ドラム初心者が、必ず経験する最初の難関、「手と足がバラバラに動かせない」という悩み。
これはギター初心者でいうところの「Fコードをキレイに鳴らせない」同様、これが出来ずに挫折してしまう人も多くいます。
「叩きたいパターンやフレーズがあるのに、いくら練習しても上手くいかない」
「特定のタイミングの時に、必ずノリが崩れてしまってクセになっている」
「そもそも、どんな練習方法が効果的なのか、まったく分からない」
このような話を、初心者からよく聞きます。
では、どんな練習をすれば、手足をバラバラに動かせるようになるのでしょうか。
ズバリ言ってしまうと、「パターンの固定」と「反復練習」です。
以下で詳しく書いていきたいと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
ドラムの足と手をバラバラに動かす練習方法やコツ
上手なドラマーの演奏を見ていると、手足それぞれ4本が独立していて、自由自在に叩いているように見えますね。
一見すると簡単そうで、自分にもすぐ出来そうに思えます。
実際ににバラバラに動かせるドラマーもいるのかもしれませんが、実は、ほとんどのドラマーは、無数の定型的なパターンを覚えて、それを組み合わせて叩いています。
無数のパターンなどと言われると気が遠くなりそうな話ですが、その考え方とコツを理解して少しずつ練習すれば、パターンは体で覚えていきます。
パターン自体も1拍目はキック、2拍目にスネア...といった基本型の上に成り立っているのです。
楽曲のジャンルなどによってもある程度決まっているので、色々なドラム・パターンを聴くことも大事になります。
・ハイハットとバスドラム
基本的な練習方法は、前述のとおり「パターンを固定する」というシンプルなものです。
ロックのリズム・パターンである8ビートから考えていきましょう。
まず、ハイハットとバスドラムのパターンを組み立て、それを覚えていきましょう。
それでは、以下具体例を挙げて解説していきます。
少しでもドラムの知識や叩いたことがある方であれば、簡単過ぎてしまうかもしれませんが、基礎になる考え方ですので、少しだけお付き合いください。
初めに、♪=70程度のゆったりしたテンポに設定してください。
テンポに沿って叩けるようになったら、徐々にテンポを上げていきましょう。
- ハイハット 8分音符で刻んでいく
- バスドラム 1拍・3拍目のアタマを叩く
これは簡単です。初心者の方でも十数分くらい練習を続けることで、すぐに叩けるようになるでしょう。
次のハイハットのパターンをキープ(固定)しながら、バスドラムだけを変化させてみます。
- 1拍目のアタマとウラ、3拍目のアタマとウラにバスドラムを叩く。
ここまで1、2、3、4と心の中でカウントを取りながら練習しましょう。
- 1拍目のアタマ、2拍目のウラ、3拍目のアタマ、4拍目のウラにバスドラムを叩く。
これを何度も何度も繰り返して、この基本型を体に染み込ませましょう。
注意していただきたいのは、「漠然と叩かない」ことです。
カウントをしっかり意識してください。モタついても構いませんので、心で数えているリズムはキープしましょう。
アタマはすぐに合わせられると思いますが、ウラは慣れるまではタイミングがばらつきがちです。
タイミングが取りづらい時は、メトロノームも8分音符にして鳴らしてみたり、リズム・パターンを声に出したりしながら練習してみてください。
1つのパターンごとに5分間程度は続けて繰り返しましょう。そして次のパターン、といった具合です。
集中力が切れてきたら、休憩を挟んだり、5分未満でも他の練習に切り替えたりしてみましょう。
先ほど書いたように、漠然と叩くのを防ぐためです。
いつまでもパターンが身に付かないですし、惰性からおかしなクセが付いてしまうと、修正に苦労します。
・スネアを加える
さて、ハイハットとバスドラムの組み合わせがある程度慣れてきたら、このパターンにスネアを加えることで、1つのドラム・パターンが完成になります。
1つパーツを加えることで、途端に叩きにくくなります。
そこで今度は、ハイハットを叩かずに、バスドラムとスネアだけで練習してみましょう。
スネアの音色は、ドラマーが最もこだわるポイントですが、まずは正確なリズムで叩けるようになってからで十分です。
