ポップ・ミュージックで、ギターはよく「リズム楽器」ということを言われます。
ブルースやカントリー、その影響を受けたロックでは、カッコいいリズム・プレイが聴かれます。
ギターの花形プレイというと、ギター・ソロに目が行きがちですが、カッティングを駆使した正確で攻撃的なリズム・プレイも魅力的です。
今回はアコースティック・ギターでカッコよく、そして上手にカッティングを弾くには?というテーマを考えていきます。
カッティングについて
アコースティック・ギターは、誰でも手軽に始められる楽器の一つです。
ですが、アコースティック・ギターの演奏は、繊細で個人の技量によってサウンドが大きく異なります。
ピアノは誰が鍵盤を叩いても同じ「ド」ですが、上級者と初心者がアコースティック・ギターで鳴らす「ド」は全く違う響きです。
アコースティック・ギターを始めたばかりは、コードをジャカジャカ鳴らしても、今ひとつカッコ良く弾けていない、と気づくと思います。そこでカッティングというテクニックを取り入れてみます。カッティングが上手くできると、きれいな歯切れのよいサウンドを出すことができます。
アコースティック・ギターの演奏で最も大事なのは、リズム感です。
具体的には、音符・休符を譜面どおりの長さで弾く、アクセントを付ける、実音とミュート音をしっかりコントロールするなどの技術が必要です。
上記の演奏をするのに必要な奏法がカッティングです。
カッティングとは、簡単に言うと、短く音を伸ばしたり切ったりを繰り返して、実音とブラッシングをする奏法です。
音を短く切る、ブラッシング音を出すためには、ストロークしている手(右手)とコードを押弦している手(左手)でのミュートの正確性、そのコンビネーションが重要になります。このブラッシングと休符を織り交ぜながらの弾き方はリズム感も必要となってきます。心地よい演奏のためにも、メトロノームやリズムマシーンなどを使いながら練習するとよいでしょう。
不要な音を出さない、音符の正確な長さを保つ、これらを早いタイミングで行います。
・カッコ良いカッティングとは
前述は、カッティングに限らず、ギターを弾く場合の基本になります。
では、カッティングをカッコ良く弾いている人は、どのようなことを注視しているのでしょうか。
最も端的に言えることは、「アクセントをつけて弾いている」ということだと思います。
アクセントが付くと、それだけでコード・ストロークがカッコ良く聴こえてきます。
理由はリズムに表情がつくからです。
音楽のジャンルにより、定番のアクセントの付け方がありますが、個人のリズム感覚にも左右されます。
そのアクセントの簡単な付け方を、いくつか紹介します。
ちなみに、以下で例を挙げているものは、すべて8分音符で弾いているものと想定してください。
◯1.ストロークの強弱でアクセントをつける
アコースティック・ギターに限らず、エレクトリック・ギターでも、コード・ストロークをする場合に一番気を付けることは、ストロークの強弱です。
ストロークでピックを弦に当てる瞬間に、力を入れ過ぎてはいけません。
手首のスナップを利かせて、少し脱力気味でピックを軽く握り、速度をコントロールしながらシャープに弾き下ろす(上げる)イメージで、ストロークしてみましょう。
ストロークの仕方が身に付いたら、次はいよいよアクセントの付け方を解説していきます。
同じような力で弾いていると演奏が機械的で平坦になり(それを狙っているのなら構いませんが)、リズムに表情が付きません。
では、どの箇所にアクセントを付ければ良いのでしょうか。
基本的な8ビートの楽曲の場合、アクセントを付ける位置は3拍目アタマ、つまりドラムで言えばスネアを叩く位置を一番強くします。
下記は|~|が1小節で[ ]内は全て8分音符、[ ]内の大小はピックングの強さです。
|[小] [小] [小] [小] [大] [小] [小] [小]|
しかし、闇雲に強く弾いてしまうと、意識するあまりリズムがずれてしまう可能性があります。
そこで、逆に考えて、3拍目アタマ以外を弱めに弾くと上手くいくと思います。
それでもストロークの強弱を付けるのが難しいと思うかもしれません。
ひとつの方法として空ピッキングも取り入れてみましょう。空ピッキングとはストロークの際、鳴らさない点においても空振りするようなストロークでリズムをキープします。このように一定のリズムが保てるようになれば、演奏に安定感が出てきます。ただしストロークが上手くできていることが条件になってきますが、練習すれば必ず習得できると思います。
