ピックガードとは、ギターのボディに貼り付けられた薄い板状のもので、その名の通りにピックなどの引き傷柄ボディを守る役割があります。
ギブソンのアコースティックギターのピックガードにも、時代によって変遷があります。
1955年〜1964年は薄いピックガードです。
1964年からは厚さが変わり、厚いラージタイプのピックガードになります。
J-45ピックガード
J-45のピックガードも時代によって変わっています。
1954年頃までは「ティアドロップ」と呼ばれるピックガードが採用されていました。
通常はべっ甲柄が主で、50年代後期から白やラージピックガード仕様が発売されていました。
ごく初期型のJ-45には、ストライプの柄模様が入ったセルロイド材が用いられており、同じティアドロップでも「ファイア・ストライプ・ピックガード」とも呼ばれました。
1955年頃からのJ-45には大型の「ラージ・ピックアップガード」が登場します。
1968年から1969年のJ-45のピックガード上方にギブソンのロゴマークが印刷されています。
これは、同時期のギブソンのシンボルマークです。
この印刷はとても剥げやすいので、経年変化で消失しているものがほとんどです。
残っているものを見つけたら貴重なものです。
リイシューモデルモデルでもこのロゴが付いていますが、これも剥げやすく迂闊に触るのは危険です。
1950年代のものと1960年代のものでは、ピックガードの厚みが若干異なり、1950年代の物のほうが薄く仕上げられています。生産本数は少なかったのですが、ボディトップにねじ止めされた白いピックガードを搭載したJ-45モデルもありました。
ラージサイズピックガード 形状・装飾
ギブソン系のラージピックガードは面積が大きいことから、少なからずサウンドに影響を与えていると思います。ただし厳密に言えば・・・ということで実際に引き比べて見ても違いは感じられないような程度です。それよりもルックス的な好みの問題で選べば選べばいいでしょう。
ラージサイズのピックガードのものでも、J-45やB-25といった機種に採用されたものには、ギブソン独特のデザインの形状をしたものが見られます。
デザイン性に優れていてとてもかっこいいです。
ギルドやテイラーなども独特の形状をしたものが取り付けられています。
J-45などはラウンドショルダーと呼ばれるボディタイプですが、ハミングバードやダブはスクエアショルダーと呼ばれ、諸説ありますが、サウンドや見た目のボリューム感アップを狙っています。
ラージサイズピックガードの中でも「ハミングバード」と「ダブ」に採用されたピックガードはとても美しい装飾が施されています。
ハミングバードはハチドリという意味で、ダブは鳩の意味です。
この装飾が派手すぎて嫌う方もいらっしゃるそうですが、こういうところがギブソンらしいところです。
この装飾も研磨剤を含んだポリッシュなどで拭くと消えてしまいますので、気をつけてください。
ピックガードの貼り直し
近年のラージピックガードは素材がビニール系の材質になり、材質自体が縮んでしまい、ピックガードが反り返ってしまい、両面テープと共にボディからピックガードが剥がれてしまうという現象がおこります。
症状が軽いうちに対処しておけば本体へのダメージを最小限に抑えることができます。ヴィンテージの場合、本べっ甲が使われていたりします。昔のように輸出入の条例が無かったため使うことができたのですが、ほとんどセルロイドやアセテートのものに変更されています。トップ材の湿度や温度の変化で伸縮・膨張するのに対して、べっ甲は変化することが無く、そのためトップ材の割れや剥がれを引き起こしたためです。現在はセルロイドのものにほぼ統一されていますが、これは木材の変化する性質に近いといった理由によるものです。
ピックガードの交換は個人でもできないことはありませんが、剥がすのは細心の注意が必要です。大体は日焼けの跡が残っていることが多く、ラージサイズの物からティアドロップの物に換えたりすると焼けた跡が目立ったりします。塗装によっては一緒に剥がれてしまうこともありますし、最悪トップ材まで剥がれてしまう恐れがあります。ヘラなどを使って少しずつ慎重に剥がし、剥離紙を入れながら作業します。剥がしたあともボディには粘着材が残り、これを剥がすのも苦労します。ドライヤーなどで暖めつつ、塗装に問題が無いか確認しながらステッカー剥がし材などを使って丁寧に作業していきます。
新品のピックガードに交換するかプロの手に任せるか自分で根性で治すかなかなか勇気を必要とします。
コストカットのために素材を変更したのかもしれませんが、このあたりは考え直して欲しいところです。
ギブソンのアコースティックギターの音の特徴とは?