上記の練習を何度も繰り返していることで、8分音符のハイハットの音やタイミングは、しっかりと体に残っていると思います。
もちろんメトロノームを8分音符で鳴らし続けていても構いません。8分のガイド・リズムの意識を持ってください。
- スネア 2、4拍目のアタマに叩く(パターンを固定する)。
- バスドラム 上記で覚えたパターンを1つずつ試していく。
このように、各パーツ(ハイハット、バスドラム、スネア)それぞれの数パターンをストックしておき、その組み合わせで何パターンも作れるのです。
各パーツを分離して、イメージを固めていく作業の積み重ねが、自由度の高い演奏やアドリヴの基礎になります。
・パラディドルの基礎
ここまで解説してきた練習方法は、かなり初歩的な練習方法です。
ドラム・セットがなくても、自宅で椅子に座りながら、イメージ・トレーニングしても良いと思います。
さらに技術を発展させる練習方法として、まずはパラディドルをおすすめします。
これはロック・ドラムに限らず、マーチング・バンドのドラムにも活用されています。
それではパラディドルの基本的な練習方法を説明しましょう。
以下では、右手を「R」、左手を「L」として表記しますので、その手順どおりにハイハットとスネアを叩いてみてください。
同様に、♪=70程度のゆったりしたテンポで、8分音符に設定してください。
やはりテンポに沿って叩けるようになったら、徐々にテンポを上げていきましょう。
- R L R R L R L L
- R L R L L R L R
- R R L R L L R L
- R L L R L R R L
初めのうちは、両手でスネアを叩きながら、音量やテンポが一定になるように集中します。
スネアを叩く時には、同時にスティックの握り方も確認しながら叩くと良いです。
上記①~④のパターンに慣れてきたら、次はアクセントをつけてみましょう。
アクセントを付ける位置は、①は1、5打目、②は2、6打目、③は3、7打目、④は4、8打目です。
この位置では、多少大袈裟に大きな音で叩き、意識付けをしてください。
①~④のパターンで、かつスネアにアタックを付けながらスムーズに叩けるようになったら、右手をハイハット、左手をスネアに固定して同じ要領で叩いてみます。
そして今度は、このパターンを足に応用していきます。
まずは右手のハイハットの代わりに右足を使った、バスドラムとスネアのパラディドルです。
パターンは上記①~④を参照してください。
これに慣れてきたら、♪=60程度で、16分音符に解釈してみて①~④のパターンを叩いてみましょう。
叩けるようになったら、8分音符のハイハットを加えてみてください。大分楽曲でも使えそうなリズム・パターンになってきたと思います。
以上のように、各パーツごとにいくつかのパターンを固定し、それ以外のパーツのパターンと組み合わせて叩く、という練習を重ねることで、演奏の自由度はかなり高まります。
ここまでは、手足が別々に動かせられるためのドラム演奏について解説しましたが、意外とおろそかにしがちなのが、同時に叩く練習です。
「同じタイミングで叩くことは簡単だ」と軽く考えがちですが、演奏中の流れの中で同時に叩くのは、なかなか難しいものです。
バスドラムとクラッシュ・シンバル、スネアとハイハットなど、同時に叩くことが多いパーツについては、それぞれを組み合わせた練習にも、少しだけでも時間を割いてみてください。
ドラムを家でパッド練習するおすすめの方法やコツ
他の楽器と異なり、自宅でもスタジオを同程度でドラム練習ができる人は、本当に少ないと思います。
自宅練習はイメージ・トレーニング中心になってしまいますが、そこで使える練習器具がパッドです。
パッドを使うことで、あまり音を気にせずに自分の部屋で練習できますし、手軽さもあるので、練習場所も広がると思います。
練習用のパッドには、様々な種類のものがあります。
個別のパーツのものは、ペダルを装着してバスドラムを練習するためのパッド、スティック・コントロールを練習するためのパッドが一般的です。
そしてスタンドが付属したセット型の練習パッドなどです。
セット型のものについては、ハイハットやタムなど、リハーサル・スタジオにあるドラム・セットとほぼ同じ種類のパーツ(各パッド)が揃っており、より実践的な練習に取り組めます。
