ギターは、様々なサウンドが出せる楽器です。
普段ギターを弾いていると、あまり気付かないことかもしれませんが、12音よりも細分化された音程や、ハーモニクス音などです。
ピアノのようにしっかりと音程が決められている楽器ではないという、構造上の特性があります。
今回は、タッピング・ハーモニクスとは?コツや練習方法、というテーマをお届けします。
タッピング・ハーモニクスについて
タッピング・ハーモニクスとは、ハーモニクス音が簡単に出せるフレットを右手(ピッキングする手)でタッピングして、ハーモニクス音を出すというテクニックです。
ロック系ではあまり見かけませんが、フィンガー・ピッキング・スタイルのアコースティック・ギターや、クラシック・ギターのプレイヤーがよく使っています。
弦がフレットにぶつかる金属的な音と、ハーモニクス音が同時に出されます。
美しいハーモニクス音と、パーカッシヴな金属音が混じって聴こえる、独特のサウンドが特徴です。
もちろん、エレクトリック・ギターでも可能ですが、エレクトリックではピッキング・ハーモニクスや、ブラッシングによるハーモニクスの方が一般的に使われています。
ハーモニクス音に混ざり合う、強いアタックを持ったパーカッシヴな金属音で、楽曲中で初動の音や効果音的に使われるもので、指の使い方によって詳細に音色を変化させることが可能です。
コツ
弦を弾く指は、弦を押さえる、つまりポジションを押弦するようなイメージではなく、軽く弾いてすぐ離す、という動作になります。
この離す動作が上手くいかないと、綺麗な音は出ません。タッピングなので、左手で普段やっているハンマリングとプリングの連続を、右手で行うのです。
また、ハーモニクス音が出やすいポイントはフレットの真上なので、タッピングするポジションも正確でないといけません。
以下、知っておくとハーモニクス音が出しやすくなるコツを書いていきます。
・ハーモニクス・ポイントは弦長の整数倍の分子を持つ点
開放弦の場合は、1/2が12フレット、1/3が7フレット、1/4が5フレット、1/5が3.75フレット、1/6が3.2フレットになります。
1/5と1/6は使えない(理論的な数値)なので、残りの3つが主に使われています。
・フレットは軽く叩く
指の角度は、フレットに対して垂直にしないと良い音が出せません。
先ほども書きましたが、フレットの真上が最もハーモニクス音が綺麗に出るポイントですので、意識して叩いてください。
・タップミスを少なくするため、爪は切っておく
・弦は新しいものでないと、綺麗な音が出ない
・弦高が低いギターほどやりやすい
練習
・12フレット上のハーモニクス
それでは、実際にギターを持ってやってみましょう。
例として、3弦の開放を使ってやってみてください。
12フレットの真上を人差し指で軽く叩き、すぐに離してみてください。
綺麗なハーモニクス音が出ればそれで大丈夫ですが、出ていない場合はコツをもう一度チェックしてみてください。
弦を離すのはなるべく早めることです。
すぐに離さないと、触れている指でミュートがかかり、弦振動が減衰してしまいます。
ハーモニクス音が大きく、切れずに伸びていれば成功です。
・Aメジャー・コードのハーモニクス
次は、5フレットのAメジャー・コードの形でタッピング・ハーモニクスを鳴らしてみましょう。
6弦5フレット(A)を左手の親指で押さえます。
2弦5フレット(E)を人差し指で押さえます。
3弦6フレット(C♯)を中指で押さえます。
4弦7フレット(A)を薬指で押さえます。
これでAメジャーのコード・フォームになります。
この状態で、右手の人差し指で5フレットの上のハーモニクス・ポイントを叩きます。
2弦の10フレット
3弦の11フレット
4弦の12フレット
と叩いていきます。
・7フレット上のハーモニクス
続いて、左手のフォームはそのまま(6弦トニックのメジャー・コード)で、7フレット上のハーモニクス・ポイントを叩きます。
2弦の12フレット
3弦の13フレット
4弦の14フレット
と叩いていきます。
これで綺麗なハーモニクス音が出れば良いのですが、しっかり出ているか1音ずつ確認しながらタッピングしていきましょう。
・まとめ
ハイポジションへ行くほど、フレットとフレットの間隔が狭くなっていくため、多少曖昧な位置でもタッピング・ハーモニクスが出るようになります。
しかし、弦高も高くなっていきますので、テクニックのニュアンスが異なってくるかもしれません。
また、練習しても上手く綺麗な音が出せない場合は、ギターの構造もしくはセッティングに問題があるかもしれません。