もちろん練習あるのみなのですが、他の方法も紹介していきます。
2.コードの弾き方でアクセントをつける
コード・ストロークでは、基本的に6弦すべてか、5弦からすべての弦を弾くと思います。
これに対して、アクセントを付けたい場合は、これを変更します。
3拍目アタマを強調して聴かせるために、他の拍では低音弦(6弦~5、4弦)のみを弾くようにしてみてください。
また、この奏法だと意識せず自然に3拍目アタマを強調できると思います。
以下で、先ほどと同様に8分音符で例を挙げます。
|[低] [低] [低] [低] [全] [低] [低] [低]|
また鳴っている弦も異なるため、同じコードを弾き続けるだけでも、カラフルなストロークになっていると思います。
手首のしなりを使ったストロークで力を入れすぎないようにすることがポイントです。ピックは弦の反発を感じられるような軽い力で持つとよいでしょう。練習方法として左手を使わず、右手のストロークだけ集中して行う方法もあります。左手はネックを支えるだけにしてリズムキープできるよう繰り返し練習します。
さらに、他の方法も紹介していきます。
3.ミュートを使いアクセントをつける
次は、コード・ヴォインシングをしている手を浮かせて弾くミュート音を使う、いわゆるブラッシングを使ったアクセントの付け方です。
アクセントを付けたい音符のみ実音でコードを鳴らし、それ以外の箇所の音符はブラッシングします。右手と左手の連携がしっかりできていないと上手くできません。
これはブラッシングというパーカッシヴな音を入れることで、よりリズミックに聴かせられる、実音の音程感と強さが結果的に強調され、とても効果的です。ここに気をつければカッティングテクニックが向上したように思えます。
リズムにしっかりと乗ったミュートが重要です。ミュートのかけ具合も難しいと思います。弾いていない指も使って、無駄な音が鳴らないよう極力注意しましょう。
以下、また例を紹介します。
|[X] [X] [X] [X] [全] [X] [X] [X]|
以上が簡単なアクセントの付け方になります。基本的なことでもあるので、しっかり練習してください。
今回は全て3拍目アタマを強調した例で紹介しましたが、もちろん、楽曲によっては1拍目アタマだったり、様々だと思います。
重要なことは、強調する音とそれ以外の音を把握して、しっかりアクセントを付けることです。
それだけで、何となく弾くよりも、グッとカッコ良くて上手に聴こえます。
ここまで紹介した奏法は、コード・ストロークをする上での基本的な内容になりますが、最後にちょっとハッタリ?のような奏法を紹介します。
コードチェンジの時にはネックから指を離す
アコースティック・ギターは弦が太くて弦高も高いため、しっかり押弦して音を出す、そして正確なコード・チェンジが難しく、コツと力が要ります。
ギターの基本であり、最も大事なコード・チェンジを習得するには、多くの練習と経験が必要ですが、なるべく簡単に行う方法です。
これは少しおまけのようなテクニックです。
コードを変更する手前の最後の拍を、全て開放弦で弾くか、ミュートしてブラッシングを入れるのです。
コード・チェンジの瞬間に無駄な音を入れないことでも、随分スムーズに聴こえます。
また、リズムを安定させてコード・ストロークを続ける効果もあります。
よろしければ試してみてください。
リズミカルなカッティングはファンキーなグルーヴ感を生み出し、ブラッシングはさらにアクセントを加えたい時に効果的です。
ベースやドラムのフレーズのことも考慮に入れて演奏出来るようになると、さらに効果は増すでしょう。
ファンクっぽい早くてテクニカルなカッティングをマスターするには、メトロノームなどでリズムを確認しながら、何度も練習しましょう。
今回紹介したテクニックは、リズム・プレイの基本になりますが、他にも「空ピック」と言って、休符中に弦を弾かずにストロークを空振りするテクニックもあります。
これは正確なリズム・キープに有効です。
色々な楽曲を聴いたり、正確な自分のリズムを刻むことを心がけましょう。
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