もっと簡易的で種類が豊富なのは、スティック・コントロールを練習するためのパッドです。
また、パッドの打面の素材についても、ラバーやウレタン、メッシュなど、様々なものがあります。
安価なものでは、そのパッドの材質の匂いで、部屋が変な匂いになってしまった、なんて話も聞きますが、高価な製品だと、調整の仕方で本物のスネアやバスドラムと同じような感覚に近づけることも可能です。
しかし、楽器店に行ってパッドを探してみると、種類が非常に多過ぎて、どれが良いのか分からなくなってしまう事もあると思います。
「高価な製品を買った方が、上達が早いかもしれない」と思うかもしれません。
確かしドラムに限らず、本物に触れて正しい練習方法(を教えてくれる指導者もいればなお良いです)が、一番の近道です。
ですが「正しい練習方法」を効率的に、もしくは工夫して行えば、上達への近道になります。
「自宅でのパッド練習」「スタジオでのドラム・セット練習」と割り切ってしまい、パッド練習の成果をスタジオでリンクさせられるようにしましょう。
用意するパッドは、高さと打面の角度を調整できるスタンド付きのパッドが、価格的にも機能的にもおすすめです。
少々地味ではありますが、パッドでの効果的な練習方法を紹介していきたいと思います。
パッド練習の準備
それではパッド練習の準備をしましょう。
パッド練習と言っても、基本的なドラムの練習と考え方・基本は同じです。
肩の力を抜いて腕を垂らし、肘を約90°に曲げます。
スティックは、肘から手首の延長線上に真っ直ぐ延びるように持ってください。
厳密には、手やスティックの重みで、スティックの先端のチップがやや下がっているくらいが、ちょうど良いポジションになります。
グリップは、マーチド、ジャーマンなど様々ありますが、自分のスタイルのグリップです。
少し大雑把ですが、この状態が「レディー・ポジション(待機状態)」です。
このレディー・ポジションの時に、スティックの先端の(チップ)の3cmほど下にパッドが来るように、椅子やパッドの高さを調整してください。
椅子の高さも重要なのですが、ここでは省略します。膝が90°よりやや鈍角になるような高さです。
メトロノームがあれば、用意します。
これで準備は完了です。
次に、パッド練習をする際に意識してほしい点について説明します。
まず、覚えておいてほしいのは、「ドラムを叩く際の音量は、レディー・ポジションから振り上げる高さで決める」、「ショットのスピードを一定にする」という2点です。
普段大きい音での演奏に慣れている人が、静かな楽曲やテンポの遅い楽曲などを演奏すると、途端にテンポが乱れたり、おかしなタイミングでパーツを鳴らしたりする、といった場面をよく見かけます。
その原因のほとんどは、レディー・ポジションの意識が薄いことと、一定のショットスピードを保てていないことにあります。
具体例と改善策を挙げてみましょう。
・① 小さな音を出す練習
はっきり言って、ドラムで大きい音を出すことは、誰にでも出来ます。
大きい音との比較で小さな音を出せるようになると、ダイナミクスの幅が広がり、メリハリの効いた演奏が出来るようになるでしょう。
小さな音を出すのが難しい要因は、大きな音を出すことに慣れていると、小さい音を出す時にも、いつも通りの慣れたスティックの振り上げ幅のままで、「ショット・スピードを落とす」ことで音量をセーブしようとします。
これにより、スティックの動きを遅くすることに意識が行ってしまい、2つの問題点が生まれます。
1つは、スティックが楽器に当たるタイミングが、自分で思っているよりも遅くなってしまいます。
そしてもう1つは、音量をコントロール出来ていない点です。
この改善策は、ショットの瞬間(厳密にいえば直前)に小さな動きを加えて、スティックにもスピードを加えるというものです。
レディー・ポジションから2~3cmほどの振り上げ幅で、打面の数cm裏を打ち抜くイメージを持って練習します。
・② 遅いテンポに対応する練習
ゆったりしたテンポに慣れていない人は、ショット後のスティックの動作に気を配れていないケースが多く、空いている「間」の長さを持て余してしまい、落ち着かないようなドラミングに聴こえてしまいます。
この改善策は、ショット後のチップを、しっかりとレディー・ポジションに戻すということです。