アコースティックギターの世界では、マーチンとギブソンが2大巨頭といわれています。
ユーザーの間ではマーチン派かギブソン派か別れるところです。
ギブソンのアコースティックギターはどのモデルを弾いてもギブソンの音がすると言われています。
厳密にいうと少しずつちがいますが、基本的にはギブソンの音です。
ライバル会社のマーチンの倍音をたっぷりと含んだ音の「ジャリーン」と言う感じに較べると、低音成分の強い「ゴリゴリ」とした音になります。
ですので、フィンガーピッキングにはマーチンが適していますが、ピック弾きストロークプレイの場合にはギブソンのほうが良い感じになります。
低音の鳴りは、ちゃんと整理されており、力強くパワフルです。
もともとジャズギターのためのギターメーカーであったギブソンのギターはアコースティックギターに於いても、太い低音を持っています。
ストロークプレイをすると、音の歯切れや音の分離が良く、硬く、パーカッシプなサウンドが出ます。
きれいにまとまったマーチンのサウンドにくらべるとギブソンのサウンドはワイルドな印象を受けます。
ロックやブルースのミュージシャンに愛用者が多いのもうなずけるところです。
また、レコーディングの際にコンデンサーマイクで録音することを想定して設計されていて、録音するとバランスの良いミックスのしやすい音がレコーディングできます。
製造方法の秘訣
・ネックジョイント
仕込み角3度で「にかわ接着」されます。
・ニトロセルロースラッカー塗装
昔ながらの「ニトロセルロースラッカー」を使用しています。
乾燥に時間がかかるため、塗装の工程は一週間ほどかかります。
この間にカラーとクリアで合計10〜13層の吹付けをします。
ラッカーは時間の経過とともに風合いが変化していく、味わいの深い塗装です。
・ドーム状のトップとバック
ギブソンのアコギはフラットトップですが、緩やかなアーチを描くように製造されています。
トップは28フィートR
バックは12フィートR となっています。
この方式によりボディに常時良いテンションがかかるため、強度が増してトップとバックが変形しにくくなるほか、ボディ中央にうまく音がはねかえるようになり、音響特性がよくなります。
・鳴りを向上させるブレーシング
ボディのトップとバックに貼られるブレーシングは、ボディの補強をしていますが、貼られる部位の鳴りが制限されるのを利用して、トーンアレンジを行います。
ギブソンでは職人の手作業で、ブレーシングを削り、振動しやすくしています。
・オール単板が基本
一部のモデルを除き、ギブソンのアコギは無垢材の単板で作られます。
軽さと鳴りやすさにおいて合板に勝ります。
ギブソンのアコースティックギターの種類。
ギブソンのアコースティックギターは長い歴史を持っています。
ギブソンのアコースティックギターのラインアップを調べてみました。
ギブソンのアコースティックギターはボディ形状により
- ラウンドショルダー
- スクエアショルダー
- スーパージャンボ
- スモールボディ に分かれます。
ラウンドショルダー
Jシリーズとよばれます。
マーチンのドレッドノートに対抗する形で開発されました。
ドレッドノートとくらべて丸い肩になっていることから、ラウンドショルダーとよばれます。
代表的モデルのJ-45は大型ボディによる迫力のサウンドが特徴です。ロック系のアーティストが好んで使用しています。
Jシリーズには
- J-15
- J-35
- J-29
- J-45
- J-45 Custom
- J-45 Progressive
- Southern Jumbo Mystic
- J-45 Vintage
- John Lennon J-160 E Peace
というラインアップがあります。
スクエアショルダー
Jシリーズと同サイズですが、肩の張ったようなボディシェイプのものです。
なかでも、ハミングバードとダブが有名です。
ハミングバードはJ-45と同じスプルーストップ、マホガニーネック/サイド/バックとなっており、弦長が24.75インチのミディアムスケールとなります。
ダブはスプルーストップ、メイプルネック/サイド/バックとなり、弦長も25.5インチのロングスケールとなります。
スーパージャンボ
Jシリーズをさらに大型化させたSJ-200はそのサイズと豊かな鳴りにより「キングオブフラットトップ」と呼ばれます。ルックス的にも音量的にも存在感があります。
1955年にJ-200と改名されました。
(J-◯◯はラウンドショルダー、J−○◯◯はスーパージャンボとなります)
ボディ幅が17インチ、弦長も25.5インチのロングスケールです。
トップがソリッドシトカスプルースで、ボディバックとサイドにはソリッドイースタン・カーリーメイプルとなります。