弦が錆びていれば、当然綺麗な音は望めませんし、弦高が高過ぎるセッティングでも、弦がフレットに触れづらいため、指で押す力が強まってしまい、結果弦に引っかかって綺麗な音が出にくくなってしまうのです。
効果的な練習方法としては、12フレットをタッピングして音を出せるようになる事から始めてみましょう。最もハーモニクスが出やすいポイントです。
慣れてくると、他のハーモニクス・ポイントでも綺麗に音が出せるようになります。ハイポジションの19フレットでも出せるようになってきます。
コツが掴めて上手くなってくれば、タッピング後のハーモニクス音も長くなり、大きな音量が出せるようになってくると思います。
ギターのタッピング奏法とは?やり方やフレーズ
関連して、次は「ギターのタッピング奏法とは?やり方やフレーズ」というテーマについて書いていこうと思います。
タッピングについては、すでに前項で出てきていますが、右手(弦を弾く方の手)でハンマリング・オンとプリング・オフを行う奏法です。
おさらいですが、ハンマリングとはピッキングせずに弦を叩いて発音する奏法、プリングは押弦している指を引っかけるように離して発音する奏法です。
ピッキングしていないため、アタックが弱く音量があまり出ないのですが、ディストーションをかますことで音量を稼げるため、タッピングの際は歪んだ音のケースが多いです。
タッピング奏法は、1978年にデビューしたハードロック・バンド、Van HalenのギタリストであるEddy Van Halenが使ったことで、一躍有名な奏法になりました。
それ以前にもジャズ・ギタリストには、タッチという奏法で使われていましたが、テクニカル系のロック・ギタリストが派手に使ったことで、現在ではハードロックのテクニックとして定着しています。
当時はライトハンド奏法と言われていましたが、今はタッピングと呼ぶことが多いようです。
Eddy Van Halenは、Allan Holdsworthのようなワイド・ストレッチ・フレーズを弾くのに右手が必要だったとインタヴューで語っています。
彼は他にもレガート弾き(ハンマリングやプリングでフレーズをつなぎ、ピッキングのアタック感を出さない奏法)も得意としていましたので、その点もEddy Van Halenに影響したのかもしれません。
タッピングの効果としては、音程幅の大きいフレーズを簡単に、しかも高速で弾けることです。
この奏法を知らないと、こんなに音程差があるのに、指が届かないのでは?と思ってしまいます。
音程差があるので、普段は聴きなれないトリッキーなフレーズを弾くことができます。
必ずしも右手の人差し指だけとは限らず、過去には4本の指を全て使ったタッピングが流行った時期もありました。
やり方
まずは、アンプをディストーション・サウンドが出るセッティングにして、音量とゲインを十分にしておきます。
フレーズ例で解説していきます。
3弦5フレットを、左手の人差し指で押弦します。
次に、3弦12フレットを右手の人差し指でハンマリング・オンします。
その後、その右手の人差し指をプリング・オフします。
もちろん、人差し指ではなく中指を使ってもかまいません。
ピックを持ったままタッピングを行うのであれば、中指を使った方がやりやすいです。
素早い動作が求められ、演奏が流れてしまいそうになるかもしれませんが、タッピングのハンマリングとプリングは、なるべく正確に行うようにしましょう。
このような細かいニュアンスが、テクニックをワンランク上げることになります。
他の弦は、しっかりとミュートして不要な音が鳴らないようにします。
練習フレーズ
上記を踏まえて、練習フレーズを紹介していきます。
2弦10フレットを、左手人差し指で押弦します。
2弦17フレットを、右手人差し指でハンマリングします。
そのままプリングして、10フレットのA音を出します。
次に、2弦13フレットを、薬指でハンマリングしてC音を出します。
続いて、17フレットをハンマリングしてE音を出します。
A-C-Eと音が出せたら、これを4回繰り返します。
次のフレーズに移ります。
右手を1フレット移動させて、18フレットをタッピングします。
A-C-Fと音が出せたら、今度はこのフレーズも4回繰り返します。
また次のフレーズに移ります。
右手を2フレット移動させて、20フレットをタッピングします。
A-C-Gと音が出せたら、今度はこのフレーズも4回繰り返します。
そして、再び18フレットをタッピングします。
A-C-Fと音が出せたら、4小節パターンが完成になります。
このパターンをまた初めから繰り返して、シーケンス・フレーズで連続します。
注意する点は、他の弦が不用意に鳴ってしまわないように、しっかりミュートをしておきましょう。
