今回は、キッズならば一度は耳にしたことがあるであろうギタリスト、Paul Gilbertのドリル奏法について書いていきます。
テクニカル系のギタリストではありますが、懐の深い作曲能力も秘めた、非常にバランスの良いギタリストです。
Paul Gilbertのドリル奏法について。
Paul Gilbertについて
Paul Gilbertは、現在も現役バンドであるRacer Xでデビューを果たします。
彼が一躍有名になったのはMr. Bigでの活動で、シングル「To Be With You」が大ヒットし、次第に「光速のギタリスト」と呼ばれるようになります。
テクニカルでスピードが売りのギタリストで、さらに速く弾いてやろうというジョークから始まったのが、電気ドリルを使った奏法です。
その名の通り、「電動ドリル奏法」と呼ばれています。
このギター・プレイは、Mr. Bigの「Daddy, Brother, Lover, Little Boy(The Electric Drill Song)」という曲で聴くことが出来ます。
この楽曲では、ベーシストのBilly Sheehanとユニゾンで、電動ドリル奏法を披露しています。
「電動ドリル奏法」には、実は2つの方法があります。
1つ目は、ドリルの先端部分にピックを取り付けて、高速回転させてピッキングする方法です。
人間業では不可能な超高速ピッキングが可能になります。
2つ目は、電動ドリルをギターのピックアップに近づけて、電動ドリルのモーターから出る回転音をピックアップに拾わせるものです。
当然、ドリルの回転数を変化させれば、音も変わってきます。
低回転ではゴォーと唸るような音で、高回転ではキュイーンというような音が出ます。
回転速度を変化させると、キュゥイーンゥイーンとなっていきます。
Eddy Van HalenやB’zの松本孝弘が行ったことがあるのは、こちらの方のプレイになります。
この「電気ドリル奏法」で使われているドリルは、日本の電動工具メーカー「Makita(マキタ)」製のものです。
これがきっかけで、マキタはMr. Bigのコンサート・ツアーを公演することとなります。
92年のツアーでは、大きなマキタ製の電動ドリルの絵と、ブランド・ロゴが設置されたステージ・セットになり、Mr. Bigとマキタの蜜月?が伺えます。
さらにMr. Bigはマキタへの返礼として、「I Love You Japan 」という楽曲まで作っています。。
Billy Sheehan曰く、「マキタの社員のために作った曲」としてプレゼントされています。
ちなみに、電動ドリルの型式は「D6162DW」だとのことですが、現在では残念ながら廃盤になっています。
その後は、マキタから後継モデルが発売されていますが、ドリルの回転数が変わってしまい、楽曲のテンポに合わなくなってしまったため、使っていないとのことです。
作り方
「電動ドリル奏法」のための、作り方を紹介していきます。
- 電動ドリル
- ピック 1枚~4枚
- シャフト
- ネジ
- ワッシャー
- ボンド
を用意します。
電動ドリルは、コードレス・タイプの充電式もの、もちろんマキタ製が良いです。
ピックは頂点が弦にあたるので、ティアドロップ・タイプなら4枚位でいいと思います。
シャフトは電動ドリルに装着できるものが良いです。
ホームセンターなどで購入できる、簡単な木の棒が良いでしょう。
ボンドは瞬間強力タイプを選んでください。
それでは組み立て方を解説します。
まず、ピックを重ね合わせて扇風機の羽根のような形状にします。
それをボンドで固定します。
固まったら中心に穴を開けます。
用意したシャフトの先端にネジを通す仮の穴を空けておきます。
シャフトの先端にボンドを流し込んで、扇風機の羽根の形になったピックを、ネジとワッシャーで止めます。
ボンドが乾いたら完成です。
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Michael Angeloというギター・テクニックのエンテーティナー
Paul Gilbertとは直接関係ありませんが、続いてMichael Angeloというギタリストを紹介していきます。
