LUNA SEAのギタリスト・SUGIZO氏は、非常に大掛かりでこだわり抜かれたギター・システムを組んでおり、フィルター系やモジュレーション系などの、様々なエフェクトを駆使することで有名です。
SUGIZO氏は、ギターでシンセサイザーのように自在なサウンドを出したいと考えているようで、楽曲にインパクトを与えるサウンドを追求しています。
現在の日本のギタリストでは、トップクラスと言えるくらいエフェクターへのこだわりを持っています。
今回は、SUGIZO氏のサウンドメイクについて見ていきましょう。
LUNA SEAでのエフェクト・ボード
・歪みエフェクター
- Free The Tone/GB-1V Gigs Boson(オーバードライブ)
- Providence/Stampede OD(オーバードライブ)
- Fulltone/’69 MK 2 (ファズ)
- Skreddy Pedals/Ernie(ファズ)
- Devi Ever FX/Shoegazer(ファズ)
・モジュレーション系など
- Providence/特製リング・モジュレーター
- Eventide/Time Factor(ディレイ)
- Eventide/Mod Factor(モジュレーション)
- MXR/Phaser 90(フェイザー)
- Maxon/PDM 1(モジュレーション・ディレイ)
- Digitech/Whammy DT
- Souce Audio/Spundblox Pro Poly-Mod Filter(エンベロープ・フィルター)
- Boss/SL-20(スライサー)
- Eventide/Pitch Factor(ハーモナイザー)
- Boss/RE-20 (スペースエコー)
- electro-harmonix/Rravish Sitar(シタール・エフェクト)
X JAPANでのエフェクト・ボード
意外と知られていない(発表当時は衝撃的でしたが)かもしれませんが、SUGIZO氏はX JAPANにもギタリストとして参加しています。
- Providence/PD-2(バッファー・ブースター)
- Free The Tone/GB-1V Gigs Boson(オーバードライブ)
- Boss/GE-7 (グラフィックイコライザー)
- Maxon/PDM 1 (モジュレーションディレイ)
- Eventide/Mod Factor (モジュレーション)
- Free The Tone/FT-1Y Flight Time(ディレイ)
- Providence/特製リングモジュレーター
- Digitech/Whammy 2
SUGIZOのギターソロの特徴とは?
プレイ・スタイル
SUGIZO氏のプレイ・スタイルはかなり個性的で、バリエーションの広さを感じます。
音楽のある環境の中で育ち、ギターがメインの音楽以外にも趣味が広いためだと思われます。
彼が憧れのギタリストに挙げる一人が一風堂の土屋昌巳氏で、かなり影響を受けたということを公言されています。
土屋昌巳氏も卓越したギター・テクニックを持ちながらも、様々なサウンドメイクを研究されるタイプのギタリストです(一風堂時代は、ギターよりもシンセの音の研究の方が多かったのかもしれないくらいです)。
SUGIZO氏のイメージはESPのギターですが、StratocasterやJaguarなどのFender系を好んで使用しているようです。
LUNA SEA時代はJaguar中心でしたが、それからStratocasterに移行していった理由は、シンクロナイズド・トレモロ・ユニットが採用されている点と、キレのあるシングルコイル・ピックアップでしょう。
ESPはフロイド・ローズでしたが、それがしっくりと来なかったこと、そしてJaguarの太い凶暴なサウンドが、Stratocasterでも表現できるようになったから、とのことです。
・サウンドメイク
ギター・マガジンなどの雑誌のインタビューでは、エフェクターは自身にとって「絵の具」と語っています。
彼のプレイ・スタイルでは、楽曲を絵画に例えると、多くの絵の具を必要とする絵を描くとのことですので、上記のように多くのモジュレーション系エフェクターが使用されています。
彼は、常に新しい絵の具(エフェクター)を探している、とインタビュー等でも語っています。
またその逆に、新しいサウンドに会えるエフェクトは、音楽家の想像力を刺激してくれるアイテムだ、とも語っています。
SUGIZO氏は、エフェクターによる自在のサウンドだけでなく、アンプ直のシンプルなサウンドも非常に重視しています。
彼のサウンドの特徴は、歯切れの良いクランチとオーバードライブ・サウンドをベースとしており、その音に必要に応じたエフェクターが乗せられていきます。
基本的には、アンプで作られたサウンドに、別チャンネルのアンプからリード用またはバッキング用に振り分けられています。
あの壮大なサウンドは、このように基本的なサウンドメイクの手法から作り出されているようです。
LUNA SEAにおけるSUGIZO氏のモジュレーション・エフェクトの多様な使い方は、基本的サウンドがしっかり作られているからこそ、実現可能なものだということが分かります。
X JAPANでは、Hideの後任のギタリスト、ということもあり(元々はサポート・ギタリスト)から正式加入になりました)、モジュレーション系のサウンドは控え目になりましたが、やはりセットされています。
元々、SUGIZO氏はTC Electronicの往年の名機と言われる、TC2290の中毒者であると語っています。
以上から、SUGIZOサウンドを試みるには、
- 歪み系 Mesa/Boogie
- 空間系(ディレイ) TC2290
- リング・モジュレーター
このような使い方が、基本的な音の使い方になります。
そしてリード・パートでは、1オクターヴ上の設定でよく使われるワーミー・ペダル、バッキング・パートの激しいカッティングなどではワウ・ペダルを使用しています。
また、空間系エフェクトも大胆に使っていますが、あくまで原音を消さないというスタンスのようです。
エレクトリック・ギターは最後の楽器
有名なエピソードですが、SUGIZO氏は3歳の頃からバイオリンを習っていたそうです。
両親ともにオーケストラの楽団員で、その子供であるSUGIZO氏が楽器を習わされるのは当然の流れと思われますが、彼自身は、小さい頃に楽器を習うのは、女の子っぽくてあまり好きではなかったそうです。
ロックと出会ってからは、初めに(本人いわく、「なぜか」)アコースティック・ギター、そしてベースやキーボードと様々な楽器を経てエレクトリック・ギターにたどり着いたようで、彼にとってエレクトリック・ギターは、「最後の楽器」と言えるのかもしれません。
彼は、音をフレーズで捉えるより、もっと漠然としたイメージで捉えている節があり、そのイメージに対してギターの音やプレイを近づけていく、というスタイルのように思われます。
このようなアプローチの仕方は、クラシック音楽の作曲方法に近く、やはり幼い頃のクラシック音楽の知識や経験が、彼の音楽の基礎となっていることが窺えます。
クラシック音楽をバック・グランドとしており、バイオリンで使われるビブラート奏法を駆使したソロ・プレイは独特で、卓越した技術を持っています。
教則本などで紹介されているような、理論的なものではない部分は、やはり感性の高さ、センスということになると思います。
LUNA SEAやX JAPANでは、そのバンドに求められるサウンドになっていますが、ソロ・プロジェクトでは、ギター以外をメインとする音楽、ダンスやエレクトロニックな音楽や民族音楽的なものにも拡大しており、今後もその傾向は続いているようです。
彼のギター・スタイルは、かなりオリジナリティのあるものですが、基本的なプレイや、基本的なサウンドメイクの上に、自らの感覚を重ねていく、という方法論を持っているように思います。
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