ギターのタッピングの効率的な練習方法について
ここでは、ギターのタッピングの効率的な練習方法について、詳細に解説していきますので参考にしてください。
練習する際に、気を付ける点を以下に挙げます。
- しっかりと発音させる
- 正確なリズムで弾く
- 不要な音をミュートする
この3点を常に意識してタッピングをしましょう。
派手、速い、トリッキーと、一聴しただけでは非常に難しいと思ってしまうかもしれません。
フレットを押さえることに慣れていない右手ですが、右手でもリズムを掴めれば、意外と難しくはありません。
タッピングを上手に聴かせるポイントは、左手をしっかり右手のリズム感についていかせることです。
タッピング奏法が上手く行かないという人は、左手のハンマリングやプリングでリズムが崩れてしまう、右手と左手で音の大きさがバラついているなどがあります。
トリッキーで速いフレーズを正確に弾きこなすには、基礎的でフィジカルな練習を何度も何度も繰り返して、体に馴染ませていくしかありません。
まずはメトロノームなどで簡単なリズムを刻ませ、ゆっくりしたテンポで正確に弾けるようになったら、テンポを上げていく、という方法で徐々にスピードについていけるようにしましょう。
アコースティック・ギターでタッピングを決めるには、エレクトリック以上に練習が必要です。
弦高が高く、生音であるため、相当な経験とテクニックがないと正確な音は出せません。
ロック系の方でも、練習にはアコギを使うと良いかもしれません。
練習パターン
・多少ストレッチの入ったフレーズ
音を出さないようにして、2弦3フレットを左手で押弦しておきます。
2弦10フレットを、右手でハンマリングしてA音を出します。
これをプリングして、2弦3フレットから発音させてD音を出します。
6フレットを左手でハンマリングして、F音を出します。
このA-D-Fを繰り返して4回弾きます。
次に、右手でのタッピングを11フレットへ移して行い、
♭B-D-Fを繰り返して4回弾きます。
さらに、右手でのタッピングを13フレットへ移して行い、C音を出します。
左手も2フレット上げて5フレットを押弦しておきます(音はまだ出しません)。
右手で17フレットをプリングして5フレットからE音を出します。
さらに右手を移動させて、8フレットをハンマリングしてG音を出し、
C-E-Gを4回繰り返して弾きます。
また2フレット上げます。
17フレットを右手でハンマリングし、D音を出します。
右手をプリングして、7フレットからF♯音を出します。
さらに10フレットをハンマリングし、A音を出します。
D-F♯-Aを4回繰り返して、2小節パターンが完成しました。
先ほども書きましたが、左手を上げていくポジション移動の正確さが、このフレーズを上手く聴かせるポイントになります。
右手はフリーなのに対して、左手は常にネックを握りながらポジション移動させますので、左手は難しいかもしれません。
・もう少し動きの少ないフレーズ
もう少し動きの少ないフレーズを紹介します。
左手のの人差し指を10フレットに置いて構えておきます。
2弦17フレットを右手でハンマリングして、E音を出します。
そのままプリングして、2弦10フレットからA音を出します。
続いて2弦13フレットを左手薬指でハンマリングして、C音を出します。
E-A-Cを4回繰り返して弾きます。
今度は左手と右手をそれぞれ1フレットずつ上げて移動させます。
18フレットを右手でハンマリングして、F音を出します。
そのままプリングして、9フレットからA♭音を出します。
続いて12フレットを薬指でハンマリングして、B音を出します。
F-A♭-Bを4回繰り返して弾きます。
さらに左手と右手をそれぞれ1フレットずつ上げて移動させます。
17フレットを右手で回繰り返して弾きます。
ハンマリングして、E音を出します。
その指をプリングして、8フレットからG音を出します。
続いて11フレットを薬指でハンマリングして、B♭音を出します。
E-G-B♭を4回繰り返して弾きます。
今度は左手と右手をそれぞれ1フレットずつ下げて移動させます。
15フレットを右手でハンマリングして、D音を出します。
その指をプリングして、7フレットからG♭音を出します。
続いて10フレットを薬指でハンマリングして、A音を出します。
D-G♭-Aを4回繰り返して弾きます。
メトロノームを使って、まずはゆっくりしたテンポから練習を始めてみましょう。
慣れてきたらテンポを早めたり、ドラム・マシンなどに乗せてみてください。
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