近年、安価で質の高いエフェクターを次々に発表しているのが、中国のメーカーです。
中国メーカーというと、いくら安い金額でも、品質が悪いのでは…と思いがちです。
しかし、JOYO、Rowin、Donner、そしてMooerと言ったメーカーは、そのイメージを覆すクオリティを持っているのです。
Mooerが発売したマルチエフェクターであるGE200は、販売価格が3万円台(2020年5月現在)でありながら、数多くの優れた機能を持っています。
今回は、このエフェクターについてのレビューを書いていきます。
Mooer GE200のレビュー。音作りやアンプ・モデルについて。
ハード面での評価と感想
まず、ハード面での特徴についてです。
・ギター・ケースのポケットに入る大きさ
GE200は、297(W)mm×145.5(D)mm×45.5(H)mmという大きさですので、最近のギターケースであればポケットに納まります。
ギタリストに取って、持ち運びやすいエフェクターというのは、それだけで選択肢に入ります。
大型のエフェクターをいくつも使うので、ギター以上に重くて大きさのある荷物を、一部のプロでもない限り、自分で運ぶからです。
ただし、電池は使用できませんので、アダプタも用意する必要があります。
・大き目のカラーディスプレイ
上記に挙げたように、その大きさにもかかわらず、直感的に操作が判別出来るように、大きめのカラー・ディスプレイが付いています。
フロント・パネルの構成は、Boss GTシリーズにも似ています。
シンプルでかつディスプレイも大きく位置を取っています。
通常こういったマルチ・エフェクターのディスプレイは、コスト的な面からも3色程度しかないのが普通ですが、GE200は、カラー・ディスプレイですので、大変分かりやすくなっています。
・フット・スイッチが3つある
一般的なマルチ・エフェクターでは、Zoom G3nやBoss GT-1のように、フット・スイッチが3つほど付いています。
やはり、GE200も同様に、フット・スイッチが踏みやすい位置に3つ付けられています。
フット・スイッチが2つしかないエフェクターの場合、バンク(音色のストック)のアップ/ダウンを左右のスイッチで使い分けなくてはならず、ライブ等の瞬間的・直感的な切替えが求められる場では、ある程度の経験が必要でした。
GE200は、1つのバンクに2つのプリセットを作ることができ、それを一番右のフット・スイッチで切り替えることが可能です。
例えば、バッキングとリードと言ったような、分かりやすくて良く使い分けるものであれば、かなり便利です。
さらに、現在のプリセットが選択されているのかが、フットスイッチの光る色によって分かるようにもなっています。
また、フット・スイッチの間隔も広めに作られていて、踏み間違いや同時に踏んでしまうような事態が起こりにくくなっているような配慮もされており、ユーザー目線であると感じます。
・その他
DAWによる音楽製作にも対応しています。
USB端子からPCに接続することで、オーディオ・インターフェイスとしてダイレクト・レコーディングも可能です。
エフェクター面での評価と感想
次は、エフェクターの機能面です。
・55種類のアンプモデリング
55種類のアンプ・モデリングの種類は、値段を考えればかなり多いかと思います。
さらに、PCに接続してファーム・ウェア・アップデートを行えば、音色の追加も出来ます。
キャビネット・シミュレーターも26種類と豊富に用意されています。
・151種類のエフェクト・タイプ
主な内蔵エフェクターは、
- コンプレッサー
- オーバードライブ
- ノイズ・ゲート
- イコライザー
- モジュレーション
- ピッチ変化系
- フィルター系
- ディレイ
- リバーブ
- ルーパー
以上に大別されており、151種類が用意されています。
必要なものは一通り揃っている、といった感じですね。
ただし、ルーパーは最長52秒とやや短めなので、必要であれば個別で用意しましょう。
また、200個までプリセット可能です。
・40種類のドラム・パターンと10種類のリズムのリズム・マシン
最近のマルチ・エフェクターには、ほとんど内蔵されているドラム・パターンやリズム・マシーンもあります。
もちろん本格的なものに比べれば、あまり実践的ではありません。
GE200だけでのデモ作りや個人練習用として使えると思います。
音作り
あくまで自分自身の感覚なのですが、GE200は、アンプ・シミュレーターを通さないで純粋なマルチ・エフェクターとして使用した方が良いサウンドが得られると思います。
アンプ・シミュレーターは、レコーディング等のライン入力の際に使用する方が良いように感じました。
また、奇をてらったような飛び道具系の音は少ないため、そのようなものも使いたい場合は、別途個別で用意して繋いだ方が良いでしょう。
最後に
Mooer GE200は、ディスプレイの見やすさや、3つのフットスイッチ、エクスプレッション・ペダルも接続可能と、かなり実践的な作りになっています。
サウンド面でも、全く使えないどころか、Zoom G3nやBoss GT-1にも引けを取らないと言っても良いくらいのレベルです。
いわゆる「中華エフェクター」のイメージは、前述のとおり、今や変わりつつあると言える状況かもしれません。質の悪いコピー品や、安価なパーツの下請け、と言った捉え方は捨てて、世界的なメーカーとコスト・パフォーマンスの面で検討してみてください。
特にこのGE200に関しては、金額の割りにかなりクオリティが高いと言えます。
練習用だけでなく、実際のライブやレコーディングでも十分使える機種です。
