ギターのサウンドメイクは非常に多様ですが、大別するとクリーン・サウンドとドライブ・サウンドになります。
この2つのサウンドは基礎的ではありますが、とても奥が深いです。
音を作る場合には、アンプのセッティングを基本として、エフェクターでさらに音色を決めていきます。
今回は、ギターのクリーン・サウンドをエフェクターで出すには?というテーマで記事をお届けしていこうと思います。
ギターのクリーン・サウンドをエフェクターで出すには?
クリーン・サウンドについて
まず、一口にギターでクリーン・サウンドと言っても、ジャズ・ギターのような太くて厚みのある音か、透明感のあるアルペジオなのか、ハイ・ドライなカッティングなのか、様々な音色が考えられます。
必要なサウンドがある程度限定されている、もしくは決まったジャンルのみ演奏するのであれば、アンプのみでも十分です。
この場合、注意する点は、ドライブ・サウンドに切り替えた時に、不自然に音量差が生まれないようにする点くらいでしょうか。
しかし、前述のような多様な音色が必要な場合は、アンプだけでは限界があります。
そこで、エフェクターを使うことになります。
以下、エフェクターを使って、クリーン・トーンのサウンドメイクを作る方法を解説していきます。
コンプレッサー
クリーン・サウンドに限らず、ギターの基礎的なサウンドメイクを行う上で必須になるのがコンプレッサーです。
クリーン・サウンドでは、カッティングやアルペジオの場面で使えば、各弦のアタックのバラつきを抑えて、粒立ちの揃ったサウンドになります。
さらに、空間系のエフェクター(ディレイ、リヴァーブなど)を同時に使うことで、音に広がりが出せて、非常に心地良いサウンドになります。
また、コーラスも使うことで、さらに瑞々しく美しい響きが得られます。
クリーン・ブースター
クリーン・サウンドは、ドライブ・サウンドに比較して、音量がどうしても小さくなってしまいます。
そもそもドライブ・サウンドの歪みは、音量を上げすぎて歪んだ音を音色として活用しているものです。
ギター本来の音は、実は非常に小さい音量ですので、クリーン・サウンドではまず音量に気をつかうことになります。
アンプでのサウンドメイクは、まずクランチ程度にアンプを僅かに歪ませ、その間にブースターをかまして、ギター側のボリュームを絞って音を出すと、綺麗なクリーン・サウンドが出せるはずです。
ブースターの理想は、レベルを上げると歪むようなオーバードライブ・タイプのものではなく、純粋なブースターが良いでしょう。
Xotic RC Boosterのように、ベースとトレブルをコントロール出来るイコライザー機能が付いていると、音抜けの改善も望めます。
Xotic EP Boosterも良いブースターですが、トーン・コントロールが付いていません。
このエフェクターは、ジャズ・ミュージシャンもよく使っている、シンプルなブースターです。
プログラミング・エフェクトボード
クリーン・サウンドを美しく慣らしているギタリストとして紹介したいのが、布袋寅泰氏です。
意外に思われるかもしれませんが、彼はサウンドメイクが非常に上手で、特にBoowy時代には様々な音色を使い分けていました。
Boowyではカッティングやアルペジオがクリーン・サウンド、ギター・ソロではドライブ・サウンド、その他にも多くのエフェクターを必要としたため、プログラミング・エフェクトボードを組んでいました。
この時代の日本のギタリストとしては、かなり早い方だと思います。
特にクリーン・サウンドへのこだわりは強かったようで、何種類かのクリーン・サウンドをプログラミングしていたようです。
代表的な2つのセッティング例を紹介します。
- ギター→コンプレッサー→ステレオコーラス→ディレイ 空間的な広がりを持たせながら、アタックを強調したサウンドです。
- ギター→ハーモナイザー→コンプレッサー→コーラス→イコライザー→ディレイ キラキラと鋭角的なニュアンスを含んだサウンドです。
同じクリーン・サウンドでも、楽曲の構成に合わせて使い分けていくことでバリエーションをもたせ、ワンパターン化を避けています。
他にも、常にショート・ディレイをかけてお空間に厚みを持たせて、ポイントでモジュレーションを加えたり、ロング・ディレイでダブ効果を狙ったりなど、かなり実験的な音も使っていました。
ちなみに、ディストーション用でも幾つかのパターンを作って、ワンパターン化を避けています。
Boowyのギタリストが1人であったこと、そして若き日の布袋氏は、誰もやっていない、自分のオリジナリティというものに、常にこだわっている姿勢が窺えます。
ギターのクリーン・ブースターとは?
