Rickenbackerは、エレクトリック・ギター/ベースやアコースティック・ギターの製造を中心とした、アメリカの楽器メーカーです。
そのメーカー名を聴けば、John Lennon、Paul McCartney、そして英国のモッズ・バンドを思い浮かべる方が大半でしょう。
Voxのような英国メーカーのイメージがしますが、アメリカ・カリフォルニア州にあるメーカーです。
また、世界初のエレクトリック・ギターを開発したのは、FenderでもGibsonでもなく、実はRickenbackerでした。
パンク以前のUKロック、というイメージがどうしても強いメーカーですが、現代でも多くのギタリストに愛されている、ロングセラー・メーカーでもあります。
ソリッド・モデル、セミ・アコ・モデル、そして12弦ギターと、幅広いラインナップを揃えていることも、Rickenbackerの魅力だと言えるでしょう。
Rickenbackerの簡単な歴史
Rickenbackerの歴史は、1925年にAdolf Rickenbackerがスイスからアメリカに移住した所から始まります。
ロサンゼルスに金属パーツの製作店「Rickenbacker Manufacturing Company」を設立したことにより始まります。
当時のアメリカは第一次大戦後の好景気で、大衆娯楽が大きく発展、音楽界でも、ブルースやジャズが隆盛し始めていました。
そして1932年、時代の要請に応えるように、世界初のエレクトリック・ギターと言われている機種「Flying Pan」を発表します。
試行錯誤の上で製作されたのは、今では考えられないくらい大きなピックアップがマウントされていました。
そしてRickenbackerは、1962年にデビューした英国のバンド、The BeatlesのJohn Lennon、George Harrisonが使用していたことで、一気に有名ギター・メーカーとして認知されます。
また、The WhoのPete Townshentも同時にRickenbackerを使用し、ダイナミックで破壊的なパフォーマンスを見せたことで、以降モッズ達のマスト・アイテムの1つとなります。
1970年代には、これまでの主力ピックアップだった「Horse Shoe PU」の出力を上げた「ハイ・ゲイン・ピックアップ」を製作し、新しい音楽の時代にも対応していきます。
現在では、ビートルマニアやモッズ・バンドだけでなく、インディーズやオルタナの世代にも支持されています。
ギター・ラインアップと音の特徴
・Rickenbackerのラインナップ
現在のRickenbackerの主なエレクトリック・ギターは、
- セミ・ホロウ・ボディ、ミディアム・スケール、セット・ネックの300系
- ソリッド・ボディ、ショート・スケール、スルー・ネックの600系
以上の2つが主軸となっています。
Rickenbackerは、一貫して職人によるハンドメイドで高品位の楽器生産にこだわり続けています。
・ホロウ・ボディ(300シリーズ)
ボディに中空があり、セミ・ホロウ特有の「空気感」、「シャープさ」そして「音の厚み」を持ち、アコースティックっぽさを感じることが出来ます。
温かみのある生音はもちろんですが、エレクトリックであっても中音域の豊さを残しつつ、トレブリーで丸みのある、まさに60年代英国を思わせるサウンドです。
基本系のRickenbacker 330、ハイ・グレード・モデルのRickenbacker 360の2つに、それぞれ3ピックアップ・モデルと12弦モデル、3ピックアップの12弦モデルが揃っています。
ワン・ストロークが非常に印象的な「A Hard Day’s Night」のイントロは、George Harrisonが弾いているのは、360の12弦モデルです。
また、初期のJohn Lennonのトレード・マークとも言える3ピックアップのブラック・フィニッシュのものは325です。
・ソリッドボディ(600シリーズ)
ボディに中空がないソリッド・ボディ構造となったので、ハウリングへの耐性が高いです。
また、エフェクターのノリが良くなり、ドライブ系のエフェクターをかましてハードなサウンドを出したり、空間系のエフェクターと合わせて奥行きを出すなど、よりエフェクティヴなプレイが可能になります。
GibsonやGretschとは違ったシェイプの大型ボディ、Fender Stratocasterよりも鋭いカッタウェイと、非常に特徴的な形状をしています。
3ピースのジャケットにこのRickenbackerを抱えたシルエットは、モッズを知らない若い世代にも、非常にクールに映ると思います。Gibson系のアーチ・トップでは、ジャズやブルースのイメージですが、Rickenbackerはより現代的だと思います。
全般に言えることは、中空ボディの機種が多いので、中音域の特徴を残しつつも高音域がはっきりしているので、ホロウ・ボディでもソリッドっぽい、ロックなサウンドを求めている方には最適です。
・アッセンブリー
ハード面では、Gibsonの多くの機種で採用されている2ヴォリューム、2トーンが基本ですが、第5番目のコントロール・ノブ「5th Control」が最大の特徴です。
機種によってその機能は多少異なりますが、この5th ControlはフロントPUとリアPUの出力バランスを調節します。
また、珍しく2つのアウトプット・ジャックを備えた機種もあり、それぞれアンプや録音機器につなげば、ステレオ出力することも可能になっています。
ネックは、いわゆる「反り」を細かく調整できるように、トラスロッドが2本仕込まれています。2本の調節には専門的な技術が要りますので、必要な場合はリペアショップなどに相談すると良いでしょう。
Rickenbackerは、これだけの人気メーカーなのですが、FenderやGibsonのようにコピー・モデルや廉価版がありません。
やはり、前述のとおり、職人による高い技術で精巧に作られているからかもしれません。
また、600シリーズは、300シリーズよりシャープなサウンドと言った印象ですが、ネック・スケールを落としてバランスを取っているようです。
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