彼は「世界で最も速い速弾きギタリスト」に選ばれたこともあるテクニシャンです。
1956年生まれのアメリカンで、主にHR/HM系のギタリストです。
彼はそのキャリアでは、はっきり言って誰もが知っているようなヒット曲、というもはありません。
それにも関わらず、一部では「アンジェロ先生」と呼ばれており(博士号を持っています)、現在でもニューヨークを中心に活動しています。
また、彼のリリースしている教則DVDは世界中で10万本以上も売れているのです。
速弾きイコールギタリストの価値、とは言えませんが、今回は一部でカルト的人気を誇るMichael Angeloについて簡単に紹介していきます。
X型の4本のネックを持つクアッド・ギター
Michael Angeloがその名を世界に認知されたのは、おそらく1989年に、Nitro(ニトロ)というバンドの楽曲「Freight Train」のPVでしょう。
ギター・ソロでは、正面から見るとXの形にネックが伸びたギターを使用し、多くの人を驚かせました。
つまり両方の指でフィンガリングが出来なければ、一方は全く使えないネックということになります。
このギターは、通常のギターとは異なり、ストラップはボディの1点を支えるものになっていて、首からぶら下げられた状態になっています。
それをその場で回転させる事も出来るわけですが、このギターは、形だけのハッタリではありませんでした。
一人でハモリ・ギターを弾く
Michael Angeloは元々左利きでしたが、若い頃から右利き用のギターと左利き用のギターの両方を弾くことが出来ていました。
その独特かつ卓越した技術力で、様々なギター・コンテストで賞を取りまくっていたそうです。
その技術を活かして、「Freight Train」のギター・ソロの出だしの部分では、何と両手を使ってそれぞれのネックでハンマリングを行い、一人でハモリギターを行なっています。
ちなみに、世間的にはこちらの方が有名かもしれませんが、Steve Vaiのハート型ギターは、彼のクアッド・ギターに感銘を受けて製作されました。
Steve Vaiは、インタビューでこのギターの事を尋ねられるたびに、「このギターのアイディアは、Michael Angeloが考案したものだ」と説明しているそうです。
Over-Under
Michael Angeloには、一人ハモリギターだけでなく、もう一つ、「アンジェロ・ラッシュ」というテクニックがあります。
これは、英語ではOver-Underと呼ばれ、ネックのしたから左手の中指と薬指の腹で弦をハンマリングした後、ネックの上側に左手を回して人差し指でハンマリングし、これを高速で繰り返すというテクニックです。
当然、ゆっくりやれば誰でも出来るのですが、Michael Angeloの速弾きでは、大袈裟な表現ではなく、本当に「目にも留まらぬ」速さなのです。
特に彼の教則DVD「Speed Likes Package」でのアンジェロ・ラッシュは本当に目視では捉えられず、早送り再生をしているかのような動きに見えます。
DVDの通常の再生スピードでは、手の動きを完全に把握することは難しいです。
ギター・テクニックというエンテーティメント
以上のように、ともするとキワモノ、大道芸のようなテクニックが先行したイメージになってしまっています。
また、速弾き自体、「技術をひけらかすもので、音楽的な評価にはならない」という厳しい考えもあります。
しかし、彼のギター・サウンドをしっかり聴いてみると、音はクリアで美しく、音程が完全に潰れたりはしていません。
また、押弦するタイミングとピッキングのタイミング非常に正確で、音楽を演奏する上での基礎的な演奏の上にテクニックがあることが分かると思います。
そんな卓越した技術力を有していながらも、ヒット曲を持っていなかった彼は、ギター・テクニックを「ひけらかす」だけでなく、しっかりと「魅せる」事に成功していると言えます。
彼の公式Youtubeアカウントでは、そんなパフォーマンスの一部を見ることが出来ます。
速弾きが好きな方も、そうではない方であっても、一見の価値があると思いますので、ぜひご覧ください。
音楽を単に演奏する、というだけではない、ギターの可能性に触れることができるかもしれません。