今、マルチ・エフェクターの購入を考えている方は、ぜひGE200も選択肢の中に入れてみてください。
Hotoneのアンプヘッドの評価・音作りについて。
続いて、今回はもう一つの機材を見ていきます。
Hotone(ホット・トーン)のアンプヘッドをご紹介いたします。
Hotoneは、Nano Legacyという5Wのミニサイズのアンプヘッド・シリーズを発売しており、現在では9種類のギター・アンプのヘッドと1種類のベース・アンプのヘッドがあります。
Nano Legacyは、どのアンプヘッドにも共通のスペックがあります。
共通スペック
- 価格:13,000円 前後(税別)
- 5W クラスAB ギターアンプ・ヘッド
- Volume、Gain、Bass、Middle、Trebleのコントロール
- エフェクト・ループ搭載
- スピーカーへの出力は4Ω~16Ωに自動対応
- ヘッドフォン/ライン出力
- 音楽プレーヤーが接続可能なAux In端子
- サイズ:128(W)mm×75(D)mm×59.5(H)mm
- 重さ:約400g
※真空管は使われていません。
Nano Legacyの種類と音
Hotone公式のYouTubeアカウントに動画がアップされているものは、動画を記載していますので参考にしてください。
以下、個別に紹介していきます。
・Captain Sunset
Soldano SL100をモデルにしたギター・アンプで、メタル系のサウンドメイクに適した、かなり歪むアンプです。
・FREEZE B
Friedmanを模したタイプで、ブリティッシュ・ロック系の荒々しさが特徴のアンプです。
・Siva Boogie
90年代にリリースされたBogner Shivaを意識したようなサウンドになっています。
こちらは動画だと、歪みは激しくなく、どこなくJohn Fruscianteのような音に感じます。
・Eagle's Heart
ENGL Savage 120を再現したもののようですが、かなり歪みますのでクランチ系のような使い方は難しいかもしれません。
・Vulcan Five-O
Van Halenが好きな人なら憧れのアンプと言える、Peavy 5150を再現したモデルになります。
・Purple Wind
ゲインが低く、Plexi Marshallの豊かなサウンドが再現されています。
・Mojo Diamond
かなりクリアで明確なトーンが出るアンプで、ゲインは低く設定されているようです。
明らかにハイ・ゲインではありません。
推測するに、Fender Twin Reverbがモデルになっていると思われます。
シングル・ピックアップのギターに向いています。
・Heart Attack
Mesa- Boogieサウンドを基に設計された、ハイ・ゲイン・アンプです。
強烈な歪みが特徴で、ヘヴィメタルやハードロック向きな音をしています。
・British Invasion
こちらもその名のとおり、Vox AC30のサウンドをシミュレートしているようで、中音域に特徴があります。
かなり再現性は高く、個人的には一番好きな音です。
クリーン・トーンもかなり綺麗に鳴っていると感じます。
・Thunder Bass
ベース用アンプで、Ampeg SVTをシミュレートしていると思われます。
評価と感想
5Wというとパワーに不安を感じてしまいますが、きちんとレコーディングすればかなり本格的な音になる事が分かると思います。
その場合は、大きいキャビネットよりも、同じHotoneから発売されているNano Legacyシリーズ用のキャビネットであるNano Legacy Cabinetを使うと、より良い効果を得られます。
しかしその反面、5Wしか出力がないために、バンド・サウンドで使用するのはほぼ不可能と考えて良いでしょう。
自分の部屋で音を出して練習に使ったり、自宅での録音用だと思います。
しかも、普通にマイク立てるだけでは、ギターの生音を拾ってしまうと思います。
レコーディングに使用する場合は、キャビネットとマイクを段ボールで囲って、他の音が入らくなくなる等の工夫をしなければならないでしょう。
あるいは、そのままPCやタブレット等のDAW用のオーディオ・インターフェイスに繋げて、ライン出力で使っても良いかもしれません。
音作りについて
まずは、当然ことなのですが、目的の音を持っているNano Legacyを購入する事です。
例えば、Soldanoを模したCaptain Sunsetで綺麗なクランチ・サウンドを作ろうとしても難しいからです。
あるいは、とりあえずどれかを購入して試してみたい、という事であれば、ゲインの低いSiva BogieやMojo Diamondを用意するのが良いと思います。
そこで歪みが足りないと感じるようであれば、間に歪みを個別に準備して入れるのも良いかと思います。
最後に
ギター・アンプのサウンドに興味がある方にとっては、かなり面白い商品だと思います。
しかし、レコーディング以外、つまり現実に音を出力するためのパワーがなく、用途が余りないのにちょっと疑問符が付いてしまいます。
ボリュームを上げていっても、いわゆる「箱鳴り」も起きません。
アンプで出音する最大の魅力はこの点だったりするのですが。
これが真空管を使用しているアンプであれば、このような部分はかなり違いが出るのですが、個人的にはHotone Nano Legacyの惜しいと思う点です。
ただ、自宅で軽く弾く、レコーディング用のアンプとして考えた場合は、通常のミニアンプよりかなりしっかりした音作りが出来ます。
よくあるようなミニアンプを購入するよりも、こちらを検討してみてはいかがでしょうか。