Wahペダルの歴史は、1965年にアメリカのThomas Organ社のエンジニアが、Vox Super Beatleアンプのミッド・レンジ・ブーストの回路を改良中に、偶然ワウ効果を発見したことから始まりました。
そして現在では、もはや定番エフェクターとして定着しているCry Babyのワウ。
その種類や評価レビューを書いていきます。
Cry Baby Wahの種類や評価レビュー。
翌66年、すでに製造・販売されていたVoxのヴォリューム・ペダルの筐体をそのまま流用して、イギリス国内でプロトタイプが制作されました。
そして、名だたるミュージシャンやギタリストにモニターしてもらいながら、開発を続けていきます。
量産体制が徐々に整ってきたところで、67年2月に、JIMI、Thomas、EKOの3社合同で、イタリアに設立された共同会社「EME」により、ついにワウ・ペダルの製造が本格的にスタートします。
記念すべき第1号の製品はVoxブランドでした。
当時の著名なトランペット奏者で、ワウワウ・ミュート(トランペットの先にミュートを取り付けて、手で連続的に開閉させて「ワウワウ」という音を出す奏法)を得意としていたClyde McCoyの名を使用し、「Vox The Clyde McCoy Wah Wah Pedal」と名付けられてリリースされます。
さらにその数ヶ月後、中身のパーツはほぼ同じで、「Cry Baby」というモデルも発売されています。
この機種は、当時洗練された都市型ブラック・ミュージックが隆盛していたアメリカ市場向けで製作されたものでした。
その後、OEMも含めて様々なブランド名のワウ・ペダルが製作されます。
・Wahの仕組み
Wahが動作する仕組みは、ペダルを上下することで、特定の帯域をリアルタイムに可変させるというものです。
基本的にはパラメトリック・イコライザーと同じ原理ですが、Wahの場合は効果を与える特定の帯域の幅である「Q」は固定になります。
そして、その中止となる周波数を表す「Frequency」を、ペダルを踏み込んで変化させるというものです。
ペダルを踏むと高い周波数帯域がブーストされ、ペダルを戻すとカットされる動きになります。
Wahペダルでも「トゥルー・バイパス」仕様になっているものがあります。Wahに関してはこちらのタイプを選んだ方が良いでしょう。
おすすめWahペダル
Vox
・V847-A
ヴィンテージの特徴であるウォームなサウンドを再現しつつ、激しいライブ・パフォーマンスにも耐えうる耐久性を備えています。
VoxのWahペダルでは、最も人気がある機種になります。
Wahにはクセのある機種がいくつもあり、選択肢の幅が広いのですが、初心者の方やどれを選んで良いか分からない方には、おすすめ出来ます。
・V845
V847-Aよりも現代的なサウンドを追求した機種です。
ロー・エンドがよりブーストされており、さらに鋭さもあるペダルです。
やはり現代的な楽曲と相性が良いと思います。
・V846 HW
高品質のパーツをハンド・ワイアードで組み上げた機種です。
その分コストもかかってきますが、高音域・低音域どちらも安定感があります。
トゥルー・バイパス仕様で、音質劣化も最小限に留めています。
Jim Dunlop
Voxと並ぶ有名なWah、Cry BabyはJim Dunlopが開発した機種です。
Cry BabyはVoxに比べて「踏みしろが大きい」と言われ、使いこなせるようになるには、慣れが必要になります。
また、音質の変化が大きいので、コントロールすることは難しいですが、使えるようになれば可変幅の大きなWahサウンドが得られるでしょう。
・GCB-95 CRY BABY WAH
高音域が強調されており、抜けの良さが最大の特徴と言える機種です。
高音域が強いため、歪み系エフェクター(特にディストーション)との相性が良く、リズミックでダーティーなサウンドを作ることが出来ます。
ディストーションの前に置くか、後に置くかで、そのサウンドも変わってくるので、色々試してみると面白いです。
・CBM95
2015年に発売された、定番のCry Babyをハーフ・サイズにしたペダルです。
筐体が小さく、運搬やエフェクト・ボードに組み込むのに優れています。
内部スイッチにより、Low/Vintage/GCB95の3つのモードを選択することが可能です。
Boss Dynamic Wah AW-3について
続いて、日本のトップ・クラスのエフェクター・メーカー、BossのDynamic Wah AW-3について書いていきます。
Bossと言えば、本当に様々な種類のエフェクターを製作しており、その質の高さにも定評があります。
海外メーカーのものとは異なり、一見してBossのエフェクター、と分かる筐体ですが、この機種には見た目以外にもBossらしさが詰まっています。
まず、ここまでのBossのAuto Wahの変遷を確認しておきましょう。
- 1978年 Boss T Wah TW-1 Touch Wah OD-1と同じクワッド・オペ・アンプ使用
- 1986年 Boss Dynamic Filter FT-2 ネーミング失敗、初搭載EXP IN
- 1991年 Boss Auto Wah AW-2 モジュレーション機能搭載
- 2000年 Boss Dynamic Wah AW-3 デジタル化DSP搭載
FT-2はそのネーミングで、どんなエフェクターなのかイメージされづらかったかもしれません。
そして2000年に発表されたAW-3ですが、何とこれが現在までの最新の機種になります。
20年近くモデル・チェンジされていないことになります。
操作方法
・基本事項
Inputが2つあり、Guitar InとBass Inに分かれています。
Output1つ、そしてEXP/CTLジャックがついています。
これは、エクスプレッションペダル(Roland EV-5推奨)を繋いで、マニュアルのワウ・ペダルのように直接ワウのかかる速度をコントロールすることが可能です。
・コントロール・ノブ
コントロール・ノブは4つあります。
- Decay エフェクトが変化する時間を調節します。
- Manual 周波数帯域を調節します。
- Sens ピッキング・レベルに対するワウ効果のかかり具合を調節します。
・Mode機能
この機種の最大のセールス・ポイントは、様々なWahのModeが内蔵されている点で、5種類が準備されています。
- Up ピッキング・ワウで、ワウを引き上げたときのサウンドです。
- Down ピッキング・ワウで、ワウを踏み込んだときのサウンドです。
- Sharp ピッキング・ワウで、ギターシンセ風ワウのサウンドです。
- Tempo フットペダルを2秒間踏み込んで、テンポを設定するモードです(ピッキングワウではなく一定のテンポでワウを上下している感じです)。
- Humanizer 人の声のような効果で、あいうえおが出ます(エクスプレッション・ペダルで操作することで母音をリアルタイムでいじる事が可能)。
特筆すべきはHumanizerで、これはBoss清野マルチ・エフェクターにも同様のエフェクターがありました。
これをストンプ・タイプのエフェクターに採用するというのは、非常に驚かされます。
・まとめ
AW-3はデジタル・エフェクターですので、消費電力が50mAと大きくなってしまいました。
消費電力が大きいので、ACアダプター(PSA-100)で使用するのが望ましいでしょう。
ちなみに、基盤を覗いてみると、様々なパーツがびっしりと敷き詰められていました。
次のモデル・チェンジの際は、どのような新機能が追加されているのか、非常に楽しみです。
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