大きい音を出す場合も同じで、レディー・ポジションから素早くスティックを振り上げて、ショット後は、再びレディー・ポジションにチップの位置を戻します。
少し機械的ですし、慣れないと常に意識しておかなけれないけないトレーニングなので、時間がかかりますが、地道に続けることで確実に安定感が増してきます。
さらに、瞬間的にスピードを加える練習をしておけば、音色やフレーズのキレ、フィルのスピード・アップなど、細かい表現の向上にもつながります。
パッド練習の方法
それでは、パッドの練習を始めていきましょう。
メトロノームを用意していただき、♪=60に設定してください。
もしメトロノームがない場合は、時計の1秒で考えましょう。♪=60は、秒針の速さと同じです。
初めはこのテンポ・スピードに合わせて、8分音符を叩きます。
右手だけで1小節、左手だけで1小節叩き、これを交互に繰り返していきます。
一定のテンポに合わせて叩くことに慣れてきたら、これまで同様にアクセントを加えていきます。
- 通常の音(もしくは小さい音) レディー・ポジションからほぼ振り上げずにショット
- アクセント(大きな音) レディー・ポジションから15~20cm程度振り上げてショット
これはあくまでも目安でので、習得レベルに応じてさらに細分化、最小化、最大化されていきます。
♪=60の速さで、8分音符を叩いてみましょう。
右手だけで1小節を「大、大、小、小、大、大、小、小」。
左手も同様に1小節を「大、大、小、小、大、大、小、小」で叩いてください。これを左右交互に何度も続けてみます。
この練習には2通りのやり方があります。
先ほどから説明してきた「レディー・ポジション」に常に戻す方法と、「4つのストローク」を使い分ける方法です。
これら全てを組み合わせて練習してみましょう。
・① レディーポジションに常に戻す方法
ここまで解説してきたように、レディー・ポジションに戻すことは非常に大事です。
自分の基本型として、フォームをしっかり身につけておきましょう。
アクセントの音も、小さい音も、ショット後には常にレディー・ポジションにチップを戻し、そこから素早く次のショットを行います。
アクセントを付けるためには、スティックをある程度の高さまで振り上げて、そこから自然に落とすわけですが、その際もなるべくショットの寸前まで、レディー・ポジションで粘っている意識を持ってください。
・② 4つのストロークを使い分ける方法
スティックを振り下ろす技術を「ストローク」と言います。
- フル・ストトーク(大きい音) 振り上げた状態からショットを開始して、再び元の振り上げた位置に戻します。
- ダウン・ストローク(大きい音) 振り上げた状態からショットを開始して、レディー・ポジションの位置で止めます。
- タップ・ストローク(小さい音) レディー・ポジションからほぼ振り上げずにショットして、レディー・ポジションで止めます。
- アップ・ストローク(小さい音) レディー・ポジションからほぼ振り上げずにショットして、高い位置までスティックを振り上げて戻します。
これを上から順に叩くと「大、大、小、小」となります。
上記の2通りの練習方法を、同じくらいの時間をかけて何度も取り組んでみてください。
そして、慣れてきたら徐々にテンポを上げていきます。
また、両手で同時に叩く練習も試してみてください。
テンポをキープする際のヒント
最後に、テンポをキープするためのヒントを紹介します。
音楽にとって最も重要な要素はリズムです。そしてドラマーは、バンドの中でテンポ・キーパーの役割を担っています。
通常の楽器の練習の際は、演奏したいフレーズを口で歌えるかどうか、というのが1つのポイントです。
しかし、ドラムの場合はサスティンが短く、音程感のないパーツですので、歌うという練習方法をどうすれば良いか、なかなかピンと来ないのではないでしょうか。
そこで、少し強引ですが、それを想像力と口で補完してみましょう。
4分音符で踏み続けるバスドラムは「ドン、ドン、ドン、ドン」ではなく、「ドー、ドー、ドー、ドー」です。
意識していただきたいのは、4分音符である点です。
ハイハットやスネアを交えたリズム・パターンやフィル・インも同様です。
実際に声に出してみてください。
ドラムのフィル・イン(オカズ)とは?
