Firebirdは、Les PaulやSGと並ぶGibsonの代表的なギターです。
それまでのGibsonのイメージを覆すこのギターは、発表から半世紀以上経った現在でも人気があります。
今回はFIrebirdのギターの音の特徴についてお届けしたいと思います。
Gibson Firebirdについて
・Firebirdの歴史
Les Paul、ES-335、Flying V、Explorer、SGと、現在までトラディショナル・モデルとして多く使われているGibsonのギターは、全て社長のTed McCartyの元で製作されました。
そのTedのキャリアの最後となったのが、1963年に発表されたGibson Firebirdです。
一方、当時のFenderは、Stratocaster、Telecasterに加えてJaguar、Jazzmasterと次々に新作を発表していました。
このような状況で、通常のラインナップのままでは対抗できないと考えたGibsonは、当時アメリカで大流行していたサーフミュージック系にマッチするギターの開発に着手しました。
それがこのFirebirdだったのです。
搭載されたピックアップは、それまでのGibsonの代名詞とも言えるP-90やPAFハムバッカーとは異なり、Fenderを意識したブライトかつドライなサウンドを特徴とするミニ・ハムバッカーでした。
高域に特徴を持ったこのピックアップは、Firebirdのサウンド・キャラクターとして広く認知されていくことになります。
発売当時は、Gibsonのモデルで最も高価なギターであり、The Rolling StonesのBrian Jones、CreamのEric Claptonの使用で有名になりました。
・Firebirdについて
Firebirdは、Flying VやExplorerにも代表される、Gibsonの近未来型ギターのボディ・シェイプを持っています。
注目すべきは、そのスタイリングにあると言えます。
一見するとFender系のギターの重量感をイメージしますが、一度手に取って肩からぶら下げてみると、そのギャップに驚かれるでしょう。
ヘッドが非常に重いため、このギターを立って引き続けるには、慣れと経験が必要です。
この原因は、バンジョー・ペグと呼ばれる大きなペグによるもので、その重みのため常にヘッドが下を向いてしまっているためです。
座って弾くにしてもボディ上部が胸に当たって弾きづらく、はっきり言ってボディ形状は演奏性を考慮した作りとは言えません。
しかし、Firebirdは、Gibsonギターの中では異色と言える独特のサウンドを持っています。
後に、オリジナルのボディ・シェイプを反転させたデザインに変更され、ネック・ジョイントもスルー・ネックが採用され、ヘッドの形状もいわゆるノン・リヴァース型になりました。
元Chryslerのデザイナーで、独立後複数のメーカーに携わったカー・デザイナー、Ray Dietrichにデザインさせるという奇抜な発想すら、1958年にFlying VとExplorerを発売した時に比べれば、大したことではないのかも知れません。
その後、Firebirdはモデル・チェンジして後年ノン・リヴァース・モデルと呼ばれるものになりますが、ここではいわゆるリヴァース・タイプについて説明していきます。
オール・マホガニーと専用のミニ・ハムバッカーの組み合わせ
Firebirdのピックアップには、ミニ・ハムバッカーが搭載されています。
このピックアップは、これまでのGibsonのギターに使われているピックアップ、これまでのミニ・ハムバッカーとは全く異なるものです。
このピックアップが搭載されているギターは、唯一のスルー・ネック構造となっており、オール・マホガニー材が使われています。
ミニ・ハムバッカーの名前のとおり、パワーが小さくてトレブリーですので、一聴しただけではシングルコイルのような印象を受けます。
そのため、いわゆる「GibsonとFenderの中間」のようなサウンドと表されますが、スルー・ネック構造の影響もあってか、Les PaulやStratocasterにはない独特のサステインが得られ、ドライなサウンドからはイメージできない意外性もあります。
・P-90との比較
サウンドの特徴は、P-90に比べると太さこそいものの、芯のあるカラっとしたものに歯切れ良さが加わった、とても独特な音になっています。
P-90は、初期のLes Paul、後の時代の派生モデルにも搭載されており、Gibsonのシングルコイル・ピックアップです。
Fenderのシングルコイルと比べると、豊かな低中域と厚みが特徴です。Fender Jazzmasterに搭載されているものと同じような形をしていますが、設計がかなり異なっているようです。
P-90は磁石の上に鉄製のポールピースが立てられており、磁力が弱い分、磁界が広くなっています。
ポールピース自体が磁石となっているFenderのピックアップと比べ、シングルコイルながら太いサウンドが出せます。
このP-90は、後のFirebirdモデルにも搭載されました。
P-90が搭載されたモデルは、ヘッドがノン・リヴァースになり、スルー・ネックからセット・ネックに変更されています。
適度な太さと音の歯切れ良さはブルースやブルース・ロック、特にアメリカ南部のアーシーな音楽に非常に良く合います。
個人的には、Firebirdサウンドを聴いていると、Muddy WatersとJohnny Winterの顔が浮かんできます。
フロントを使うかリアを使うか
深いブルース・ロックをFirebirdを使うギタリストは、主にフロント・ピックアップを使っているようです。
これは、より太くて存在感のある音を求めるからだと考えられます。
また、古いタイプのFirebirdは、リアが非力なものをマウントしている機種もあった事も、その理由に挙げられるかもしれません。
しかし、近年生産されているFirebirdは、リアにもパワーがあるピックアップが搭載されるようになり、音の太さを保ちつつ、Firebirdの特徴的なドライさが残されているようです。
実際、新しいFirebirdを使用してブルース系ではない音を出しているギタリストは、リアを中心に使っている人が多いです。
もちろんフロントは、昔のままのブルージーなプレイに向いている音になっています。
Firebirdは形が特殊な形状をしているため、あまりオーソドックスなプレイに向いていないように思えるかもしれませんが、使ってみると案外どんなジャンルにもマッチするように感じるでしょう。
コード・カッティングは歯切れが良く、シングルコイル程には細くなり過ぎずに、パンチがあって低音もパワフルな点が特徴です。
アンプで軽く歪みを効かせた、クランチ・サウンドがベスト・セッティングです。
ただし、あまり歪ませ過ぎるとハウリングを起こしやすく、またパワーも通常のハムバッカーに比べれば低いため、ハイ・ゲインなヘヴィメタルのような音楽にはあまり向いていません。
乱暴に行って、ヘヴィメタル以外の音楽なら、何でも対応できるサウンドでしょう。
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