クリーン・ブースターというエフェクタが登場するまでは、ギター用でクリーン・サウンドをブーストできる機器はほぼなく、オーバードライブのゲイン・レベルをゼロに絞って使うのが主流でした。
その代表的なエフェクターが、SRVの使用で一躍有名になったIbanez Tube Screamerです。
Tube Screamerでは、低域がばっさりカットされて、中音域が持ち上がる、という傾向がありました。
それ以前の古いものとなると、1970年代に発売されたMXR Micro Ampがあるのですが、やはりこの機種もトーンが大きく変わってしまうというものでした。
2008年頃より、各エフェクター・メーカーからクリーン・ブースターが次々と発売されるようになり、クリーン・ブースターはかなり種類が増えました。
メーカーそれぞれに特色があり、ギターの原音をそのまま音量を上げるだけでなく(それはボリューム・ペダルで事足ります)、製品ごとに特色があります。
それらを理解した上で使うことをおすすめします。
以下、代表的なクリーン・ブースターを紹介していきます。
・Xotic EP Booster
クリーン・ブースターの定番、Xoticのエフェクターです。
Jimmy PageやEddy Van Halen、Brian Mayと言った錚々たるギタリストが愛用するテープ・エコー「Maestro EP-3」のプリアンプ機能を再現したブースターになります。
テープ・エコーのプリアンプ部の再現という目的で、少し意外に思われるかもしれません。
コンセプトがプリアンプですので、音に少し歪みが加わり、完全なクリーン・ブースターではありませんが、音に張りと艶をしっかりと加えてくれます。
・Xotic RC booster
こちらもXotic、定番のクリーン・ブースターです。
ゲインをコントロールするノブが付いていますが、オンにしてもほとんど歪まず、クリーン・トーンのままで、音の艶と透明感を与えてくれます。
個人的に、歪ませずにクリーンを持ち上げてくれるのは非常にありがたく感じます。
ベースとトレブルのイコライザーを使うことで、シングルコイルでもハムバッカーでも、クリーン・サウンドに厚みを持たせることが可能です。
・MXR Micro Amp
前述したとおり、1970年代に発表されている古いブースト・ペダルです。
ゲインのコントロール・ノブが1つ付いています。
オンにすると高域が上がり、若干レンジの狭まった音になります。
歪みは、ノブの位置が12時以降で右へ絞っていくと少しずつ歪み始めます。
・Fulltone Fat-boost
イコライザーがベースとトレブルに分かれて付いていますので、低音域と高音域をそれぞれ独立して調整することが可能になっています。
ドライブのノブも付いていますので、ゲイン・ブーストまで可能となっています。
・ZVex Super Hard On
あまり聞き慣れないメーカーかもしれませんが、しっかりと作られています。
古いアナログのミキサーのフェーダー回路を参考に作られているようで、とてもシンプルな回路です。
肝心のサウンドは、キラキラと綺麗にブーストしてくれます。
・MXR MC401 Boost/Line Driver
Bob BradshawのCustom Audio ElectronicsとMXRのコラボレーションによって製作されたエフェクターです。
この機種もダイナミックに美しく原音を持ち上げてくれます。
・Suhr ISO boost
ギター・ブランドとしても有名なSuhrのエフェクターです。
原音に対して、透明感のあるパンチが加わります。
ライン・ドライバーでもあり、ライン録音でも効果を発揮します。
宅録などのライン録り環境で活躍するでしょう。
・Suhr Koko Boost
こちらもSuhrのエフェクターです。
クリーン・ブーストとミッド・ブーストの両方の機能が備わっています。
ミッド・ブーストは、ミッド、ハイ・ミッド、ロー・ミッドの切り替えが可能になっています。
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