなものがあったりします。
そのようなギターでプレイするより、ブランドに拘らなければ、新品に近い状態でヴィンテージ・サウンドが楽しめるという事になります。
トーカイ・ギターは、とにかく頑丈でフレットの減りも少なく、音の抜けも良くて高い人気を集めています。
ハンダ付けによる劣化を防ぐため、コストがかかるプリント基盤を採用していたりと、本家とは異なった仕様もありますが、オリジナルを意識しつつ品質を保とうとする姿勢がうかがえます。
この頃のトーカイのLes Paulタイプのギターは、ZZ TopのBilly Gibbonsが絶賛し、そのツアー中に使用されました。
このLes Paulモデルに限らず、この時期のトーカイ製のギターは、現在では中古市場でプレミア価格が付いており、高値で取引されています。
豊富な木材を自由に使えた時期でしたので、この時期のLes Paulモデルはとても美しいです。
Stratocasterタイプも同様に高い評価があり、最近ではJohn Mayorが使用したこともあって、さらに価格が上がっているようです。
・オリジナル・ギター
続いて、オリジナル・ギターについて見ていきましょう。
近年のトーカイのギターでは、SEB(Sound Effect Body)構造というボディ構造を開発し、特許を取得しています。
SEB構造は、通常よりも速い音の立ち上がりとレスポンス、抜けの良いクリアーな音、そしてロング・サステインを実現させることに成功しています。
トーカイのオリジナル・モデルであるTalboも1996年に再生産され、その独特なサウンドには一定のファンもいるようです。
ギターのボディ材としては珍しく、アルミが使用されています。
これは音響的によるもので、外部からのノイズをシャット・アウトするのに有効であり、サウンド的にも非常にクリアな特性をもっています。
またアルミの質量の高さから、サステインが長く自然な減衰を持っており、音の立ち上がりも良いため、さまざまなジャンルで対応が可能です。
このSEB構造とは、ピアノの設計からヒントを得たもので、表板と裏板の間の中層が、木材の繊維方向が垂直になるように配置され、振動伝達速度の向上が得られました。
通常ではボディ材には単板と言われる一枚板が良いとされていますが、それを否定するかのように設計された結果、上記で紹介したような、かなり理想的なギターの音に仕上がっています。
ボディ材にはアルミが使用されています。これは音響的によるもので、外部からのノイズをシャットアウトするのに有効であるため、サウンド的に非常にクリアな特性をもっています。またアルミの質量の高さから、サスティーンが長く自然な減衰で音の立ち上がりも良いため、さまざまなジャンルに対応できます。
注目すべきは2004年にSEBと呼ばれるボディ構造が発表されました。
SEBとはSound Effect Bodyの略で特許を取得しています。これはピアノの設計からヒントを得たもので、表板と裏板の間の中層が、木材の繊維方向が垂直になるように配置され、振動伝達速度の向上が得られました。今まではボディ材には単板と言われる一枚板が良いというのが常でしたが、それを否定するかのように設計されその結果、音の立ち上がりとサスティーンがさらに良くなりました。
トーカイのギターのLes Paulモデル、Stratocasterモデルの音の特徴。
近年、「ジャパン・ヴィンテージ」と呼ばれ、日本国内生産モデルを再評価されることがあります。
特にその中でも、Grecoのギターとトーカイのギターには高い値段が付きます。
その時代は、日本国内のギター・メーカーが競って良い製品を作っていたという証左でしょう。
また、木材の使用に関しても、今ほど様々な規制がある時代ではなかったため、豊富な木材を自由に使うことが出来たのも、要因として考えられるかもしれません。
Les Paulモデル
トーカイのLes Paulモデルは、Love Rockモデルとして製作されています。
昔は、「Les Paul Model」とヘッドに入っていましたが(現代では考えられないことですが)、本家Gibsonより苦情が出たため、「Love Rock Model」と入れることになりました。
トーカイのLes Paulモデルは、「学生街の喫茶店」のヒットで有名なガロの日高富明氏を、Reborn Oldシリーズの製作アドバイザーとして迎え入れています。
東海楽器は、その日高富明氏がアメリカから入手してきたオールドのLes Paulを借りて、実測から図面を起こし、当時最先端だった3Dルーターを使ってLes Paulのコピー・モデルを完成させます。
このような経過で完成されたLes Paulモデルの仕上がりは、今見ても素晴らしいです。
ボディの虎杢も美しく、ヘッドのロゴを除けば、まるでヴィンテージのLes Paulが蘇ったかのような印象と言えるほどの出来栄えでした。
これは、ライバル会社であったGrecoにも当然刺激となり、これからGrecoは高級路線に足を踏み入れるほかありませんでした。
しかし、この頃のトーカイのLes Paulモデルは、10万円台のものでも美しい削り出しのトップを採用しており、他社の比較になるものではありませんでした。
また、指板もハカランダを採用していたようです。
音に関しては、当時はDiMarzioのPAFタイプのピックアップをマウントしていましたので、これを他社のPAFタイプのピックアップに交換することで、ギター・サウンドの質は格段に向上します。
現在でも国内向けには高級モデルが作られていますが、その製作過程は素晴らしく、初心者用のLes Paulモデルとしても、もちろん普通に自分のレギュラー・ギターとしても非常に優れています。
ピックアップを交換すれば、とても良いギターになります。
Stratocasterモデル
Fenderに提訴されたことによって、会社更生法の申請をするまで追い込まれてしまったトーカイでしたが、近年John MayorがオールドのStratocasterモデルを使用したこともあり値段が高騰しました。
その頃のトーカイ製のStratocasterモデルは、Silver Starというモデルですが、1978年から1984年頃まで製造とされていたようです。
その後にフェンダー・ジャパンが登場したことにより、トーカイのStratocasterモデルは失速しますが、電気系統やペグを交換することで、とても素晴らしいギターになります。
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