スラップとは、親指で低音弦を叩くように弾き、他の指(主に人差し指と中指)で高音弦を引っ張って音を出す奏法です。
スラップ奏法は、本来ベースで良く使われているのですが、最近ではギタリストもよく使うようになってきました。
スラップ奏法を使うことで、強いアタックとヘヴィなリズムを得ることができます。
今回は、ギターでスラップの練習フレーズや曲というテーマで書いていきます。
ギターでスラップの練習フレーズや曲。
ギターは、ベースよりも全ての弦が細く、弦と弦の間隔も狭いです。
そのため、ベーシストがギターでスラップを行おうとすると、指をヒットさせる位置がかなり甘くなったり、最悪プルの際に弦を切ってしまうことも考えられます。
ギタリストであれば、まずはスラップ奏法がどういうものなのか、見た事はあると思いますが、まずは自分でやってみましょう。
ギターでのスラップ奏法で有名なのが、トモ藤田氏です。
Youtubeなどの動画で、トモ藤田氏のスラップ演奏を見てしまうと、初めから難易度の高さを実感してしまい、挫折しがちになってしまうでしょう。
なので、まずは簡単はパターンを練習して、ある程度弾けるようになったら、スラップ奏法が上手なギタリストを参考にしましょう。
また、普段はピック弾きで指弾きを全くやらない方は、まずは通常の指弾きから始めるのが良いと思います。
簡単な練習パターン
ベースのスラップ奏法で良くある、6弦のベース音と4弦のオクターブ音を弾くフレーズの練習を行います。
- 左手人差し指で、6弦3フレットを押弦します。
- 左手小指(薬指でも可)で、4弦5フレットを押弦します。
この状態で、6弦を親指で叩くように弾く、これをサムピングと言います。
その音の後に、ウラ拍になる4弦を引っ張るように弾く、これをプルと言います。
つまり、G音を1オクターブ上下させた音を交互に繰り返し鳴らします。
テンポは、4/4拍子で、全て8分音符で練習しましょう。
ファンクなどのブラック・ミュージックでよく聴かれるような、アタックの強いリズミックな音になっていると思われます
これは単純で簡単ですが、ベースのスラップ奏法でも初めに学ぶ、基礎的な練習方法なのです。
正確な音が出せているか、リズムはきちんと合っているか、しっかり確認してください。
ポイントは、サムピングで安定した音を出せるようにすることです。
サムピングに意識が行き過ぎてしまうと、リズムの乱れの原因になりますので、メトロノームなどを使って色々なリズム・パターンを覚えて行きましょう。
少し難しいパターン
今度は、ゴースト・ノートを入れたパターンを練習して行きます。
ゴースト・ノートとは、自分のリズム・キープのために、聴こえるか聴こえないような小さな音です。
これを入れるのと入れないのでは、リズムのノリがかなり違ってきます。
スラップ奏法では、右手と左手のコンビネーションが難しくなるため、難易度は上がります。
16分音符で2拍のパターンで練習します。
6弦開放をサムピングします。音の長さは8分音符です。
次に、左手で弦をハンマリング・オンしてゴースト・ノートを入れた後、続いて右手でミュートした6弦をサムピングで16分音符を鳴らします。
2拍目は、5弦5フレットを人差し指でプルし、続いて5弦7フレットを16部音符でハマリング・オンします。
続いてミュートした6弦開放、左手で16部音符のゴースト・ノートを鳴らします。
この2拍のパターンを練習します。
1拍目の8分音符と16分音符が続くフレーズに、左手のハンマリング・オンによるゴースト・ノートと6弦ミュートのゴースト・ノートを入れるのが難しいので、ここは時間をかけて練習しましょう。
2拍目のプルは簡単ですが、ウラ拍の16分音符2つのゴースト・ノートは、1拍目のウラ拍と逆の、6弦ミュートから始めて左手でのゴースト・ノートとなります。
続いて、3拍目と4拍目を足して1小節のパターンを作ります。
まず、6弦ミュート音、続いて4弦5フレットをプル、そのまま薬指で4弦7フレットをハマリング・オン、そして6弦ミュート音を鳴らします。
これが3拍目のパターンになります。
4拍目は、3弦6フレットをプル、そのまま7フレットを中指でハマリング・オンします。
4拍目の裏は6弦ミュート、4弦ミュート音と、それぞれ16分音符で鳴らします。
3拍目は簡単ですが、4拍目のウラの6弦ミュート音と4弦ミュート音を連続して鳴らす箇所は、右手でブリッジ・ミュートして弾かなければいけないので難しいと思います。