イントロやセクションの変わり目、最後の4小節目でよく聴かれる、これまでのリズム・パターンを変化させたフレーズを、フィル・イン(俗に言うと「オカズ」)と呼んでいます。
印象的なフレーズや大きな音でセクションが変わることを想起させたり、逆に音数を減らして意外性を持たせるなど、その使い方は様々です。
ここでは、そのフィル・インに付いて詳しく解説していきます。
さて、このフィル・インに決まりはあるのでしょうか。
答えとしては、特に決まりはなく、何をやってもどう叩いてもOKです。
しかし、その楽曲の曲想やドラマーの個性などである程度決まってくるものでしょう。
では、フィル・インを入れる時の具体的な場面、フレージングはどのように決めれば良いのでしょうか。
フィル・インの意味について考えながら、少しずつ解き明かしていきます。
そもそもフィル・インを入れる目的ですが、他のパートに対して「合図を出す」「インパクトを与える」などがメインになります。
タイミングについて
フィル・インを入れる場合にまず考えることは、そのタイミングです。
「合図を出す」という点から考えていくと、
- ギターやベースなど、ドラム以外のパートと同時演奏を開始するとき。
- 楽曲のセクションや雰囲気が変わる直前(キーが変わる、リズムが変わる、盛り上がりへ移行、など)
- 楽曲の最後
以上が主に考えられる、フィル・インを入れるタイミングでしょうか。
他のパートやリスナーに対して「これから何らかの変化がある」という合図を与えたい時が、フィル・インを入れるタイミングになります。
例えば、ドラマーがカウントを出して、みんなで一斉に演奏を開始するとします。
その時に「1、2、3、4!」で入ることはよくありますが、「1、2、タットン、タカトン!」と、3拍・4拍目を使ってフィル・インを入れると、それっぽく聴こえますね。
その他にも定番なのが、サビの直前にスネアを連打してスピード感を演出したり、エンディングでタムからフロア・タムまで流れるように連打して、最後にシンバルで楽曲を終える、というパターンです。
いずれにしろ、冷静に楽曲の構成を把握しておかなければいけません。
インパクトを与える
続いて、「インパクトを与える」について説明していきます。
「合図」とにた内容になりますが、印象的なフレーズで楽曲に一瞬の変化をもたらせます。
例えば、サビの手前でスネアとフロアタムを同時に8分音符で、徐々に音量を上げていくように連打していくことで、次のセクションに向けて盛り上がっていく流れを演出できます。
または、サビに入った小節の4拍目のスネアと同時にシンバルを叩きます。
あまり「フレーズ感」はないかもしれませんが、印象を変えるインパクトになると思います。
もしくは、バンド全体の音量を極端に小さくしたい場面があったとして、ガラッと雰囲気を変える、その静かなセクションの始まり、つまり、1小節目の1拍目のアタマにスネアを大きめの音で叩き、その後の音量を抑えます。
ブルース・セッションでソロ回しが終わるときに多用される手法ですね。
このように「合図」と「インパクト」、この2点を楽曲中で意識することで、フィル・インを入れる場面が自然に分かってくるかと思います。
このあたりは色々は楽曲を演奏する経験によるところも大きいと思います。
それでは実際に叩くフレーズには、どのようなものがあるのでしょうか。
残念ながら種類が多過ぎてここでは書ききれません。
しかも楽曲のジャンル、テンポ、それぞれの場面など、様々なケースが想定されることを考えると、それこそ無限にある、と言っても過言ではないでしょう。
ですが、そのヒントになる法則がいくつかあります。
・① ビートに沿う
8ビートの楽曲では、4分音符か8分音符、シャッフル・ビートの楽曲では4分音符か3連符、といったように、その楽曲のビートに沿った音符を使うことです。
これはスタンダードなタイプのフィル・インになるでしょう。
16分音符を使う場合は、少々危険です。
上手くハマればインパクトは大きいですが、ハズして聴こえてしまう可能性もあります。
余程自信がない限りは、ビートに合った音符を選択しましょう。
・② ボーカルに呼応する
基本的にヴォーカリストが歌っている時にはフィル・インを入れず、歌の合間に入れます。
これはどちらかというと1~2小節単位で、ギターやベースがよく入れるパターンです。
・③ シンバルもフィル・イン
4小節ごと、8小節ごとに1拍目のアタマにシンバルを叩く人がいます。
これはロックなどではとても有効な手法ですが、無意味なフィル・インになっているケースもあります。
機械的で、小節割が数学的にも聴こえ、はっきり言って面白みがないのです。
シンバルの高音は華やかな雰囲気を演出してくれますが、時としてそれが適さないタイミングもあるということです。
シンバルだけでもフィル・インだと認識して、むやみに叩いたり、クセで叩いてしまったりしないよう心がけましょう。
これらは、絶対に守らなければならないことではありませんし、他にも考え方は無数に存在します。
①~③をしっかり意識出来ていれば、全く外れたようなフレーズにはならないと思います。
自由な発想で、色々な場面で色々なフレーズを試してみてください。
意外性のあるものを狙うのであれば、しっかりと練ってください。
そして、これは少し極端な考え方かもしれませんが、曲によってはフィル・インは「叩かなくてもいい」のです。
「余計なことはしない」というスタイルも、ちょっとカッコいいですね。
DTMの打ち込みリズム(特にテクノ)は、平坦なパターンを延々ループさせ、フィル・インを入れないことで機械っぽさを演出しています。
また、オルタナ系でもその影響から、通常のスタイルとは異なったフィル・インを入れています。