一昔前であれば、中国製と言うだけで安価だが粗悪なもの、と言うイメージでした。
近年の中国のメーカーは、安価で質の高いエフェクターを数多く製作しています。
その代表的なメーカーがDonnerですが、こちらで製作するエフェクターには、基本的に元ネタになるエフェクターが存在します。
しかし、Mooerなどのメーカーも含めて、オリジナル商品にも開発・販売に力を入れています。
今回紹介するエフェクターは、Donner Alpha Cruncherです。
Donnerのオリジナル・マルチ・エフェクターです。
非常にコンパクトなボディにディレイ、コーラス、ディストーションの3つの主要なエフェクターが搭載されています。
また、軽量でギターのソフト・ケースにも入りますので、ギタリストにとっては嬉しい持ち運びにも便利です。
Donner Alpha Cruncherの評価・音作りについて
スペック
Donner Alpha Cruncherのスペックは、以下の通りになります。
・コントロール・ノブ
- ディレイ On/Offスイッチ、Level、Feedback、Delay
- コーラス On/Offスイッチ、Level、Rate、Depth
- ディストーション On/Offスイッチ、Volume、Gain、Tone
・その他
トゥルー・バイパス
・電源
9V DCアダプター、電池非対応
・サイズ
横:196mm、奥行:64mm、高さ:45mm、重量:350g
評価と感想
エフェクターの種類はディレイ、コーラス、ディストーションと、基礎的かつ必要最低限のエフェクトが用意されています。
しかし、このマルチ・エフェクターは、プログラムが出来ません。
つまり、単に3つのエフェクターが直列に接続されているだけなのですが、その分、シンプルで直感的な操作が可能と言えます。
ディレイ、コーラスは強烈な効きは望めませんが、アナログ的で自然な効果で、近年のデジタルものに比べると、操作が簡単です。
このように書くと、シンプル過ぎて機能が足りていないように感じるかもしれませんが、実は、Bossが最初に発表したマルチ・エフェクターのBE-5は、まさにこのタイプです。
プログラムを嫌う一部の愛好家には今でもよく使われています。
もしくは割り切って利便性と経済性を優先して使用しましょう。
・サウンドと機能
ディレイはクセがなく、すっきりとした減衰があります。
また、透明感のあるコーラスで、原音を加工し過ぎることはありません。
ディストーションの歪みは立体間があり、あまりゲインを上げ過ぎなければ、ノイズも気になりません。多少ハイが足りないような気もしますが、実際に演奏していて問題にはならないレベルだと思います。
また、Boss BE-5をあえて使う理由は、プログラムがないという事だけでなく、「小さい」「軽い」という事が最大のメリットだからです。
BE-5は、現在ではヴィンテージ・エフェクターといった状態で、入手困難になっています。
そこで、BE-5のようなマルチ・エフェクターが欲しい人にはAlpha Cruncherは、かなりオススメ出来る機種です。
BE-5に比べると、コンプレッサーとノイズ・サスプレッサーがありませんが、使わない人には問題ありませんし、もしくは単体で準備しても良いかもしれません。
何よりAlpha Cruncherは、価格が安い(2020年7月現在で、約6,000円)です。
惜しむらくはチューナー・アウトがない点でしょうか?
BE-5は、非常に小さい機種でしたが、Alpha Cruncherはさらに一回り小さいです。
実物の機種を見ると、イメージよりかなり小さい事に驚くと思います。
音作りについて
Donnerオフィシャル・サイトの説明を見ると、ディストーションがアナログで、それ以外はデジタルのようです。
前述ではアナログのような印象、と書きましたが、機構はデジタル回路です。
操作は非常にシンプルで、それぞれのエフェクトでOn/Offの切り替えが可能です。
最近のマルチ・エフェクターのような、多機能で複雑な操作はありません。
ディストーションは、粒が荒く、ブリティッシュ・ロックをイメージしたような音で、ディストーションというより、むしろモダン・オーバードライブという雰囲気です。
Gainを下げていくと軽い歪みでクランチ・サウンドになりますが、音の芯がない気がしますので、歪みは強めにして音の迫力を失わないようにしましょう。
ディレイやコーラスは、積極的に飛び道具として使うのではなく、原音に対する味付けとして活用するのが良いと思いました。
最後に
とりあえず必要な3つのエフェクターがあって、直感的な操作が可能、なおかつこの価格帯と軽量感は、かなり素晴らしいマルチ・エフェクターと言えます。
Donnerのコンパクト・エフェクターは、他社の製品と比べるとサイズが一回り小さく、3,000円前後の価格のものが中心です。
安価なのにサウンドが悪くないのは、コピー技術で培ったノウハウがあり、技術力そのものが向上しているのかもしれません。
有名メーカーのOEM生産をしていたりする場合は、見た目は違っても中身は同じもの…といった製品はよくあります。
安い部品を使っているのも事実ですが、これだけのサウンドで、この値段ならコスパは相当高いと言えます。
初心者の人はこれ買って使ってエフェクトや音作りを勉強するのも良いですし、とりあえず基礎的な音は手元に準備できます。
初心者ではない方でも、ちょっとしたセッションや簡単なレコーディングなどで、フル装備持っていくのがめんどうな時にこれがあると重宝するでしょう。