前半の2拍分と後半の2拍分ができるようになったら、通して弾いてみて1小節のパターンに繋げて練習してください。
この1小節を繰り返すだけでも、ループ・フレーズとして使えると思います。
練習時のポイント
スラップ奏法で最も大事なことは、リズムを崩さないことです。
これは楽器演奏全般に言えることなのですが、リズムを安定させることが上達への一歩です。
スラップ奏法では、親指と人差し指のリズム・キープがポイントです。
アクセントを入れる箇所や、ウラ拍を意識することで、その楽曲のリズムの流れの中に自分の「基準」と言えるものが見えてきます。
それが見つかると、リズムがズレそうになっても戻せたり、逆に自分の解釈でノリを加えられるようにもなります。
右手では、力み過ぎないように注意しましょう。
スラップ奏法で聴ける独特の強いアタックは、単に力を入れているからではありません。
親指を弦に当てる際のスピードの変化で強弱をつけているのです。
プルでは、力を入れると、指が弦に引っかかってしまい、次の音を弾くタイミングが遅れてしまいますので、プルの力加減もコントロールできるようになりましょう。
練習曲
スラップ奏法に適した、ギター用の練習曲はほとんどありません。
ジャズ・ベーシストのMarcus Millerのフレーズなどを、ギターに置き換えて弾いて練習してみるのが良いと思います。
ご存知かとは思いますが、ギターの3~6弦のチューニングは、ベースもオクターブが異なるだけで同じですので、練習になります。
また、最近のギタリストではMIYAVIもギターのスラップ奏法が有名なギタリストです。
Youtubeで「MIYAVI レッスン」などと検索すると、解説動画がたくさん上がってきますので、どんどん参考にしましょう。
MIYAVIのテクニックもハイ・レベルなので、そう簡単に身に付けるのは難しいと思いますが、細かな点にも注目して、日々練習することが大切です。
スラップのやりやすいギターはどんなものか
最後に、スラップ奏法がやりやすいギター機種について考えてみます。
ポイントは、以下の3点にあります。
- 弦のテンションが高い
- 弦高が低い
- 弦の間隔が広い
①と②はベースでスラップ奏法を行う場合のセッティングと一緒ですが、ギターでのポイントは、③の「弦の間隔が広い」ということです。
弦の間隔が広いと、ピック弾きの場合は弦飛びが難しくなるのであまり好まれませんが、手によるスラップ奏法の場合には、むしろ好都合になります。
特にサムピングの時に、ギターの場合は弦の数が多く、他の弦に当たりやすくなってしまうので、上記のポイントの項目を上げました。
①の「弦のテンションが高い」と②の「弦高が低い」は、ベースの場合は全く問題ありませんが、ギターの場合は、他のプレイに影響する可能性があります。
まず考えられるのは、ベンディング(チョーキング)がしにくくなるというデメリットがあります。
このギターではベンディングをしないと決めれば、それで問題ないでしょう。
また、スラップ奏法は、弦が太い方ほどやりやすくなります。
7弦ギターや8弦ギターで低音弦をスラップすると分かると思います。
しかし、7弦ギターや8弦ギターの場合は、高音弦のミュートが難しくなるので、高音弦をミュートするためのスポンジを、1フレットの弦の下に入れておく、というギタリストもいます。
この辺は自分で色々試して工夫しましょう。
8弦ギターでスラップするには、かなり手が大きくないと難しいので、Tosin Abasiのように物は使用せずに自分の手でミュートするケースもあると思います。
その他にも、コンプレッサーを強く効かせるという方法もあります。
音を揃えるので、音圧や音色を安定して聴かせることが出来ます。
コンプレッサーによっては音色に影響してしまうため、スラップと組み合わせて使用するには好みが分かれるところですが、コンプレッサーでしか出せない音もあるので、試しに使ってみるのも良いでしょう。
ただしノイズも拾いやすくなってしまうので、他の弦のミュートはしっかりとする必要があります。
ギターでのスラップ奏法はまだ珍しく、これから発展していく余地があると思うので、今のうちに練習して身につけておきましょう。
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