フィンガーボードはマダガスカルローズウッドとなります。
ストロークによる迫力のあるサウンドはもちろん、指弾きでも反応が良く繊細かつ伸びやかなサウンドも特徴です。
SJ-200 Standardが基本モデルですが、J-45の上位機種よりも高いグレードと位置づけになっており、トップ材のシトカ・スプルースもJシリーズより1ランク上のものが使われています。
搭載されているピックアップシステムもJシリーズに搭載されているエレメントよりワンランク上のアンセムが取り付けられています。
- SJ-200 Standard
- Bob Dylan SJ-200 Player’s Edition
限定生産モデルとして
- Early’60s SJ-200 Ebony
- SJ-200 Sunset Burst
- SJ-200 Rosewood
- SJ-200 Elite などがあります。
レッド・ツェッペリンのジミーペイジがファーストアルバムで使用しているのはJ-200です。
スモールボディ
Lシリーズと呼ばれます。
ドレッドノートがアコギ業界を席巻するまでは、アコギのボディは小さいものでした。
1902年にアーチドトップとして生産され1926年にフラットトップにモデルチェンジしたLシリーズは音量競争により廃盤となりました。
伝説のロバートジョンソンが愛用したこともあり、再生産されました。
- L-00 Standard
- L-1 Blues Tribute というモデルがあります。
ギブソンのアコギJ45について。
ギブソンのアコースティックギターでライバルのマーティン社のドレッドノート・モデルに対抗すべく、1934年から製造を開始したモデルです。
(マーティンのドレッドノートはD-18・D-28・D-35・D-41・D-42・ D-45というモデルで「戦艦ドレッドノートのようだ」と称されたのが正式名称になりました)
ギブソンJ-45の日本での使用者は吉田拓郎がまず上げられます。
吉田拓郎の弾き語りに魅せられてこのギターを購入した方も多いそうです。
最近ですと、MIWAさんがよく知られています。
MIWAさんの小さな体に、ギブソンのJ-45の大きなボディを抱えています。
他にも「トイレの神様」を歌った植村花菜さんが使用していました。
ギター基本スペック
ボディータイプはラウンドショルダーとなります。
スケールは24 3/4インチです。
フレット数は20で、ネックジョイントが14フレットとなります。
ボディ材がトップにはソリッド・シトカ・スプルース、バックとサイドにはソリッドマホガニーを使っています。
ネックはマホガニーです。
フィンガーボードはマダガスカル・ローズ・ウッド/インディアン・ローズ・ウッドとなります。(近年はローズウッド)
ペグはグローバーペグになります。
ブリッジにはマダガスカル・ローズ・ウッドです。
最近のモデルにはLRBAGGS ELEMENTピックアップが搭載されエレアコとしても使用できます。
年代別特徴
1942〜1946年頃まで
トップにアディロンダック使用の個体があります。
レクタンキュラーという小さな長方形のブリッジで、太いスキャロップブレイスでした。
ネックが太く三角のシェイプで、超大鳴りのする個体が多いです。
1947〜1955年
ロゴがブロックロゴになりました。
ベリーブリッジになりスモールピックガードになります。
スキャロップブレイスはこの年までです。
ネックシェイプも落ち着き安心して弾けるようになります。
1956〜1960年
ラージピックガードになります。
スキャロップブレイスは廃止されます。
低音の締りと高音のキレがよく、枯れたGibsonサウンドで、最も好まれる年代です。
1961〜1968年
アジャスタブルサドル・チェリーサンバーストが標準になります。
サスティーンが短くなりますが、逆に人気になります。
60年代後半よりナット幅40ミリ弱のナローネックとなります。
1969〜1982年
ラウンドショルダーが廃止になり、スクエアショルダーになります。
ここはGibsonアコースティック暗黒の時代です。
1984〜
ラウンドショルダーが復活します。
サウンド
ギブソンのアコースティックギターらしいサウンドがします。
マーティンの音とは全く違う方向性を持っています。
マーティンは倍音をきれいに含みサスティーンが多めで、繊細な感じです。
ギブソンは、荒削りで骨太な音で、実に渋く鳴ってくれます。
中音域もよく出ていますが、低域が強く出ています。
コードストロークで、ジャキジャキと鳴りますので、楽しくなってくるでしょう。
この鳴りが気に入ったら、ぜひ購入してください。